円形脱毛症が11箇所できても会社経営に向き合い続けた、たろたんパパ。経営者を悩ませるストレス・孤独・プレッシャーといかに付き合うか。「プライドは邪魔。誇りこそが財産」と語る独自の経営哲学と、それを支えた妻・ママの覚悟を聞いた。
M&A CAMPが今回お届けするのは、経営者にとって避けて通れないテーマ「ストレスとの向き合い方」。たろたんパパママのご自宅にお邪魔し、妹さんも交えてお話を伺った。
たろたんパパは経営者時代、ストレスから円形脱毛症が頭に11箇所できたという。最大のものはかなりの大きさで、半年ほど皮膚科に通いながらも、ママが強力なケープで隠してくれていたそうだ。
「会社の経営者というのは、ストレスや孤独と向き合って、お友達にならなければいけない。絶対にストレスがかからない経営者なんてありえない。もしいたら、その会社はとっくに潰れている」
パパが語るのは、ストレスを排除するのではなく受け入れる姿勢だ。「100のストレスが来ると思っておけば、実際に来た10個なんて大したことはない。いかに自分を騙すか、ということ」。
興味深いのは、円形脱毛症ができたタイミング。会社が急成長した時に「こんなはずはない、また落とされるんじゃないか」と無意識のプレッシャーがかかり、症状が出たという。
さらに会社を引退した3ヶ月後にも、再び円形脱毛が現れた。皮膚科の医師によれば、引退してホッとした人にもよく見られる症状なのだという。
「常に頑張っていなきゃいけない毛根も、ホッとしてしまったんだろうね」とパパは笑う。
業績が下がった時はむしろ気が張っていて病気をしなかった、というのも印象的だ。売上が落ちた1年、パパは自らの小遣いを半分以上カットし、愛車のポルシェも手放した。出張のフライトはエコノミーへ、ホテルもビジネスクラスのものへ。税理士からは「利益はちゃんと取れているのでそこまでする必要はない」と言われたが、「俺は負けたんだ」と気を引き締めた。1年後、業績を戻したパパは、即座にポルシェを買い直したという。
「ストレスって、ちょっと立ち止まるからストレスになるんじゃないかな。戦っている時はそんなことを感じない。ボクサーが戦っている時に殴られても痛くないのと一緒」
世の経営者には、女性や愛人を作って現実逃避する人もいる。それを肯定するわけではないが、ストレスのはけ口は確かに必要だとパパは言う。ただし自身は仕事ばかりでそうした「はけ口」はなかったため、向き合うしかなかった。
人生で「幸せだ」と感じたのは、1年のうち決算が出た日のたった1日だけ。あとは戦いの日々だった。「仕事が楽しいなと思ったこともないし、辛いと思ったこともない。前に向かって走っているだけ」。
そのエネルギーはどこから来るのか。パパは即答する。「全部コンプレックスから」。
「僕なんて辺中の辺だったから、それ以上下がりようがなかった。あとは1mmでも10cmでも上がっていくことしかない」
そしてもう一つ、パパが大切にしている考え方がある。
「大体の人間はプライドが必ず邪魔をする。自分の中の壁って何かと言ったら、プライドなんですよ。世界的に見たらちっぽけなもの。それを壁にしてはいけない」
パパは人生でプライドを持ったことがないと言い切る。その代わりに持っているのが「誇り」だ。
「40歳で振り返って『俺、やってるね』、50代で振り返って頑張ってきた軌跡を見た時に、それが誇りに思える。将来誇りが持てるような大人になりたい、と思ってきた。そしてその誇りこそが、子供たちへの教育になる」
「俺の背中だけ見とけや。道なき道を進んで俺が道を作る。お前らはその道を歩けばいい」——これがパパのスタンスだ。
妹さんも、その背中を見て育った一人。「父はお金も学歴もない状態から成功したのを知っていたので、上には上がいても『そこは負けているけど他では勝っている』と考えられるようになった」と語る。幼稚園の頃から両親はほぼ家におらず働き詰めだったが、寂しさよりも「自分も頑張らなきゃ」という気持ちのほうが強かったという。
パパは語る。「子供がかわいそう、というのは親のエゴ。子供はそれによって強くなる。よく『子供が甘えてくる』と言うけれど、違う。大人が甘えているんですよ」。
そして付け加える。「ストレスは感じなかったけれど、常にプレッシャーは感じていた。子供たちに辛い思いをさせていると分かっているから、絶対に負けられない」。
ママもまた、独自の流儀でストレスと向き合ってきた。若くして経営者になった主人は、当たる場所がないからママにぶつかってくる。最初は受け止めきれずに泣いた時期もあったが、ある時から「気持ちをニュートラルに置き、受け入れて流す」という方法を身につけた。
「重い空気を全部受け入れたら、私のほうが参ってしまう。だから、うまく流す方法を覚えたんです」
理不尽だと思うことは「いっぱいある」と認めながらも、それに反発しても仕方がないと言い切る。子供たちが生まれた頃には、すでにこの境地に達していた。
パパも昔から家族に伝えてきた言葉がある。「人生は理不尽なんだ。理不尽だ、ダメだダメだ、と言って生きるから辛くなる。理不尽を受け入れるというのは、空気を読むということ」。子供たちの教育においても、わざと理不尽を与えてきたという。
プライドを捨て、誇りを積み上げる。ストレスから逃げず、友達になる。理不尽を受け流し、結果で背中を見せる——たろたんパパママの言葉は、経営者だけでなく、何かに挑む全ての人に響くものだ。
戦っている瞬間、人は痛みを感じない。立ち止まった時に、初めてストレスはやってくる。だからこそ、走り続ける。それが、たろたんパパが体得した経営者としての生き方だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
