DMM.com会長・亀山敬司氏が語る、AI時代に経営者が身につけるべきスキル。AI活用の重要性を認めつつも、それ以上に大切な「人間知能」と信頼関係の築き方について、自身の体験を交えて率直に語る。
AIが急速に普及する現代において、経営者やビジネスパーソンは何を学ぶべきか。DMM.com会長の亀山敬司氏は、この問いに対して明快に答える。
「結論を言えば、AIを使いこなせるスキルが今は一番いいと思う」
記憶力はスマホがカバーしてくれる時代であり、英語も自動翻訳の精度が飛躍的に向上している。亀山氏自身、先日中国を訪れた際にも、目の前で字幕が自動で出てきてナチュラルにコミュニケーションが取れたという。
「最優先で言えば、今は一番お得というか効率がいいのはAIかな」
亀山氏は、最近30年ぶりにスノーボードに挑戦した体験を引き合いに出す。
自身が20代の頃、スノーボードはまだ流行り始めで、禁止しているスキー場もあるほどだった。子供の頃からスキーをやっている友人たちと勝負しても勝てる見込みがない中、新しく始まったスノーボードなら「みんな横一線、用意ドンの状態」だった。
「AIもここ2、3年でしょ。スノボも出始めて2、3年だった。30年経って今やっても周りはみんなスノボばっかりだから、そっちのほうがお得じゃない」
ITは20〜30年、それ以前のスキルは数十年の蓄積がある。しかしAIはまだ始まったばかり。だからこそ、いち早く取り組むことに大きな意味があるという。
一方で、亀山氏自身はAIをゴリゴリに使いこなしているわけではないと明かす。その理由は明確だ。
「俺がAIをやる必要があんまりないかと言うと、財務の専門とか、データ分析専門とか、英語の専門のやつにみんな聞いてきたから。身近なやつに聞いているから事足りる」
専門家の仲間たちが「人間知能」として助けてくれる。だからこそ、AIを自分でやらない経営者には別の選択肢があると語る。
「AIをやらないなら、コミュ力というか仲間を増やせって話になる。社員にAIを学ぶ機会を与えるとか、AIに詳しい友達を作るとか」
かつて自身がITスキルを持たずとも、ITができる仲間を集めて事業を作ってきたのと同じ構図だ。
コミュニケーション力という言葉から多くの人が連想するのは、明るく社交的なイメージだろう。しかし亀山氏の解釈は異なる。
「俺なんて陽キャじゃなかったわけよ。50歳まで引きこもって誰にも会わなかった。社員との飲み会もそんなになかった」
本当のコミュ力とは、明るさやノリの良さではなく、信用力や信頼関係だという。
「いざという時に頼みたいのは信用できるやつでしょ。こいつ暗いんだけど口が硬いなとか。逆にいつもパリピみたいなやつでも油断できないなというやつもいる」
AIに適切な指示を出して欲しい答えを引き出すスキルと、人と仕事をするスキルは似ている。問いを立てて任せるという点で、両者は地続きなのだ。
「AIがあれば一人で起業できる」「人に頼まなくてよくなり人間関係が減る」という議論についても、亀山氏は冷静な視点を示す。
「AIだけできて一人ででかくなりますってやつには、ならないと思う」
少人数の組織ほど、一人崩れただけで10%、20%が失われる。AIは万能ではなく、AIで分析した結果を売り込みに行く人間も必要になる。
「寂しがり屋の俺としたら、人間関係がない中で生きていくのはしんどいね」
印象的だったのは、亀山氏自身が決して最初から「親分肌」だったわけではないという告白だ。
「学生時代も親分というよりはひっそりといるタイプ。委員長とかにしてもらえない、人望もなかった。陰キャだったし、明るくもなく目立たず、よく寝ていた」
中学時代の同級生からすれば、現在の亀山氏は想像もつかないだろうという。
ビデオレンタル店を始めた頃から、自分一人ではできないと痛感し、徐々に変わっていった。
「人は変われる。ちゃんと自分と向き合って、自分はここが足りないな、やりたいことは何なんだと思ったら、必要に迫られて身につけていく」
亀山氏が最後に強調したのは、一般論としてのAIや信用力よりも、自分自身との対話の重要性だった。
「自分にとって必要なものが何か、自分がやりたいことのために何が必要かと向き合えば、勝手にそれになっていく。技術の発展に張っておくのも大事だけど、一番大事なのは自分と向き合って、自分がどうなりたいのか考えること」
AI時代に求められるスキルを問う議論の先に、亀山氏は普遍的な人間の在り方というテーマを置いた。AIを使いこなすこと、人間関係を築くこと、そして自分と向き合うこと。これらは別々のスキルではなく、同じ根から伸びる枝葉なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
