DMM亀山会長が、資金調達や事業撤退といった伝えにくい局面での社員への向き合い方を解説。社長が悪役を引き受ける覚悟、叱るけど怒らない技術、そして配置で人を活かす人事論まで、経営者必見の対話。
M&A CAMPの運営チームが資金調達を実施したという話題から、対談はスタートしました。一部株式譲渡と増資を組み合わせたスキームで、人材系YouTubeチャンネルと相性の良い企業から資金を受け入れたものの、社員への伝え方に「モヤモヤ」を感じていたといいます。
「これって僕がお金持ちになるためにやったと言っても過言ではないかもしれない」——そう打ち明ける聞き手に対し、亀山会長は意外なほどあっさりと答えます。
「実害ないじゃない、実際。社員からすると『あ、そうですか』なものだと思う。体制が変わるわけでもなく、給料が下がるわけでもなく、株の一部を誰かが持ってますってだけだから」
むしろ問題になるのは、社長側の振る舞いが変わってしまうこと。急にブランド物を身につけ出したり、コンプライアンスを口うるさく言い出したり、「S&P500がなんとか」などと発言し始めたら、社員から見ておかしく映る。逆に言えば、これまで通りの姿勢を保てば、資金調達自体はネガティブな話にはならないということです。
伝えにくいことの典型として、亀山会長が挙げたのは事業撤退の場面です。DMMでもWeb3関連の事業部解散などを経験してきました。
こうした局面で意識しているのは、次の3点です。
- 自分の言葉でしっかり伝える
- 「いい人ぶらない」
- 言いにくいことは基本的に自分が言う
「悪役を引き受けろみたいな感じはある、社長がね。社長がちゃんと悪役を受けるっていう感じであれば、下の部長役員とかがやりやすくなる」
人間は誰しも嫌われたくない本能を持っています。しかし社長が「大変だろうから話聞くよ」と優しく振る舞いすぎると、現場の部長たちが厳しい施策を実行できなくなる。本当にちゃんと組織を回したいのなら、社長自ら悪役を買って出る方がいい——という指摘です。
長く在籍した社員に契約終了を伝える場面については、現場に裁量を残す形を勧めています。
「俺としたらこういう感じでやめてもらいたい、と。あとは現場に裁量を与えておく。こちらの方で1ヶ月、2ヶ月はこういう風にしますから、と言うと、納得感を持たせられる」
全てを合理的に処理する必要はなく、「上下に揺れる部分」があっていい。それも含めて会社の文化になる、と亀山会長は言います。
亀山会長がDMMのIT事業を始めた当初、目指したのは「義理人情のIT企業」でした。家族経営的な感覚を持ち込もうとしたものの、実際にIT業界に入ってみると「むしろ熱苦しい」と感じる場面もあったといいます。
他のIT企業を見ると、代表が会社を売却して「俺、旅に出てきます」と言い、社員も「いってらっしゃい」と見送るようなフレンドリーな世界。比較的そうした文化が根付いている。
「郷に入れば郷に従えじゃないけど、その中の世界観である程度合わせていかないといけない」——和を重視しすぎず、洋の要素も取り入れて、ちょうどいいバランスに徐々に調整してきたといいます。
社員との距離感について、亀山会長の答えは明確でした。
「基本、社員とは友達ではないっていうところはある。自分が弱音を吐くような場所でもないじゃない。『俺もね、最近辛いんだよ』とか言われても困るじゃない」
飲みの場であっても、社長はあくまでホスト。みんなを楽しませる場所であって、自分が癒される場所ではない。癒しは仕事関係ない友達などから得ればいい——というスタンスです。
社員と1対1で食事に行くことについても、「向こうがやりたいと言ったらやろうかという話になる」程度で、積極的にはやらない。「逆に俺が『飲みに行こうぜ』と言って、嫌でも社員は断りにくい」からです。
若手社員のメンタルやキャリア相談に乗る際、つい「言ってはいけないことまで言ってしまう」という聞き手の悩みに対し、亀山会長は伝え方の使い分けを語ります。
「正論を言えば伝わるわけじゃない。同じことでも、ドライにやるやつには『もうちょっと人の気持ち考えろよ』と言うし、別のキャラの人間には別のアドバイスをする」
経理部門には「交際費をちゃんとつけないからみんな苦労する」と営業側を擁護し、営業部門には「経理が雑に見えるかもしれないけど支えてやってよ」と伝える。社内の人間関係を円滑にするために、両側をフォローし合う「外交官」のような立ち回りが社長には求められる、というわけです。
「人って変わらないと思ってる」と語る聞き手に、亀山会長も同意します。だからこそ重要になるのが配置です。
「人事って教育も1つあるんだけど、教育以上に配置が結構大事。営業でへこたれてるなら、ちょっと内部的なデータ分析に行こうか、という方が本人も居心地よくパフォーマンスも上がる」
やりたいことと得意なことが一致しない社員には、まず一定の納得をしてもらった上で、「これぐらい結果を出したらその領域に回ってもいいよ」「自由な仕事をやりたかったら、力をつければどこでも行ける」というロードマップを示す。
社員との関わり方の核心として、亀山会長は「叱るけど怒らない」という言葉を挙げました。
感情的に怒鳴っても、相手は「うるさい、うるさい」となるだけでエネルギーの無駄遣い。厳しいことを言った後に相手が打ち込みすぎていると感じたら、フォローを入れる。最後の決定的な一言は、怒っていては届かない。怒りではなく「悲しい」という感情で伝える。
これは子育てと同じだ、と亀山会長は言います。厳しく叱った後にちゃんと抱きしめる。謝れば許してくれる、直せば褒めてくれる、という安心感がなければ、関係は恐怖だけのものになってしまう。
そして夫婦の役割分担と同じく、経営でも片腕や専務と「今日は俺が厳しめに言うから、お前はフォローしておいてね」という共同作業が必要になる。
「全部合理的でもダメってことですね」——聞き手のまとめに、亀山会長は静かにうなずきました。
資金調達や事業撤退といった「言いにくいこと」を社員にどう伝えるか。亀山会長の答えは、社長が悪役を引き受け、相手に合わせて伝え方を変え、人を変えようとせず配置で活かす——という、合理性と人情のバランスにありました。
社員は友達ではない、しかし叱るけど怒らない。この線引きと配慮の両立こそが、長く組織を率いるための知恵なのかもしれません。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
