ポート社からの1億円の出資と一部株式譲渡を受けたダイアリー社のしゅん氏が、出資側であるポート社代表・春氏に提携の背景と意図を直接インタビュー。バリュエーションの考え方、ロールアップ戦略、SNS事業への懸念まで、資金調達を検討する若手経営者に向けて包み隠さず語った対談記事。
ダイアリー社は、ポート株式会社からの出資および一部株式譲渡を受け、資本業務提携を締結した。本記事では、ダイアリー社代表のしゅん氏が、出資側であるポート社代表・春氏を招き、提携の背景や意図、バリュエーションの考え方、そしてダイアリー社に対する懸念点までを直接ヒアリング。資金調達やM&Aを検討している若手経営者にとって参考となる本音の対談を、編集部で再構成して掲載する。
しゅん氏は冒頭、今回ポート社を選んだ理由として、エージェント領域での連携可能性と、バリュエーションを含めた要望をほぼすべて受け入れてもらえた点を挙げた。
春氏は、ダイアリー社と適性検査アプリ会社の2社に同時に出資・業務提携した背景についてこう語る。
「就活生はいろんなツールを使うじゃないですか。僕らとしては今、どれだけ会員を獲得できるかが最も重要で、集客力をどれだけ強化・担保していけるかが鍵になります。なので、いろんなチャネルで一番使われている会社さんとは、ぜひ提携していこうというのが基本的な考え方です」
エージェント事業を展開するうえでも、集客力こそが本質的な競争力となる。グループ全体の会員数および人材紹介事業の集客力を担保するため、業務提携を通じて貢献してもらう——これがポート社の一貫した戦略だという。
過去に買収した就活会議や民衆社(みん就)も同様で、就活会議は2020年の買収以降、すでに10万人以上の会員数を伸ばしており、ほぼオーガニックなプロダクトとして成長を続けている。
しゅん氏は今回のスキームについて、調達と一部譲渡がセットになっており、業務提携ありきの資本業務提携である点が特徴的だと指摘した。
春氏は、資本業務提携の位置づけをこう整理する。
「まず、買収できるなら買収というのが第一選択です。ただ、全員が100%売却したいと思っているわけではない。その時に、資本業務提携ベースであっても、うちとして取りたいメリットをきちんと取れるスキームを組めるか。そういう対応力があれば、結局、資本関係を持てる会社は多くなるんです」
ポート社は2021年にチェンジホールディングスから第三者割当増資による資本業務提携を受け、地方創生・ふるさと納税ビジネスとの連携や、自治体ネットワークを活用した就職ビジネス、IR支援などで自社の苦手領域を補ってきた経緯がある。資本関係を伴う提携は、単なる業務提携と比較して「絶対に成功させる」というコミットメントの強度が違う、と春氏は強調した。
しゅん氏が「ロールアップ戦略は通常M&Aで行うものだが、資本業務提携の形でも可能なのか」と問うと、春氏は次のように答えた。
「ロールアップというと普通はM&Aですが、資本業務提携形式でもできるロールアップはあります。僕らで言えば、とにかく会員数を増やしたい。今回、ダイアリー社と一緒にエージェントをやることでエージェントの集客数を一定程度担保できるわけです。これは資本業務提携を通じて会員数強化というロールアップ戦略を実行できていることになる」
M&Aほどの規模感ではないにしても、一定のメリットは確実に取れる。資本業務提携は有効活用すべき選択肢であり、ハードルが比較的低いがゆえに他社より早く連携をスタートできる点は競争優位にもつながる、と春氏は語る。実際、ポート社は人材ビジネスとエネルギービジネスの両領域で、すでに資本業務提携を活用したロールアップ戦略を積極的に進めている。
春氏が今回のディールで特に重視したのは、ダイアリー社の影響力の源泉がどこにあるかという点だった。
「SNSを通じてこれだけユーザーに影響力を与えられるプロダクトは、少なくとも今、僕らは作れていない。だからこの資本業務提携を通じて一番大事にしなきゃいけないのは、対象会社のSNSを通じたユーザーへの影響力がどれだけ最大化されるかということ。そこに一番コミットすべきだと思っています」
そのうえで春氏は、仮にチャンスがあったとしてもマジョリティを取る提案はしなかったと明言した。
「SNSは本当に、感性と情熱をどれだけコンテンツにチューニングできるかという世界。そこはなかなかM&Aを通じてノウハウとして得られるものではない。だとすれば、マジョリティを持っていただいて一番頑張ってもらって、僕らはそこで得られる集客のところを一緒にやらせていただく方が、中長期で企業価値は高い」
しゅん氏も「自分のやる気こそが最大のリスク要因」と認め、コンテンツへの情熱が1%でも下がれば他社に抜かれるリスクがあるなか、創業者が筆頭株主として最もリードできる立場にいることが重要だと納得を示した。属人性が競争優位である事業において、その競争優位を失う資本政策はリスクとなる——というのが春氏の判断である。
バリュエーションの納得感をどう判断するかという問いに対し、春氏はM&Aと資本業務提携でロジックは大きく異なると語った。
「100%のM&Aの場合は、コントロールも持つし連結の財務諸表にも入ってくる。減損リスクも大きい。だから、その会社の営業利益から来る倍率をベースに経済合理性を計算する。一方、資本業務提携でM&Aを想定しないものについては、資本コストに対して得られる収益がどれぐらいの期間で上回ってくるのかが大事。投下した資金が、ビジネスを通じて何年で回収できそうかに尽きる」
また、出資比率については原則として20%未満が一つの分岐点となる。20%以上になると会計上はグループ連結となり、グループ管理規定や会計処理方式の調整が必要になる。今回のディールが19%という比率になった背景には、こうした財務会計上の整理と、ダイアリー社が今後さらに資金調達と投資を進めていく前提でコスト先行が予想される点を考慮した結果がある。
「グループに入っていることで投資コストが抑制されてしまえば、それはリスク。資金調達を通じて投資していくことが目に見えている中では、このタイミングでグループ入りするのはネガティブだと思っています」
しゅん氏が「ポート社は高めのバリュエーションで出資するイメージがあるが、怖くないのか」と直球で尋ねると、春氏はこう答えた。
「高いか低いかは難しいですが、人材ビジネスにおいてこれだけ多くの会社さんと資本業務提携できているのは、価格的なメリットがあるから。個人的には高いなと思うこともありますが、それを回収できる力があると考えれば成立する」
ロールアップ戦略の強みは、対象領域での回収の見立てが立てやすいことにある。会員数あたりの売上が見えていれば、会員数の獲得力から将来の売上を逆算できる。だからこそ、多少高いバリュエーションでも回収可能と判断できるという。実際にポート社は、民衆社を100%買収するなど大胆な投資判断も行ってきた。
一方で、人材以外の領域では成長が想定に届かず売却した案件もあると春氏は率直に明かした。失敗も含めて入れ替えを行いながら、最適なポートフォリオに調整していくのがM&Aの実態である。今後のポート社の成長戦略としては、人材領域とエネルギー領域でのロールアップM&A・資本業務提携を中心に据えていくという。
資本業務提携後の運営体制について、春氏は月次でのレポーティングを基本としていると説明した。多くの提携先で、社内でモニタリングしているKPIデータを共有してもらい、状況確認を一緒に行う形をとっている。
しゅん氏は、ダイアリー社が今後1年半ほどYouTubeチャンネルの影響力最大化にコミットする方針であり、再生数を伸ばすコンテンツとLINE面談コンバージョンを生むコンテンツの設計が異なる点を共有。チャンネル登録者40万人を一つの目標に置きたいと語った。
これに対し春氏は、契約上のコミットを守ることは前提としつつも、最終的な企業価値向上にとってどの選択が最適かを軸に意思決定すべきだと応じた。
「SNSの就活市場で圧倒的なナンバーワンの座を作るために必要なことはどこなのか。そこで意思決定するのが一番いい」
抜けられないと思わせるプロダクトになれば、競合は参入してこなくなる。SNS×人材紹介という切り口でナンバーワンになる可能性を最大化することが、今回の資本業務提携の本質的なコンセプトである、と春氏は語った。
今回のディールは設計確定後、約2ヶ月のスピード感で実行された。春氏は「設計さえ決まれば、あとは1ヶ月から1ヶ月半で執行できる。スピードは意識している」と語る。
しゅん氏は、創業者同士が直接やり取りすることの重要性にも言及した。M&Aの現場では「担当者は了承していたが社長判断でブレイクした」という話も少なくないなか、ポート社の場合は春氏自身がフロントに立つため、意思決定が速い点が印象的だったという。
ダイアリー社は今後、YouTubeチャンネルの影響力最大化を最優先課題として取り組み、1年単位で成長の経過を視聴者に報告していく方針を明らかにし、対談を締めくくった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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