起業3ヶ月の25歳経営者が抱える資金繰り・組織マネジメント・出口戦略の悩みに、ウェディング事業で成功を収めたタロたんパパママが回答。地方特化戦略、社員との向き合い方、自分の器の知り方など、創業期の経営者必読のアドバイスが詰まった対談。
今回のM&A CAMPでは、好評だった前回に引き続きタロたんパパママをゲストに迎え、起業1年目の若手経営者・久保氏(25歳)の事業相談に乗ってもらう企画をお届けする。久保氏は今年3月に会社を設立し、学生のインターンシップ事業と営業代行を展開。役員2名・社員5名でスタートし、起業3ヶ月目を迎えたところだ。
相談の冒頭、久保氏が抱える悩みは明快だった。
「目の前のことしか考えられなくて、中長期的なことや社員のマネジメントの部分まで考えられていない。あとはお金が足りないかもしれないという不安もあります」
この悩みに対し、パパは即答した。
「お金の不安は、経営をやっている間は一生離れることはできない。僕らも初め500万を借りるだけで相当ビビって、銀行さんに何回も通った。でも最終的には10億クラスを2回ぐらい借り入れしているから、そうなると500万は別物になってくる」
重要なのは、その不安を一人で抱え込まないこと。パパは社員に正直に弱さを見せることを勧める。
「『今、俺は社長になって初めて3ヶ月。目の前のことしか見えない。成長過程でもあるので理解してほしい』と言ってしまえばいい。社長ってこういうもんだ、弱いところを見せちゃいけないと思いがちだけど、どんどん見せた方がみんなが支えてくれる」
パパ自身は前半戦は弱音を吐かなかったが、社員が230人規模になってから態度を改めたという。
「社員の協力があって初めて会社が成り立つと気づいたから。会社は取引先や仲間、社員の協力があって成り立つんだと悟ってからは、ちゃんと言うようにした」
ママもこう続ける。「言う方が本人も楽だし、みんなも協力体制になってくれる。だから余計パワーがアップする」
社員を守るためのリスクヘッジについて、ママが衝撃的な体験談を語った。
「万が一の時のために、プロミスやアコムから50万ずつ抜けるかなと。タロたんという名前で4ヶ所、無人君みたいなところで借りて200万。1ヶ月以内で返せば足がつかないから、それを45回やった」
創業からまだ間もない、娘が1〜2歳の頃の話だという。「保証人がいらないからありがたかった」と振り返るママに、パパは「すごい肝が座っている。筋トレと一緒で、初日や2日目は筋肉がつかないけど、ずっとやっていくうちに何てことはなくなる」と称賛した。
久保氏の事業は福岡と大阪に拠点が分かれている。創業地である福岡にはインターン生10名のうち半数が残り、もう半分が大阪にいる状況だ。これに対しパパは強く一点集中を勧めた。
「僕だったら福岡に特化する。最初は仙台でやったけど、銀行筋から上場しないか、東京に出さないかという話があった。でも東京に出したら仙台12時間・東京12時間で、数字は上がらない。だったら仙台に24時間特化した方がいい」
そして驚くべきことに、パパは創業初期から既にM&Aによる出口戦略を見据えていた。
「東京の頑張っている会社にしてみれば全国を制覇したい。でも札幌に今から作って3年と費用がかかる。だったら、そこでナンバーワンになっている会社を買うわけです。大企業が進出したい地域で1番になっていれば、M&Aが成立しやすい」
地方都市で一点集中することのメリットは、M&A以外にも及ぶ。
「地域によって社員のタイプが絶対違う。福岡でナンバーワンになって余力があれば他地域進出もありだし、そこでバイアウトを狙うのもあり。事業を分散させているとM&A的には不利になる」
パパが上場ではなくM&A的な出口を選んだ背景には、自分自身の客観視があった。
「お風呂場で日本地図を眺めて、仙台中心にこんなに点があると見ていた。でも僕の性格と僕の器で、全国を制覇するとか、東京での戦いは無理だと思った。上場基準も知っていたし、社長の人となりも叩けば埃が出る方が好きだから、上場のために仕事をするのは違うと」
戦いには「場所」と「タイミング」がある。これは戦国武将の戦い方と同じだとパパは言う。
「血の地理を知っているところで戦うのが一番戦いやすい。地方都市と首都圏ではウェディング会場をどこに持っていくかという考え方が全く違う。だから血の地理を生かせるところで戦って、ナンバーワンになるべき」
自分の器を知る方法について、パパは経験値しかないと断言する。
「川の石と一緒で、突っ張ってみてはへこんで、そうやっていくうちに丸くなっていく。それが20代。ほとんどの人は自分のことを分かっていない。本当はもっと行けるのに『俺なんて』という人もいるし、これしかないのにもっと行こうとする人もいる。でもそれが20代だったりする」
採用については、パパは自身の弱点を正直に告白した。
「全部社長面接で1発目から決めてしまう。一生懸命頑張りますのでお給料は生きていけるぐらいでいい、という人に弱い。でも『一生懸命頑張ります』が口癖のやつに限って仕事ができない。3ヶ月後には『こんな安い給料でやってられない』と社内で文句を言っている」
活躍する人材の特徴については、こう語る。
「『頑張ります』はあまり言わない人。もう頑張っているから。何かあったら『すいませんでした』『社長もこうですよね』と相手への配慮ができる人」
また、人間は「癖」で生きているという。「頑張る人は頑張り癖がある。頑張らない人は頑張らない癖がある。嘘をつく人は嘘をつく癖がある」。だからこそ、受験を頑張って大学に行った、資格を取ったといった「頑張り癖」のある人材が後半は活躍したという。
組織運営についてパパは意外な提案をする。
「もし今もう一度社長をやるなら、社員の皆さんとは全部敬語にする。さん付け敬語で、仕事以外のことは話さない。箱の中のみかんが1つ腐ったら全部腐るのと同じで、近すぎる距離感は感化されてしまう。社長は100人いれば100人に責められる立場。だから何クッションか置くのが一番」
ピラミッド型組織でのトップダウンの重要性についても語られた。
「組織はある程度トップダウンが必要。社長は責任を持って考えて下していかなければいけない。命令って『命』と書く。命をかけて命令を下していく、それしかない」
スピードと損切りの観点からも、トップダウンは欠かせない。
「みんなで企画を考えて『もう少し頑張りましょう』となっても、経営的判断で言ったら損が増えるならずるずるやらず、損切りを早くしないといけない。なぜならみんなの給料を守れなくなるから」
最後にパパは、孫正義氏や大谷翔平選手を例に「自分票(自分のロードマップ)」を作ることを勧めた。
「僕も頭の中では作っていた。今は辛抱時だ、ここを抜ければポーンと上に行くんだろうと思っていたから我慢ができた。お金を得るということは信頼を得るということ。信頼は1日にして得ることはできない。1年や2年で年商5,000万・1億になるわけがない。なった人は宝くじが当たった人」
地方ナンバーワン戦略、M&Aによる出口、社員への正直な向き合い方、自分の器の見極め方―創業3ヶ月の若手経営者への回答は、すべての創業期経営者に通じる普遍的な知恵に満ちていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
