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総合>ビジネス動画>【3回売却を経験】バトンズCOO海山氏が語る、買い手が殺到する事業の特徴とM&A成功の本質

【3回売却を経験】バトンズCOO海山氏が語る、買い手が殺到する事業の特徴とM&A成功の本質

2025/6/15
M&A CAMPチャンネル
M&A CAMPチャンネル運営局

来月破産という危機から3度の事業売却を成し遂げた経歴を持つ、株式会社バトンズ取締役の海山氏。自身のM&A体験談から、スモールビジネスのM&A戦略、買い手から評価される事業の条件、適正バリュエーションの考え方まで、M&A業界の最前線をリアルに語る。

「来月破産」から3度の事業売却へ──波乱万丈な起業ストーリー


株式会社バトンズの取締役として、インターネット上でM&A支援を行う海山氏。会員登録30万、日本のM&A仲介会社・士業1900社のネットワークを抱える同社で、スモールビジネスから10億円規模のM&Aまで幅広く支援する立場にある。


しかし、その経歴は決して平坦なものではなかった。海山氏自身、これまで3回のM&Aを経験している。


中学生のころから株式投資を始め、ライブドア証券に親の承認を得て口座を開設。リーマンショックを経験しつつも、貯金が1000万円ほどに。大学卒業後は2年ほど勤めた後、25歳で起業した。


最初に手がけたのは、旅行ガイドブックをアプリ化するサービス。自身が旅行好きで、複数冊のガイドブックを持ち歩く負担や情報の鮮度の問題を解決したいという思いから始めた事業だった。GPSマップがオフラインでも動作する点を活かし、軽量で快適な旅を実現するアプリを目指した。


しかし、結果は惨敗だった。「オフラインで使えるアプリは広告が流せないんですよ」。当時主流だったディスプレイ広告やアフィリエイトはオンラインでのコンバージョン計測が前提のため、オフラインアプリには出稿できなかった。海外向けアプリだったため日本人旅行者向けの宿広告も思うように獲得できず、2年目の月商はわずか10万円。借金と個人保証を抱え、再来月には資金ショートで倒産という瀬戸際まで追い込まれた。


エンジェル投資が変えた運命──オンラインへの転換で急回復


暖房を消し、ダウンジャケットと手袋姿で仕事をしていたある日、転機が訪れる。当時よく相談に乗ってくれていたGoogle関係者からエンジェル投資の話があった。額自体は数百万円程度で、2か月でなくなる規模ではあったが、「いずれいい関係になりそうだから出したい」と言ってもらえたことに、強い責任感が湧いたという。


そこから海山氏は、すでに保有していたデータの活用方法を再考した。アプリ用に蓄積した約100万ページ分のデータをオンライン上で公開し、そこにディスプレイ広告やアフィリエイトを設置する戦略へ転換。これが短期間で大きく跳ねた。


特に成功したのは飲食系の情報メディア。当時は食べログやぐるなびよりも上位にSEOで表示されるほど強く、月10万〜15万人をネットワークできる規模に成長した。1予約ごとに収益が発生するアフィリエイトモデルで業績はV字回復。最終的に、このメディアを上場会社に売却した。これが1回目のM&Aである。


上場企業との取引で痛感した「資料の重厚さ」──初M&Aの学び


海山氏の3回の売却先は、いずれも上場企業だった。今思えばイレギュラーだが、当時はそれが当たり前のM&Aだと思っていたという。


「会計、法務、労務とあらゆる分野に切ったチェック項目があり、資料もかなり重厚なものが求められた。マネジメントインタビューも3〜4時間がっつりヒアリングされる。こんなに資料が必要なんだなと驚きました」


小規模事業者では求められた水準の資料を整えていないケースも多く、誰に聞いて作成すればよいか分からない場面も頻発したという。買い手企業に直接尋ねたり、税理士に助けてもらったり、過去にM&Aを経験した人に相談したりして乗り越えた。10年ほど前は今ほどM&Aが活発ではなく、特にWebサイトのM&Aは事例も少なかった時代だった。


2社目──ウェブサイト売買プラットフォームを10か月で売却


1社目の売却後、海山氏が次に立ち上げたのはウェブサイトの売買プラットフォーム。当時すでに10社ほどの先行プレイヤーがいたが、マーケティングを駆使し、10か月で成約数業界1位に到達した。


この事業を急速に売却した理由は、流入する案件量に個人で耐えられなくなったことにあった。年間で200件規模の成約をプラットフォーム全体で扱い、海山氏自身もアドバイザーとして10件前後の案件をワンオペで支援していた。


折しも当時、大型資本の参入が目前に迫っていた。「これは単独では戦えない」と判断し、アフィリエイトサービスプロバイダーであるフォーイットへ事業譲渡を実施。流入経路はSEOとセミナー紹介が中心で、当時アフィリエイト団体最大手と組んでいたことも追い風となった。


株式譲渡ではなく事業譲渡を選んだのは、買い手側がその事業のみを欲しがったため。「お金よりも、作った事業が伸びていくといいなというのがメインだった」と振り返る。


3社目──プロ経営者として参画したデジタルサイネージ事業の売却


2回目の売却後、海山氏はM&AバンクのYouTubeチャンネルに数回出演。そこを見た株式会社ワイズの代表からヘッドハントされ、プロ経営者として参画した。「YouTubeの時代ですね」。


株主・オーナーとして経営したいという気持ちもあったが、自身の起業初期の失敗から「リスクを完全にコントロールする立場よりも、誰かに期待されて応える方が頑張れる」という自己理解があり、すんなり受け入れたという。


ワイズで担当したのは、タワーマンション1階のデジタルサイネージ広告事業。300棟ほどの設置網を持ち、マンション管理情報の合間に広告を配信できる媒体だった。タワマンはチラシのポスティングがNGの物件が多く、サイネージ横のチラシラックも独自の価値を持っていた。住戸属性が高いため、高級車・ブランド・別荘・卓食系・不動産売買など単価の高い広告が集まり、業績は急成長。


10〜11か月でAI系上場企業のニューラルグループへ売却に至った。サイネージ事業はさらに設置数を増やすために多額の投資が必要であり、営業会社であるワイズ本体にとっては、サイネージ投資の継続よりもマンションネットワークから生まれるコネクションの活用に意義が見出せるフェーズだった。


なぜ毎回「売却」を選ぶのか──執着しないという経営観


3度の売却を振り返り、海山氏は「自分でやるよりも他社がうまくいくフェーズに差しかかった瞬間」を見極めて手放してきたと語る。


また、毎回売却後には3か月ほどの休養期間を設けているという。「結構燃え尽きるんですよ。1回区切りがつくと何もする気が起きなくなる。プレッシャーを与えられないと自分は動かないタイプなんだなと感じました」


バトンズへ──「日本社会の課題」に向き合う場として


2023年8月、海山氏はバトンズに転職。理由はいくつかあるという。1つは、廃業する事業者の約6割が黒字だという日本の現状。「人がいないから潰れていく事業者を、M&Aで救える可能性がある」という社会的意義。


もう1つは、子供が2人生まれたタイミングで「将来父親が何のために忙しくしていたのかと思い起こされたとき、誇れる仕事をしたい」と考えたこと。M&A×ITという領域は、自身の経験が活かせる場だった。


バトンズの強み──小規模M&A市場で7〜8割のシェア


バトンズは外部機関の調査によると、小規模M&Aプラットフォーム市場で成約数・案件登録数の7〜8割を占めているという。背景にあるのは、相談案件の全件にコンサルタントが1〜1.5時間の面談を行い、なぜ売るのか、いつ売るのか、金額や条件をどう設計するかをコンサルティングしている点。希望に応じて伴走サポートも提供する「DX×伴走型」の進め方を構築している。


もう1つの強みは、1900社の専門家ネットワーク。仲介会社や士業がバトンズを使って広く全国から買い手を募ったり、自走できない案件のサポートを担ったりする構造になっている。上場M&A仲介会社のほぼすべてが登録しており、100億円規模の案件登録もある。


海山氏自身、現在も週10〜20件の面談を行い、直近半年で3件のメイン支援案件を成約させている。


買い手が殺到する事業の条件──「売り抜け」志向は嫌われる


20〜30代でスタートアップやスモールビジネスを営み、M&Aを目標に起業する人へのアドバイスとして、海山氏は「売り抜け発想」への警鐘を鳴らす。


「立ち上がってバーンと伸びたから3〜5年分で買ってもらえるでしょう、という感覚で来てしまう人がいる。でも買い手からすると『なぜ起業家は今やめるんだっけ』となる。それでは想像する価格はつかないし、買いたいとも思われない」


評価される売り方は2つ。1つは「この会社は伸びる」と心から信じ、ハイバリュエーションでも自ら中に入って伸ばすコミットができること。もう1つは、決算が2〜3年積み上がり数字で説明できる状態まで待つこと。


適正バリュエーションの2パターン戦略


「利益×5年分」のような一般的なロジックが通用しにくいWebメディア領域では、バトンズに蓄積された相場データをベースにアドバイスを行う。ただし価格の決め方は2パターンを使い分けている。


1つは、相場感の手頃な価格で出して複数オファーを引き出し、結果的に競争で価格が上がるケースを狙う方法。もう1つは、急いで売る必要がない場合に「希望金額高め」で掲載し、運命の1社と出会うアプローチ。30万人の会員ネットワークがあるため需要と供給で価格が決まりやすく、いずれの戦略も機能するという。


メディア系M&Aについては、YouTubeのように会員やおすすめ流入で固定ユーザーが積み上がる構造は評価されやすい一方、SEOメディアはアルゴリズム変動で上下が激しく、評価が抑えられがち。漫画系チャンネルなど、コンテンツへの依存度が高くチャンネル固有のファンが少ないメディアは「総合考慮の価格」になりやすいと指摘する。


「アセットとして積み上がったものが一定期間維持できる構造かどうかが重要。一口に同じ業種・事業に見えても切り取り方で見せ方も戦略も変わる」


売り手史上──買い手は売り手の約10倍


現在のバトンズでは、買い手登録が売り手の約10倍。売り手市場の状況にある。一方で買い手も成熟してきており、1度の山で見る件数は明らかに増えているという。


手数料体系は、買い手は登録・成約時ともに無料。売り手は最低35万円または譲渡価格の2%のミニマムプランから始まり、コンサル伴走型の場合は譲渡価格の5%(最低200万円)が基本。初期費用は不要で、一般的なM&A仲介より始めやすい設計になっている。


また「非専任制」を採用しており、関係性のある仲介会社経由でストロングバイヤーを連れてくる提案も並行して受けられる。30万会員ネットワーク+複数仲介会社のストロングバイヤーに同時にアプローチできる点も特徴だ。


売却後の人生まで考える──「悪評を立てない売り方」を


特に若手起業家へのメッセージとして、海山氏は売却後のキャリアまで意識した売り方を勧める。「悪評が立つような売り方をしてしまうと次のキャリアに響く。買い手もハッピーになるようにM&Aを実行し、その後も責任を持って考える方がいい」


直近の制度面でも追い風が吹いている。税制や会計基準(のれんの取り扱い)の改正検討、グロース市場における時価総額100億円基準の議論など、M&Aを後押しする変化が続く。「踊り場かと思ったところから、また逆にドカンと伸びている」と海山氏は市場を見る。


まとめ──情報の非対称性を埋めるために


買い手は経験を重ねるが、売り手にとっては人生で1〜2回の取引。情報の非対称性は依然として大きい。海山氏自身も「全部終わったときに、もうちょっとあそこを見ておけばよかったと気づくことがある」と振り返る。


バトンズは、掲載するか分からない、いつ売るか決まっていない段階の相談も受け付けている。半年後・1年後を見据えた「事業の作り方」のアドバイスも可能だという。1円の事業譲渡から大規模案件まで、幅広く伴走できる体制を目指している。


海山氏自身、スモールビジネス・スタートアップ系の案件は前面に立って対応するという。M&Aを検討するすべての経営者にとって、第三者の目を早めに入れることが、無知という罪を避ける第一歩となる。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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目次

  1. 1.「来月破産」から3度の事業売却へ──波乱万丈な起業ストーリー
  2. 2.エンジェル投資が変えた運命──オンラインへの転換で急回復
  3. 3.上場企業との取引で痛感した「資料の重厚さ」──初M&Aの学び
  4. 4.2社目──ウェブサイト売買プラットフォームを10か月で売却
  5. 5.3社目──プロ経営者として参画したデジタルサイネージ事業の売却
  6. 6.なぜ毎回「売却」を選ぶのか──執着しないという経営観
  7. 7.バトンズへ──「日本社会の課題」に向き合う場として
  8. 8.バトンズの強み──小規模M&A市場で7〜8割のシェア
  9. 9.買い手が殺到する事業の条件──「売り抜け」志向は嫌われる
  10. 10.適正バリュエーションの2パターン戦略
  11. 11.売り手史上──買い手は売り手の約10倍
  12. 12.売却後の人生まで考える──「悪評を立てない売り方」を
  13. 13.まとめ──情報の非対称性を埋めるために
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