M&Aのロックアップ期間を終え、YouTubeチャンネル「春木開アリー」発の人材エージェント事業を立ち上げる西内氏。集客は順調ながら企業開拓やコンセプト設計に苦戦する中、箕輪厚介氏が新規事業を伸ばすための鉄則を指南する。
M&A後のロックアップ期間が終了し、株式を自社で保有する体制に戻ったタイミングで、新たに付随事業を立ち上げる動きが始まった。今月から本格スタートしたのが、YouTubeチャンネル「春木開アリー」に付随する人材エージェント事業である。
事業責任者を務める西内かなと氏は、新卒入社1年目。前職時代からYouTube活動を行っており、そこからの縁で入社した経緯を持つ。
「YouTubeでキャリア面談を行い、マネタイズは企業側からもらう」というモデルで、すでに集客面では手応えがある。担当者1人で回している現状でも、3月は80件の面談を達成見込みだ。一方で、企業開拓と事業コンセプト設計に課題を感じているという。
西内氏が抱える悩みは大きく2つ。1つは、面談に来てくれる求職者層がバラバラで、強みを生かしたコンセプトが定まっていないこと。エンジニア特化やSaaS特化といった切り口を持つエージェントと比べ、訴求の軸が見えづらい。
もう1つは、企業側の開拓に苦戦している点だ。「どういう人が今集まっているのか」と問われたときに、明確な属性で答えられない状態にある。集客力を起点に始まった事業ゆえに、母集団が玉石混交となっている。
これに対し箕輪氏は、「人材エージェントは単価が高く、メディアが大きくなる過程で必ず通る領域」と指摘した上で、「狙い打ち」の発想を提案する。
箕輪氏は、立ち上げ期は広くやりつつも、どこかで特化させる必要があると語る。
「優秀層のエンジニアはここにいる、という形で打ち出した方が、それを求める企業も求職者も集まりやすい。集められない人を嘆いても仕方ないので、集められそうな人の中でなにかしらの『気象人材に特化している』と言ったほうがいい」
企業側から見れば「能力が高い」という主観的なアピールよりも、学歴・志望業界・希望職種といった客観的な属性で切り分けたほうが判断しやすい。営業特化、企画特化、エンジニア特化とチャンネル単位で分けて、窓口ごとにマッチングさせる構成が機能しやすいという。
当初は中途領域での参入を検討していたが、「春木開アリー」の認知度を踏まえ、新卒領域からの立ち上げが選択された。集客が圧倒的にしやすく、立ち上がりが早いという判断だ。
切り口の例として、箕輪氏は「外資就活ドットコム」「ワンキャリア」のような業界特化型、あるいは「外資に行きたい人」「コンサル志望」といったキャリア志向別のセグメントを挙げる。
企業をマッチングに巻き込む仕掛けとして、箕輪氏は「人材版・令和の虎」モデルを提示した。
「採用したい企業の人事に番組ごとスポンサーになってもらい、虎側として毎回出演してもらう。そこで『うちはこんな営業マンにとって完璧な会社です』とプレゼンしてマッチングさせる」
すでにSNSマーケティング業界などでは、番組買い切り型の出演スポンサーモデルが回っているという。コンサル版・営業版・金融版といった業種別フォーマットでチャンネルを派生させていくことも可能だ。
話題は急成長中のキャリアコーチング市場にも及んだ。年間80万円規模のサービスも珍しくない領域だが、箕輪氏はその本質を「意識を高くするビジネス」と表現する。
「ビジョンに書いてあるような当たり前のことを、ちゃんと寄り添って見てあげる存在。極めて全うなことをやっているから効果はある。Z世代が上昇志向を持っていないというのはメディアが作ったイメージで、実際にはパワハラがなくなって厳しい指導者が消えた分、自費でコーチを雇うようになった」
ただし、マネタイズが受講者本人からの課金で完結すると、出口が「コーチングの先生」になってしまい、本来の就職・転職という成果につながらない自己満足のループに陥るリスクがある。意識を高めることと就職先が決まることは別物だ、というのが箕輪氏の見立てだ。
この点で、企業側からマネタイズして実際にマッチングさせるモデルは「全うであり、堅実に伸ばすやり方」だと評価された。
もう1つ、箕輪氏は別の伸びている事例として「ウェビナー型」モデルを紹介する。
表向きは「AI時代のコンサルの生き方」のような汎用テーマで、TwitterやFacebookのターゲティング広告(年収・年代指定)でセミナーに集客。受講後に全員へ電話でアフターフォローを行い、次のフェーズへクロージング。面接・成約まで持っていけば成果報酬で数百万円が入る、というスキームだ。
「セミナーを受けた人に全員電話する会社はほとんどない。そこが差別化ポイントで、テレアポをやり切る営業チームが作れるかどうかが勝負になる」
YouTube × 人材という掛け合わせには大きな可能性がある一方、最後の数百メートルは泥臭い営業力で埋めるしかない。
西内氏は議論を踏まえ、この事業の成否を分ける要素を次のように整理した。
「集客およびブランディング力と、組織としての営業力・やり切り文化を醸成できるかどうか。今までYouTubeメディアで使ってきた筋肉とは、まったく違うものが要る」
箕輪氏も同意する。
「YouTubeで集客できれば高単価商材が勝手に売れる、という発想だと難しい。ゼロから地道な面接を繰り返すような、マンパワー前提のオペレーションが要る」
最後に、組織づくりを担える人材の見極め方が話題に上った。箕輪氏が挙げた条件は2つだ。
1つは人間性。「自分が結果を残せればいい」というタイプは個人成績は出せても組織は作れない。
もう1つはルール、つまり組織運営の方法論をインストールしているかどうかだ。
「才能でやっている人は20人くらいが限界。30人を超えたら、チームの作り方を言語化して知っている必要がある。元リクルートの麻野さんのチーム論や、何かしらのメソッドをちゃんと取り込んでいる人。バタ臭いセンスでやるものではなく、骨組みを持っている人がいい」
集客の起点はメディアの力でも、事業を立ち上げて伸ばし切るのは組織と営業のオペレーションだ。新規事業の鉄則として、メディア企業が人材領域に染み出すうえで踏むべき道筋が浮かび上がる議論となった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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