20代でM&Aを経験した若手起業家4人が、VCからの資金調達の是非、バイアウト時の株主トラブル、家庭環境と起業の関係、そしてイグジット後のキャリアについて本音で語り合った座談会の記録。
20代前半から半ばにかけてM&Aによるイグジットを経験した若手起業家たちが集まり、資金調達・バイアウト・経営観について語り合う座談会が開催された。VCからの調達は本当に必要なのか、株主が多いとバイアウト時に何が起こるのか、家庭環境は起業の成否にどう影響するのか。きれいごとでは済まされないリアルな本音が交わされた。
座談会は資金調達の是非をめぐる議論から始まった。一人の参加者は「本気で成り上がりたい人は1回VCから調達した方がいい」と切り出す。理由は、調達したというプレッシャーを背負うことで、やらざるを得ない環境に自分を追い込めるからだ。
特に学生起業家は手元資金がないため、自分の貯金から5万円を切り崩すことすら怖くなりがちだという。しかし1,000万、2,000万円が入ってくれば、少しずつコストをかけることに慣れていける。「コストをかけることに慣れるためには、特に大学生はVCから調達しないと無理」という意見が出た。
お金がかからない事業で成功する人もいるが、そういう人は営業の天才だったり、プラットフォーム内のアルゴリズムをハックできるような特殊なケースが多い。プロダクトを本格的に作るならお金は絶対にかかる。だからこそ「手元の50万円でやるよりも、手元の3,000万円でやった方が絶対にレバレッジがかかる」というロジックだ。
一方で、同じくVCや事業会社、エンジェル投資家から調達してきた別の参加者は、まったく異なるスタンスを示した。「ここまで来られたのは外部資本があったからこそ」と認めつつも、自分自身がエンジェル投資をする際は「このお金はもうなくなっても構わない」と思える額しか出さないという。
その背景には痛烈な原体験がある。同年代で半年先にVC調達をした友人の起業家がいた。キラキラして見えて憧れの存在だったが、お互いがうまくいかなくなり、それでも会うと見栄を張って嘘をつき合ってしまう。やがてその友人は連絡が取れなくなり、実家に帰ってしまった。VCのアソシエートやGPは血眼になって連絡手段を取り戻そうとしていたという。
「自分がうまくいったのは正直、生存バイアスがある。再現性はない」と振り返る。だから人に相談されると、まず日本政策金融公庫から最低でも借りてこいと伝える。利率は2%程度。リビングデッド(事業が伸びず買い戻しもできない状態)になることだけは絶対に避けるべきで、ダメだと判断したら早めに謝って買い戻した方がいいという。
VC側の論理として、彼らは投資したお金を運用しているので、1,000万円を4年かけて使い切るような遅いペースは期待していない。1年で使い切って次のラウンドに行くか、ダメなら早めに撤退するか、はっきりした方が双方にとって良いという見方だ。
話題はバイアウト時の株主構成に移った。VCが2社入っていてもトラブルなく送り出してもらえたケースがある一方、トラブル事例は無限にあるという。
持分比率が10%未満であれば議案を否決することはほぼできない。しかし重要なのは「温かく送り出してくれるか」という点だ。再挑戦やシリアルアントレプレナーを目指す場合、株主との交渉できちんと納得してもらえていないと、次の挑戦がやりづらくなる。スタートアップ界隈は狭いため、評判は確実に伝わる。
またスクイーズアウト(株式を強制的に取得して少数株主を追い出す手法)のように、持分比率を下げて少数株主を排除することも理論上は可能だ。ただし、第三者割当などで外部株主が50%以上を持っている場合、自分の意思とは別の方向に意思決定が進む可能性もある。「もっと資金調達して成長させた方がいい」「この企業に紹介すれば高く売れる」など、良い方向にも悪い方向にも働きうる。長期で伸ばしてパブリックカンパニー化を目指すなら、相応の覚悟が必要だという見解で一致した。
議題は「起業家の家庭環境」へと展開する。ある参加者は「両親は起業を応援してくれず、むしろ反対していた。資金援助は一切なかった」と打ち明けた。一方で、家を賃貸で出してもらえる人や、最初の資本金にあたる仕送りを受けている人もいる。
「原理原則で言えば、基本的に資本が勝つ。お金持ちの家庭の方が成功確率は高い」という意見が出る。ビジネスの原則として、投下した資本量が企業価値や利益に直結するからだ。とはいえ、ごく小さな資金から大きく成長する企業も存在する。
資本を持たない人が選ぶ道として「自分の手と時間だけで最大化できるメディア事業」が挙がった。実際、2000年代生まれの学生起業家でイグジットしているケースは、メディア事業から入ってキャッシュを作り、そこから次の事業をリリースしていくパターンが多いという。お金を持っている若手起業家は、インフルエンサー出身者か仮想通貨で元手を作った層が目立つ、という観察も語られた。
話題は若手起業家にとって身近なピッチコンテストに移った。ある参加者は「ピッチコンテスト経由で営業ができたのが一番大きい。審査員企業が採用に困っていれば、そこに自社のサービスを提案できる」とメリットを語る。
一方で「ビジコンに出場することにはほぼ意味がない」と断言する声も。プレゼンスは上がるかもしれないが、興味のない経営者は一切足を踏み入れない世界でもある。「ゴルフで接待する人もいれば、サウナで関係構築する人もいる。全員が成功できるからこそ、経営者の生き方はやめられない」という言葉に、参加者全員が頷いた。
「成功した登り方は無数にあるが、退場する場所には傾向がある」――この言葉が示す通り、失敗談の方がむしろ再現性があるという議論が交わされた。失敗者本人がメディアに出るのは難しいが、復活した経営者が過去の失敗を語る形式であれば、視聴者の関心も集まる。
ここから派生して、「キラキラスタートアップ」と「地域密着型・現金主義の商売」の中間にある、利益を出しながら自分の作りたい会社を作る経営者向けのメディア構想も語られた。人生はグラデーションでありながら、メディア視聴者ははっきりした立場の意見を求める。だからこそ、その「中間」を取りに行くこと自体がメディアの挑戦になる、という議論だ。
座談会の最後に、参加者それぞれが今後のビジョンを語った。
一人は「20代のうちに売上100億円を超える企業の経営者をやってみたい」と宣言。ITで100億円を作るか、既存の100億円企業の経営に入るか、あるいはサービス業や店舗ビジネスに進むか、ルートを模索しているという。「売上イコール価値」という価値観のもと、より多くの人に届く仕事をしたいという思いがあるという。
別の参加者は「Being(ありたい姿)」と「Doing(やりたいこと)」を分けて考えていると話す。最初の創業時に「何を成し遂げるか」ばかりに集中してメンタルを壊した経験から、心身ともに健康でウェルビーイングを追求する状態を維持することを最優先に置いている。事業の方向性としては、売上主義よりも利益主義。コンパクトな組織で利益率を高め、業界の歪みを見つけて参入していくことに好奇心が向くという。M&A業界もそうした「面白い歪み」が残る領域だと評価していた。
メディア事業を高校時代から続けてきた参加者は、広告枠販売から「仕入れて、付加価値をつけて売る」という商売の基本に立ち返るべく、リシグラドという事業を始めた経緯を語った。興味範囲が3年単位で変わる自覚があるため、売却を繰り返すシリアルアントレプレナー的な人生に魅力を感じているという。ただし、生き急ぎすぎないよう周囲のメンターとチームを組みながら進めたいと結んだ。
そしてもう一人は「時価総額10兆円の会社を長期で作りたい」と語る。領域へのこだわりはなく、「機械と情報の格差をなくして、より良い意思決定を支援する」というミッションにコミットしたいという。元々は自分をクリエイター気質だと思っていたが、最近になって課題解決型だと気づいたと笑顔で話した。
4人それぞれの言葉から見えてきたのは、M&Aは終着点ではなく、次の挑戦のスタート地点だという共通認識だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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