DMM.com会長・亀山敬司氏が公開収録で語った経営論。長期ビジョンよりも数年単位の積み重ね、プライドより実行、忖度と妥協を飲み込んでこそ会社は続く。事業判断の基準や偶発性の活かし方まで、44年の経営者人生から導き出した商売の本質を語る。
DMM.com会長・亀山敬司氏が公開収録イベントに登壇。中長期のビジョンと目先のビジネスをどう両立させるかという問いに対し、亀山氏は意外な答えを返した。
「経営者って話で言えば、経営者っていうのはやっぱり長くても10年ぐらいの単位の中で物事を考えるかな」
30年後、40年後の未来を語るのは学者の仕事であり、経営者にそこまで投資できる体力を持つ者はほとんどいない、と亀山氏は言い切る。重要なのは数年で回収できるビジネスモデルを作り続けること。それが結果として、次のフェーズの資金や新しいことができる土台を生む。
「俺も仕事やってきて40年以上経つけども、結局はその時その時を乗り換えてきただけ。40年先に俺がAIとかITとか言ってるとは思いもよらないからね」
亀山氏は、未来を語るスピーカーと実行者の違いを明確にする。ホリエモンのような語り手は忖度なく未来を語れて勉強になる。一方、実行者は違う。
「実行者っていうのは忖度もする。誰か敵に回すようなことを言わないように心がける。実際問題、こういうことやりたいなと思ったら、あちこち喧嘩売ってる場合じゃない。みんなと仲良くやんなくといけない」
目先の打算も含めて考え、いろんなものを飲み込み、忖度しまくって妥協しまくってやっていく。それが実行するということだと亀山氏は語る。
「論客として生きるか、実行者として生きるか」
会場からは「ビジョンと儲けの割合をどう考えるか」という質問も飛んだ。亀山氏の答えはシンプルだ。
「継続しようと思うと利益がないと続かないのは現実なのよ。ちゃんとビジネスとして成立させないと何もできない」
そのためなら、ビジョンも看板も変えていい。動画コンテンツで日本一を目指していたのが、食えなくなればAIシステム会社に転換しても構わない——亀山氏はそう言い切る。
「会社ってのは続けていくことによって、そこに多くの人間が雇用で関わったりいろんな人間が関わってく中で、俺が経営者として引き受けたものを続けたい。そのためなら別に業種とかはどうでもいい」
プライドについても同様だ。誰かに非難されたら「すいません、僕悪かったです」と謝った方が早く済む。揉めて得することはほとんどない。守りたいものが家族なのか社員なのか、その時々で見つめ直し、頭を下げるべき時には下げる。それが実行者の覚悟だという。
新規事業を立ち上げる際に何を見るか、という質問に対しては、亀山氏は3つの視点を挙げた。
- 予算:財布との相談。元手の範囲内でやれるか
- 法律:捕まると面倒なので、コンプライアンス上の問題がないか
- チーム:誰にやらせるか、その人間がやり切れるか
特に近年は、現場の判断を尊重するように心がけているという。
「自分としては許容範囲内なら、逆に言うと『じゃあそれでいいよ』っていう風に心がけようとしてる。多少違うと思ってもそこで現場のやつを修正しすぎると、結局彼ら自身がコミットしきれない」
5年後、10年後には自分の判断より現場の判断のほうが正しくなる。亀山氏は自身の能力低下を冷静に見据え、出しゃばりすぎないように自分自身をチェックしているという。
亀山氏のこれまでの事業展開を振り返ると、計画やロジックよりも偶発性が際立つ。FX事業はバーベキューでたまたま会った専門家との会話から、太陽光事業はテレビ番組の特集から始まった。
「偶発的な部分のせっかくのチャンスを逃してる人は結構いる」
同じ状況に置かれても、多くの人は聞き流してしまう。亀山氏は誰にでもフラットに接することで、結果として良い出会いを取りこぼさないようにしてきたという。
「誰にでも優しくしといたら何かといいことがあるよ、って分かりやすく言えば」
DMMがVC的な出資をほとんどしない理由についても亀山氏は明確に答えた。
「VC的なものって単なる金の繋がりしかない。経営にも参加するわけじゃない。5%、10%入れたからって口も出せない。それは経営って分野じゃない」
キャピタルゲインを目的としていない以上、出資はDMMの本業ではない。亀山氏が惹かれるのは、経営的な関わりや人との関係性の面白さだ。会社は個性があったほうがいい。マーケティングなりマネジメントなり、仕事のプロが育つ会社こそが個性として生き残る——それが亀山氏の信念だ。
話題は「自分が何をやりたいか」という根源的な問いにも及んだ。亀山氏自身、今でも揺れ動いているという。
「ずっと一生、多分死ぬまで迷いながら行く。逆に迷いながら生きてるから進化してる」
自分が何を求めているかを理解するのが一番難しい。だからこそ日頃から自分自身に問い合わせる癖をつけておくと、いざという時の決断が早くなる。
発信するか、黙って我が道を行くか。亀山氏は50歳まで発信せず、雑誌の取材も断り、社長すらいないことにしていたという。
「そもそも誰かに何か伝えるぐらいなら、自分で勝手に信じた道やればいい、っていうのがそもそもだったんだよね」
SNSやフォロワー数といった評価経済そのものが、ここ10年20年で生まれた「気の迷いかまやかしかもしれない」と亀山氏は言う。
AIの時代、経営者にも個人にも自立と進化が求められる。プライドより継続、ビジョンより実行、計画より偶然——亀山氏の言葉には、44年間商売を続けてきた人間ならではの覚悟と現実感覚が宿っていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
