アドウェイズ創業者の岡村陽久氏が、千葉・木更津の築30年マンションを総額8億円で取得・リノベーションし、サウナホテル「OLD ROOKIE SAUNA HOTEL」をオープン。物件取得の逆転劇から上場審査の舞台裏まで、0→1経営の哲学を語る。
アドウェイズ創業者・岡村陽久氏が手がける新事業「OLD ROOKIE SAUNA HOTEL」が、千葉県木更津市にオープンした。一見すると外観はごく普通のマンションだが、一歩中に入るとそこには各部屋にサウナを完備した完全プライベート空間が広がっている。
「外装をやってしまうとコストが膨らむので、その分を中に寄せた感じです」と岡村氏は語る。築30年のマンションを丸ごと取得し、内装と設備に徹底的にこだわった結果、総予算は約8億円にのぼった。
物件取得後、見積もりが上がってきた段階で岡村氏は大きな決断を迫られた。
「元々6億円で考えていたんですが、外装も含めると8億円になると。同じ8億円を使うなら、全部中に使おうと。中6億・外2億だと中途半端になってしまうので、それなら全部中で8億円にしようと判断しました」
こだわりの一つが「チラー(水を冷やす設備)」だ。多くのサウナホテルがコスト面から導入を見送る設備だが、サウナ愛好家としては「水風呂が冷たくない」という妥協は許せなかった。
「チラーをつけるには、普通の水道管とは別に冷水を通す配管が必要で、全部屋分の配管をやり直しになる。そこにめちゃくちゃお金がかかりました。だから他のホテルはチラーをつけないんだと、後から分かりましたね」
夏場でも本気を出せば水温5度まで下げられる体制を整えているという。
岡村氏は何年も前から不動産投資サイト「楽待」を週3回ほどチェックし、サウナホテルに適した物件を探し続けてきた。そんな中、2年前に新着で上がってきたのがこの木更津の物件だった。
「もう見てすぐに不動産屋さんに連絡しました。良い物件はその日に決断しないと取れない。長く出ている物件は、誰かが見て『やっぱりやめた』物件なんです」
しかし、不動産担当者とのやり取りに違和感を覚える。「1番手ですよね」と確認すると「1番手です」と答えるものの、なぜか反応が鈍い。
「2番手な気がしたんですよ、感覚的に。1番手と言っているけど何か隠してそうだった」
知り合いの不動産関係者・山本氏に依頼し、店長を直接捕まえて確認したところ、案の定、岡村氏側は「もう1社が買えなかった時の滑り止め」だったことが判明する。即座に「1番手と聞いているから今すぐ買う」と交渉を進め、契約まで漕ぎ着けた。
物件価格自体は安かった。10年ほど相続問題で放置されていたため、22戸あったマンションのうち入居者は2部屋のみという状況だったのだ。
純資産約150億円のうちの8億円投資について、岡村氏は経営的なリスクを冷静に分析する。
「サウナ店舗の場合、1〜2億円かけてもテナントビルの中の施設なので資産性が弱い。一方ホテルは土地から丸ごと買っているので、テナントと比べて資産性が高い。お客さんがついてくれば資産価値は8億円より上に行きますし、仮にお客さんが入らなかったとしても8億円が2億円になることはない」
稼働率50%で数年での回収を見込むが、店舗事業(1店舗あたり1〜1.3億円)と比べて初期投資は大きいものの、不動産資産として売却可能な点が経営リスクを抑える要因となっている。
意外にも木更津は東京から近い。車なら新宿から40〜50分、東京駅からの高速バス「東京木更津線」を使えば停留所は目の前だ。
さらにコストコ、拡張工事中で国内最大規模となるアウトレットモール、将来的には商業施設も控え、エリア全体の集客力も高まっている。
アドウェイズを創業し上場まで導いた岡村氏が、なぜ今こうした実店舗事業に情熱を注ぐのか。
「私の場合、0→1や1→10ぐらいが好きなんです。10→100は得意じゃない。10→100だと直接やることがなくなって間接的になってしまう。0→10は自分で関わる領域が多いので、楽しいんです」
オープン前の24日間は現場に泊まり込み、清掃の効率化、夕食メニューの開発、そしてベランダに巣くう鳩との戦いに明け暮れたという。
「鳩は法律で触れないので、拍手で脅かすしかない。朝6時から1時間おきに起きて撃退して、9時頃にホテル準備が始まり、夜中1〜2時に終わってまた朝6時に起きる、を繰り返していました」
「鳩よりしつこくないと勝てない。鳩に勝てたらホテルもうまくいくんじゃないかと思っています」
話題はアドウェイズ上場時の知られざるエピソードに及ぶ。当時、岡村氏は上場の意味を十分に理解していなかったという。
「ベンチャー企業のステップアップとして、みんなが目指しているから俺も目指そうという正直そういう感じでした。監査法人の役割すら、税理士事務所と同じだと思っていた」
結果、社長面談前の予備面談で力量不足が露呈し、審査は延期に。元証券会社の人物に半年間、毎朝5時間にわたり、コーポレートガバナンスやコンプライアンスといった上場企業としての基礎知識を叩き込まれた。
「審査期間6ヶ月は、おそらく最長記録です。学校の授業のような、コーチングプログラムのような形で、強制的に整えられました」
上場プロセスを経験した岡村氏が語る、意外な発見がある。
「上場して一番喜んでくれるのは、実は社員の親なんですよ。大学まで通わせて卒業させた自慢の息子さん、娘さんがちゃんとした会社で働いていることが分かって安心する。逆に言うと、上場前は心配だったんだなと」
会社が単に売上や顧客満足を追うだけではなく、ガバナンスとして「ちゃんとする」ことの意義を、岡村氏は強調する。
「自分が交通事故でいなくなっても会社が回るようにしておく。継続性を担保するために、目指す段階では小さくても上場を目指していい」
OLD ROOKIE SAUNA HOTELは現在10室。最大15室まで拡張余地がある。1部屋単位の料金体系で、宿泊しながら最大4〜5人でサウナを楽しめる。スイスやフィンランドのように男女混合でサウナを楽しめる空間として、家族やカップルでの利用も想定する。
「このイチゴ(一号店)でやってみて、拡大できそうなモデルだったら不動産を探して2店舗目を考えます」
0→10を愛する経営者の新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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