消火器の飛び込み営業から始まり、グループ32社・売上400億円超の企業群を築き上げたチームエナジー中村誠司氏。経営者人生31年で得た「経営の本質」「人間性の鍛え方」「挑戦し続ける理由」を若手起業家に向けて語る。
チームエナジー創業者・中村誠司氏は56歳、経営者人生31年。グループでは32社を運営し、新しい会社を生み出しながら、出来上がった会社をより大きくする仕掛けを作り続けている。中村氏が描くのは「企業家が育つ森」のような世界観だ。
そのスタートは決して華々しいものではなかった。証券会社で1年半ほど営業を経験し、「なんかできるんじゃないか」という勘違いから独立。当時、学生起業や若手起業はほぼ存在せず、情報も乏しい時代だった。
最初に始めたのは消火器の訪問販売。古い消火器を交換するアルバイトレベルの飛び込み営業からのスタートだった。「こんなんでも飯食べるんだ」という実感を得て、そこから省エネの代理店業へと事業を変えていく。
> 「まず目の前の家賃を稼ぎたい、それから社員の給料を稼がなあかん。そこから僕の場合はスタートですね」
創業の地は東大阪。工場街であり、営業職の採用が難しい環境だった。「ここでやってたらあかん」と気づくまでに8年。会社になりつつあると手応えを感じたのは10年目だった。
創業当初、中村氏は鉄板10枚に売上目標と「ナスダックジャパン上場」を刻み、社内に貼り出していた。1億円は2〜3年で到達したが、5億円のところで長く壁にぶつかる。
省エネ事業からメーカー化を目指し、シーケンサープログラムや空調制御の特許取得など技術領域に深入りしたが、技術者を養成する基盤がなく迷走。最初の3〜4年はそこで時間を費やした。
転機は7〜8年目。お客にローンを組ませて機器を販売するのではなく、「電気代が下がった分をずっといただく」という金融的発想にたどり着いた。
エネルギーとテクノロジーとファイナンスを掛け合わせたとき、複数の事業の影絵が立ち上がってきた——この気づきから、日本で初めてとなる「マンション一括受電」事業に到達する。13年目で売上10億円を超え、14年目からは倍々ゲームへと突入した。
100億円規模に近づくまで、中村氏はワンマン経営を貫いた。経営会議では社長が9割以上喋り、「会議になっていない」と言われたほどだ。
組織化に舵を切ってからは「任せて失敗、任せて失敗」の繰り返し。理屈通りには進まず、イライラする日々もあった。それでも、三菱商事出身の幹部を迎え入れるなど組織の三菱流を取り入れ、ベンチャー文化との衝突を経ながら、徐々にバランスを取っていった。
関西電力からの出資を受け、会社はきっちりとした体制へ。しかし「きっちりしすぎて発想力が活かせるのか」という疑問が湧き、せっかちな性格が我慢できず、中村氏は3人の仲間を連れて新しい会社を立ち上げる。これが現事業の始まりだった——48歳、8年前のことである。
中村氏は自らを「発明家型」と分析する。発想したものを形にしてくれる社長を集める——そんな構想で立ち上げた「CEOメイク」という会社では、最初に作った発射(子会社)はほぼ全滅。これまで50社作って20社潰している。
しかし最近は、今年だけで10社ほどが立ち上がり、失敗しない確率も上がってきた。再現性は新事業を生む再現性ではなく、「最初の一歩を踏み出す再現性」だという。
打席を増やすことの重要さも強調する。社内で「ただのさや抜き」と批判していたCO2排出権売買の事業が、退職者の後を引き継いだアドバイザーの手で、今やユニコーンを狙う規模へ成長している。
> 「1年で見たら打率は低い。10年で見ようと。10年で見たら、合体させたらどうなるかとか色々策が出てくる」
中村氏は銀行から借りまくる経営者でもある。「500億貸してくれたら一気に潰れるやないか」と笑いつつ、使い道は「これから考える」と銀行と交渉していく。
常にキャッシュをギリギリで投資に突っ込み、3つの資金調達ルートを用意して窮地に備える。地熱発電事業では運転資金を10億円規模で投入し、債務超過に陥ったこともある。
社会的に困難な事業のアイデアは、ノートに100ほど書き溜めているという。「考えるのをやめるな」——これがチームエナジーの文化だ。
中村氏は学生時代、ハンドボール一筋で勉強はほぼしていない。それでも経営は能力ではなくチームでやるものだと言い切る。
> 「経営は能力がある人ができるもんじゃない。チームでやるもんだから、能力が足らんかったらフォローしてもらえばいい。人間性とかを鍛えるととてつもなく力がある」
人間性が悪い経営者で長期で成功している人は少ない。長期戦である経営において、心を素直に保ち、心を進歩させ続けることが本質だと語る。
イトーヨーカドーの会長から教わったという「4つの目」を中村氏は重視している。
- 魚の目(予感):潮の流れ、世の中・顧客の動向を読む
- 虫の目:小さく元を見て、今何が流行っているかを掴む
- 鳥の目:長官、マクロ的に全体像を見る
- 視点を変える力:新聞記者の思惑、反対側からの見方
さらに最近よく語るのが「脈をつくれ」というメッセージ。人脈は山脈のように繋がっていくもので、一人を利用しようとしただけで脈は切れる。同じく金融脈も信用の積み重ねで生まれる。「ここじゃない」と判断する力も若いうちに磨くべきだと説く。
創業当時の鉄板に刻んだ目標「ナスダック上場」は、今の中村氏の中ではこだわりではない。「自由でいろんなことができる方がいい」と非上場の道を選びつつ、子会社の上場は社長の意志を尊重して支援している。ただし上場した以上は挑戦し続ける責任があると、株主への説明責任を強調する。
直近で力を入れているのがAI領域。プログラミングの知識がなくても、ChatGPTに2時間話しかけるだけでプレゼン資料が50枚できる時代——「個人がAIを使いこなせばユニコーンが生まれる」というサム・アルトマンの言葉を引き、社外メンバーも参加できる「マホロバネットワーク」(月額1万円)を立ち上げた。社長同士が教え合うチームエナジーアカデミアと連動し、起業家コミュニティの森を育てている。
そして65歳までの目標が「戦車のコミュニティを作る」こと。世界にアタックする産業を生む人々が集まる場所だ。
中村氏が自らに言い聞かせるメッセージは「先祖代表として生きる」。家系図をひっくり返せば、自分が1番上のピラミッドになる——その自覚を持てばパワーが湧いてくるという。
業界の代表、地域の代表と勝手に名乗ればいい。横を見て普通の家に住み、普通の車に乗ろうとする「無言の圧力」に屈せず、丸くならないこと。それが若手起業家への最後のメッセージだった。
> 「叩かれるぐらい言ってください。なかなか叩かれるところまで行かないですから」
捨てる力、考え続ける力、そして人間性。0から売上400億円超の企業群を築いた男の言葉には、教科書的な経営論にはない迫力がある。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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