クラウドワークス元副社長・成田修造氏が、創業期のスタートアップが越えるべき「3人・10人・30人の壁」と、組織を一段引き上げる採用の本質を語る。M&A CAMP編集長との対談から、ゼロからの組織作りに必要な視点を整理した。
M&A CAMPの対談シリーズに、クラウドワークス元副社長で連続起業家の成田修造氏が再登場。今回のテーマは「ゼロからの組織の作り方」。ホストを務めるM&A CAMP編集長は、社員10人弱・売上2億円規模でYouTube領域特化メディア事業を運営する経営者でもあり、自社のリアルな悩みをぶつける形で対談が進んだ。
成田氏はまず、組織が変質する節目として「3人・10人・30人」の3つを挙げる。
3人の段階では、メンバー全員が「とりあえず自分にできることを全部やる」状態。10人前後になるとファンクション(職能)ごとにゆるやかな役割分担が生まれ、複数人での開発や営業が始まる。それでも社長が一人ひとりを直接見ることは可能だ。
しかし、30人を超えると一人の社長が全員を細かく見ることは現実的に難しくなる。
「よく言われるのは、1人のマネージャーが見られる人数は8人未満。実質6人くらいのチームに5人ぐらいまで。その階層構造が初めて必要になるのが30人ぐらいなんです」(成田氏)
逆に言えば、30人までは社長が気合いで見切ることができる。ただし30人到達時に慌てて組織化するのではなく、10人の段階から少しずつマネジメントの仕組みを織り込んでいく必要があるという。
編集長は、自社の社員平均年齢が24〜25歳でマネジメント経験者がほとんどいないこと、自身も学生起業で他社経験がないことを率直に明かす。
これに対し成田氏は、自身もクラウドワークス時代、創業当時は人マネジメント経験が豊富ではなかったと振り返る。社長である自分が最年少で、15歳上、5歳上、5歳下というメンバー構成。100人規模の組織を運営した経験者は社内にいなかった。
そこで実践したのが、次の3つの学び方だ。
第一に、顧問的な立場の外部人材を活用すること。リクルートなど「マネジメントが強い」と言われる会社の出身者に定期的に社内に入ってもらい、メールやコミュニケーションを実際に見てもらった上でフィードバックをもらう。経営会議にも参加してもらい、生のヒントを吸収していった。
第二に、書籍を使った社内輪読会。成田氏が挙げたのは、Googleの組織マネジメントを記した『How Google Works』と『ワーク・ルールズ!』の2冊。「目から鱗で、いろいろなことが見えてくる」という。
第三に、これらを通じて「自社にとって良い組織状態とは何か」を言語化していく作業。成田氏のチームでは、特に30人から100人へのフェーズでこの言語化に注力したという。
対談の核心となったのが、採用についての成田氏のメッセージだ。
「今になって思うのは、誰を採用するかでほぼ決まる、ということ」
採用には2つの観点がある。1つは「やってほしい業務スキルを持っているか」、もう1つは「社風に合っているか」。問題は、後者の「社風」を経営者自身が明確に言語化できているケースが意外に少ないことだという。
それが曖昧なままだと、良さそうな経歴やスキルを持った人がすべて魅力的に見えてしまい、採用してもうまくいかない事態が起きる。逆に、経験豊富な人材の採用に経営者が及び腰になるのも、「入ってきた瞬間に組織の空気感が壊れるのではないか」というリスクが言語化されていないからだ。
社風や文化を言語化したうえで、それに合致する経験者を採用できれば、組織は一段レベルアップする。成田氏は「そこを見極めるのが経営者の大事な能力」と強調する。
編集長は、創業初期の10〜20人の採用がカルチャーを規定するのではないかという仮説を投げる。これに対し成田氏は、組織は「脱皮」しなければならない局面が必ず来ると指摘する。
例えば、YouTubeというプラットフォームに依存していた事業が、自前のアプリやプラットフォームを作る方向に舵を切るとする。それまでは「面白い動画編集を作るチーム」で良かったが、突如として「ソフトウェアプロダクトを作るチーム」が必要になる。
そうなれば、その分野の専門家を採用しなければならない。たとえカルチャーフィットが完全ではなくても、貴重な能力を持つ人材を思い切って採用し、その専門性を組織に吸収させる選択が必要になる。フェーズが変われば、その人が別の会社に移った方が互いに幸せ、ということもあり得る。
一方で、能力ではまだ未知数でも「この人は絶対に組織にとって必要だ」と直感する人もいる。そうした人材には長く働いてもらうための設計が要る。
「変わらないものと変わりうるものを見極めて、その時々で必要な人材を入れていく。それが組織設計です」(成田氏)
対談終盤、話題はメンバーの当事者意識に移った。社員に「この組織で頑張りたい」と思わせるためには、経済インセンティブだけでは足りないのではないか――成田氏は最近そう感じているという。
「家族が風邪を引いたら助けるでしょう。あの感覚にどれだけ近いか、というのが結構大事かもしれない」
お互いがいて楽しい、一緒にそこで戦っていること自体に価値がある、と思えるかどうか。それを醸成するには、メンバー一人ひとりが本質的にやりたいこと、本質的な考え方を、経営者がどれだけ深く理解しているかにかかっている。
組織づくりの難しさは、事業と違って「1日で良くなるものではない」ところにある。慢性的に蝕まれることもあれば、長い時間をかけて少しずつ良くなっていくこともある。完璧な組織は存在しないが、総合点が高い会社は人が辞めにくく、良い人が入ってきやすい。
それゆえ会社を成長させることは本当に難しい、と成田氏は何度も繰り返す。だが、だからこそ経営は飽きない仕事でもある。
「年を取るにつれてうまくなる。スポーツより長期でやれるのはいいですよね。80歳の経営者だっている。人とずっと向き合い続けて、複雑で難しい。だからこそ楽しい職業だと思います」
10人弱の組織を率いる編集長は、30人・50人・100人と事業成長に合わせてスケールできる組織を目指したいと締めくくった。成田氏自身も、自社経営を中心としつつ他社の経営を見ることで自社にフィードバックを得る形で、次の挑戦に向かう構えだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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