アドウェイズ創業者・岡村陽久氏が自宅で語った経営哲学。会食の9割は業績に繋がらない、サウナこそ経営者の武器、社員を本気で好きになる組織論まで。ラーメン次郎を目指すオールドルーキーサウナの戦略も明かす。
社員1,000人規模に成長したアドウェイズの創業者であり、現在はオールドルーキーサウナを運営する岡村陽久氏。今回はそのご自宅にお邪魔し、経営者としての時間の使い方、組織論、そしてサウナビジネスへの想いを聞いた。
12年間乗り続けるハーレーで現れた岡村氏の自宅は、意外にも2ルームのシンプルなワンルームマンション。室内にはサウナの紙コップの在庫が積まれ、「仕事全振り」の生活がそのまま現れている。壁には地図が貼られ、北千住・練馬・中井・東中野など、次の出店候補地を物理的にチェックしているという。
岡村氏が繰り返し語ったのが、経営者にこそサウナが必要だという主張だ。
> 「経営者って社員からなめられたくない気持ちがある。だからいい車に乗ったり、ブランド服を着たり、予約の取れない飲食店に行ったりする。でも、社員からは完全に見透かされている」
その代わりに「毎日サウナに通っている」と言うだけで、社員からの見方は変わるのだという。「4段目に5分座っている」という事実だけで、精神力やハードシングスを乗り越える力の象徴になる、と岡村氏は半ば冗談めかしながらも力説する。
もう一つの理由は、思考のリセット。
> 「社長には1日中ネガティブな情報や課題が集まってくる。それをお酒で流す経営者もいるが、サウナなら熱い室内で一旦すべてを忘れられる。家に帰ってぐっすり眠れて、翌日フルパワーで働ける。これを続けたら、すごい会社になると思う」
さらに経済合理性も大きい。会食を毎晩するより、月額制サウナのほうが圧倒的に安い。岡村氏自身のサウナの入り方は、3〜5分のワンセットで10分以内に出る超効率派だ。
話題は経営者の会食論に。岡村氏の見解は明快だった。
> 「僕の経験上、会食と業績はほぼ連動しない。9割5分は偽物の会食なんですよ」
本物の会食とは、取引先との関係性を深めるなど、明確に業績に貢献するもの。一方、すでに仲のいい経営者同士で集まる飲み会は「これ以上絆を深める意味がない」場であり、お金と時間を浪費するだけだという。
では、その時間を何に使うべきか。岡村氏は「社員と飯を食ったほうがいい」と即答する。
> 「社員とは飯を食えば食うほど絆が深まる。同志になれる、戦友になれる。同じ目指す場所を共有できる」
現在も、社外との会食は月に1〜2回程度。残りはほぼ社員との食事に充てているという。
マネジメントで最も大切にしてきたのは何か。岡村氏は「社員一人ひとりを本気で好きになること」と答える。
> 「好きになると、この社員を成長させたい、新しいことをやらせたいという本物の気持ちが湧き出てくる。だから本気でチャレンジを促せる」
短所すら「可愛く見える」というのが岡村流だ。どんな人にもすぐに好きになれるポイントを見つけられる、という訓練の賜物でもあるのだろう。
若手起業家へのアドバイスとしても、この姿勢を強調した。
> 「100人くらいまでは全員を把握できる規模。明日はあいつと昼飯食いたいな、と心から思えるくらい社員を好きになる。好きになられたら、人は好きになってくれる。返報性の法則で、社員からも愛される。社員のモチベーションを高めるのは相手の問題でコントロールできないが、自分から愛することは絶対にできる」
岡村氏のもう一つの興味深い経営判断は、オールドルーキーサウナを「200店舗まで人を1人も採用しない」と決めて始めたことだ。清掃も外注、店舗開発も外注。アドウェイズで「人を育てて何ぼ」のビジネスを20年やった経験を踏まえ、あえて真逆のスタイルに挑戦している。
ただし、お客様が直接触れる部分のクオリティには徹底的にこだわる。ボディソープの吊るし方一つまでマイクロマネジメントするという。
> 「これは属人性が強いというより、こだわりが強いだけ。マニュアル化すれば誰でも教えられる。だから拡張性はある」
この設計思想は、AI時代に少人数で大きな事業を作りたい経営者へのロールモデルになりうる。
オールドルーキーサウナのロールモデルは、意外にもラーメン次郎だという。
> 「お客さんが想像するラーメンから作ったら絶対できないプロダクト。バランス受けを最初から捨てて、突き抜けている。それでいて、お店とお客さんの協力関係が成立している。並び方、食べ終わった後のテーブルの戻し方、すべてにお互いへの愛がある」
オールドルーキーサウナの「熱々・キンキン・ガラガラ」というコンセプトも、まさに突き抜けたポジショニング。タオルをセルフで洗うなど、お客様の協力を前提にした店舗運営も、ラーメン次郎の文化に通じるものがある。
業績面ではギリギリ黒字、初期投資の回収には10年かかる見込みだという。一般的なサウナの3年回収と比べれば「事前活動に近い」とも語るが、新ブランドではより収益性を意識した設計に挑む構えだ。
最後に、ハードシングスをどう乗り越えるかについて。岡村氏は困難を「小・中・大」に分類する。
- 小さな困難は、サウナに入れば忘れる程度のもの
- 中程度の困難は、紙に書き出すと9割が「小」に分解できる
- 大きな困難は、本当に次から次へと押し寄せ、飲まれそうになる
> 「大困難が訪れた時に思うのは、『もし自分の自伝が出版されて、それを誰かが手に取って読むとしたら』ということ。順風満帆な人生は伝記として全く面白くない。今、絶望していると感じるその瞬間こそ、読み手にとっては一番盛り上がる場面なんです」
そう考えると冷静になれる。冷静になれば困難と正面から向き合える。そして乗り越えた経験は、いつか面白いコンテンツとして語れる日が来る──岡村氏はそう締めくくった。
会食を減らし、社員と食事を共にする。サウナで頭をリセットし、フルパワーで翌日に臨む。社員を本気で好きになる。困難を「自伝の読み手視点」で捉え直す──岡村氏の経営哲学は、いずれもシンプルで、明日から実践できるものばかりだ。それでいて、本人がアドウェイズという1,000人組織を作り上げ、今また新しい事業形態に挑戦しているという事実が、その言葉に重みを与えている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
