中央電力を創業し400億円規模に育てた中村氏が、組織づくり・自責の捉え方・借金との向き合い方・年上社員のマネジメントまでを語る。30人以下の中小企業オーナー社長に向けた、経営者としての成長戦略。
M&A CAMPでは、中央電力の創業者である中村氏に、経営者としての器の広げ方と組織づくりについて話を聞いた。30人規模の組織から400億円企業へと成長させてきた経験のなかで培われた、組織論・人間関係・借金観・自己研鑽の哲学を、若手経営者に向けて惜しみなく共有してもらった内容を再構成してお届けする。
中村氏のエネルギーの源を尋ねると、若い頃の苛立ちのエピソードが返ってきた。25〜28歳ごろ、何もかもうまくいかず悶々としていた時期に、自分の車のフロントガラスを2回割ったという。怒りのやり場が分からず、自分の車に当たってしまったのだ。
「きちっとした設計に基づいて動いていない、定点観測されていない、ありとあらゆることを今になってみたら出たとこ勝負で適当にやっていたから、うまくいかないことがいっぱい起こる。社員にどう言えばいいのか、どうやれば喜んでくれるのか、そこに自分が追いついていなかった」
うまくいかない苛立ちが、結果としてエネルギーを蓄積するきっかけになった。中央電力が軌道に乗り、組織が綺麗に回り始めたとき、今度は「数字だけ上がって面白くない」と感じ、自ら出てチームエナジーを設立しグループ展開へと舵を切ることになる。
初期の30〜50人規模の組織では、中村氏は「情の塊」で経営していたと振り返る。頑張っている社員は可愛く、自分を慕って来てくれる人を大事にする組織だった。
しかしこのスタイルは、後から優秀な人材が入ってくると「中村商店にしか見えない」と言われ、評価基準が曖昧になるという課題を生む。三菱系から来た人物に「これでは会社じゃない」と直言され、中村氏は組織運営をその人物に完全に任せる決断をする。当時は200人規模だった。
「同じ商売であれば、ある程度ワンマンでいくべき。ただ、いろんなビジネスが絡んでくると見切れなくなるので、組織で見ていかなければならない」
ビジネスの種類や経営者のタイプによって、最適な組織設計は変わる。優秀な人材を集めればワンマンでは離れていくし、若いメンバーで一丸となる組織なら情で受け止める仕組みが機能することもある。重要なのは、フェーズによって痛みを伴ってでも組織を入れ替えていく覚悟だと中村氏は語る。
経営課題に直面したとき、自分の頭だけで考えていると恐怖と悶々とした時間に支配される。中村氏が強調するのは、答えを持っている人を周りに見つけに行くことだ。
「経営課題で答えがないようなことは、まず起こらない。今の状況でこの問題解決がうまくいくのか、それを教えてくれる人を周りに見つけに行かなければならない」
中村氏自身も、創業から最初の10年ほどはほぼ自己流だったという。だが「自分のようなアホな経営者は、どんどんいろんな人に教えてもらって学ばなければならない」と気づいてから、安藤先生や警察庁元長官など、経営の枠を越えたメンターから人間の器・社会的視座について学び続けてきた。
メンターと呼べる人がいないのなら、自分から探しに行く。経営者にとって、銀行や資金調達と同等に重要なテーマである。
借金についての中村氏の哲学は、世間一般のイメージとは正反対である。
「1億の現金を掴むなら、1億の借金をしろ」
現在中村氏は500億円の借金を負っているといい、それだけの借金ができるのは納得を得られる信用力があってこそだと語る。借金を背負うことで真剣に考えざるを得なくなり、頭が動き出す。経営者は考えることが多いほど鍛えられる職業であり、東大を出てぼんやり大手にいるだけでは伸ばせない筋肉がある、というのが中村氏の見立てだ。
しかも日本は、最悪の場合でも紙一枚(自己破産)でやり直せる、商売をするうえで世界でも屈指のリスクの低い国だという。「日本で商売をしないというのは、もったいない話」と中村氏は言い切る。ただし、不動産投資のような安易な借金ではなく、事業のための借金であることが前提だ。
アイデアから収益化まで全工程を一人でやろうとすると、どうしても途中で止まる。中村氏は、自分のできない部分(アホさ加減)を理解し、その部分を補ってくれる人と組める人が勝つと説く。
「自分の力ってないんだなということを理解するやつが勝つ。その部分を補うために動く人にこそ、味方が増える」
組み方には強弱がある。相手が経験豊富なら8割の儲けを相手に持たせ、自分が力をつけてくれば交渉を変えていく。重要なのは「いかに周りを喜ばせるか」であり、これが組織論の最初の一歩でもあると中村氏は強調する。
短期的な投資の成功や派手なディールに憧れがちな若手に対しても、「ドカッといったやつは続かない」「信用脈・仲間脈を切らさず、コツコツ成長していくのがいい」とアドバイスする。
中村氏は過去に何度も騙された経験を持つ。当時、力のある人に頼んで取り戻しに行った同じ被害者たちは、その後5社ほど全て潰れたという。中村氏は「勉強賃」として諦め、二度と同じ人間に会わないよう質問の仕方や会話の仕方を磨いていった。
「騙したやつが悪いと思うか、騙される自分がアホだったと思うか。これで人生は勝負あり」
人を恨んでしまうと、自分の大事な意識と思考が相手に奪われる。いかに早く忘れるか、その忘却力こそが経営においては大事だと中村氏は語る。自責で考えれば経験値が貯まり、頭も良くなり、次の経営に活かせる。これが繰り返し効いてくる。
中村氏は20代の頃、平均年齢55歳の組織を率いていた時期がある。シルバー人材を活用する中小企業として東大阪市で表彰されたこともあるが、勢いは出にくかったという。
年上社員をマネジメントするコツは、敬語を使うこと、そして指示は二人きりのときに、できれば紙(文字)で伝えること。「これをやってほしい」と紙で書けばブレが起こらない。口頭でのやり取りはこのクラスなら分かってくれるだろう、と過信して伝わらないことが多い。
また、顧問や元大手出身者をいきなり入れて「来てくれたら何とかなる」と期待するのは典型的な失敗パターンでもある。大手で優秀だった人は、優秀な部下が周囲にいたから機能していたのであって、頼り切らずにこちらでやってもらうことを整理して依頼する必要がある。
リモートやAIの時代だからこそ、人を物理的に集める意味が増していると中村氏は語る。中央電力では、丸1日山登りをしてからその日の午後5時間ほど課題に取り組み、夜も含めれば12時間ほどメンバーで議論し続ける合宿を行ってきた。社内運動会の後の宴会では、各チームが2ヶ月ほどかけて出し物を練習し、それで社内結婚が増えるほど結束が高まったという。
リモートワークについても中村氏は懐疑的だ。「ポイントポイントのリモートはいい。でもフランクなリモートはダメ。アメリカの会社も今は出社に戻っている。結局みんなサボってしまう」
会社という言葉どおり「会う社」であり、膝を付き合わせて非言語の熱量を交わすことが、AI時代に淡々となりがちな組織に血を通わせると中村氏は語った。
中村氏は「経営はどんな人でもなれる」と本気で考えている。真面目でなければ真面目な人を雇えばいい。能力が足りなくとも、足りない部分を埋める人と組めばいい。最初の突破時は人間力よりも尖っていたほうがいいぐらいで、フェーズごとに必要な筋肉は変わる。
うまくいかなければ解散すればいい。借金を背負ってでも自分を追い込めば、頭は動き出す。騙されたら勉強賃として忘れて次に活かす。周りを喜ばせる発想で味方を増やせば、規模は自然と広がっていく。
器を広げるとは、こうした一つひとつの選択の積み重ねの先にあるものなのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです。


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