DMM亀山会長が、週末起業を始める45歳の経営者に向けて、40代からの起業の戦い方を伝授。フリーランスから組織化への壁、ビジネスモデル設計、コーチング事業の課題まで、リアルな経営論が展開される。
本記事は、まもなく45歳を迎える相談者がDMM.com会長・亀山敬司氏に「40代からの起業をどう戦うべきか」を相談した対談の記録である。相談者は本業のヘッドハンティング業務(10年従事)を続けながら、コーチング事業での週末起業を準備中。中学2年生の娘を持ち、生活への責任を抱えながらも、「やらなかったら死ぬ間際に後悔する」という思いから一歩を踏み出そうとしている。
相談者のバックグラウンドは独特だ。高校までは野球一筋、その後アメリカンフットボールに転向して日本代表を経験。30代前半で引退した後はベンチャーで仕事に全振りし、ヘッドハンターとしてCXOクラスの人材紹介を10年続けてきた。並行して、毎週末に豊洲公園で開催する早朝トレーニングコミュニティ「DPT(ダディパークトレーニング)」を主宰し、年間6,000人規模に育てている。
相談者が始めようとしているのは、ビジネスパーソン向けのコーチング事業。ライザップの法人版のようなイメージで、「自己規律」をスコア化して提供するサービスだ。
亀山氏の評価は明快だった。
「フリーランスはできると思うかな」
コミュニティを率いる人望と信頼があり、教える力もある。実力ベースで稼ぐことは十分可能だ。しかし、そこからスケールさせる──組織化する段階では、まったく別のスキルが必要になると指摘する。
亀山氏自身、創業当初はプレイヤーではなく経営者として始めたという。「自分だけがコーチでやった場合は、その人に教われたいって話になる。キャラありきでしょう」。属人的なサービスを人に渡すと、品質が落ち、出店ごとに前の店が潰れていく構造になりかねない。だからこそ、「アルバイトが代わっても回せる仕組み」を最初から設計してきた。
亀山氏が提示したロードマップはシンプルだ。
1. まず自分でやってみて、フリーランスとして本業の収入をカバーできるかを検証する
2. 顧客が自分のキャパを超えてきたタイミングで、人に振り出す(最初は雇用ではなくアルバイトや業務委託で十分)
3. 自分は集客とリーダーシップに特化し、実務は他者に任せる
4. 売上の取り分(例:顧客から受け取った料金の一部)でビジネスモデルを成立させる
「結構ノーリスクで実験はしやすいんじゃない?」と亀山氏。本業を辞めずに土日だけで5人を回せるかを試し、6人目・7人目で人に振る。これを繰り返せば、生活基盤を守りながら経営者としての筋力を鍛えられる。
逆に避けるべきは「ファッション起業」だ。
「やること決まってもないのに何辞めてんだよ。『金融だけします』って熱くなってるけど、何するのって聞いたら『まだ決まってない』って」
ビジネスモデルが固まる前に会社を辞めるのは、最も避けるべきパターンとして語られた。
亀山氏は40代の元銀行員の事例を紹介した。融資の仕事が嫌で「実業がやりたい」とカラオケ店を開業したが、アルバイトはサボる、店は開かない、で大変な状況に陥った。
「金融マンとしては優秀だったと思うんだけど、現場の仕事でヤンキーたちを使いこなせるかという、そのスキルがない」
事業計画書通りに人は動かない。自分が年収1,000万円もらっていたとしても、時給で働くアルバイトに同じ熱量を求めるのは無理がある。経営者には、上から見下ろす視点ではなく、現場のあらゆる事象を理解する力が必要だ。
「自己認知間違いますよね、僕もよくあります」と相談者が応じると、亀山氏も頷いた。能力の発揮場所を見極めることが、40代起業では特に重要になる。
相談者のコーチング事業について、亀山氏が次に踏み込んだのは「ビジネスモデルの独自性」の問題だ。
「オリジナルだと、それはとてもいいものに見えるかもしれないけど、世間が価値あると認識する実績のある先行者がいないなら、空振りで終わる可能性も結構高い」
対象が「モチベーション」のような曖昧な成果指標の場合、価値の見える化が難しい。ライザップは「何キロ痩せる」と明確だから50万円払う価値が伝わる。同じ価格帯でも、自己啓発系で同等の説得力を持たせるのは至難だ。
そのうえで亀山氏は、自身の父の逸話を紹介した。地元で有名なうどん店に金を払って3日間修行させてもらい、レシピを買って店を出したという。
「『修行する』なんて発想がないのよ。商品なんだから、買ってくる」
ゼロから創るのではなく、既に成功しているモデルを正確に取り入れ、そこに自社の運営力で勝負する。リンクアンドモチベーションや識学のような既存サービスがあるなら、まずその仕組みを徹底的に研究することが、経営者としての発想だと示唆した。
対談の終盤、亀山氏は40代起業について明確な持論を述べた。
「俺は9割型、失敗すると思っても、それでもやった方がいいっていうのが意見ではある」
なぜか。一度経営者の立場に立つと、世界の見え方が根本から変わるからだ。給与をもらう側からは見えなかった景色が見える。仮に元のキャリアに戻ったとしても、その経験は別物の視座を与えてくれる。
「政治家を避難してる人がいるけど、自分が一回政治家をやってみると、見方が違って『大変なところもあるよね』って分かる。それと同じ」
相談者は最後にこう振り返った。
「サラリーマン目線でいろいろ考えていたなと気づきました。経営者目線で見直すと、やれることがいっぱいある」
来週から事業のトライアルをスタートする予定だという。9割の失敗を覚悟したうえで、それでも踏み出す。40代からの起業とは、そういう挑戦なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
