長尺ブーストの終焉、AI生成動画の量産時代、そして「有名と稼ぐは反比例」という逆説。DMM亀山会長とスーツ氏が、YouTubeビジネスの最前線とこれからのマネタイズ戦略を本音で語り合った。
スーツ氏は冒頭、自身のYouTube収益が今年2月頃から大きく変化したことを率直に明かした。
「去年ぐらいまではYouTubeは正直、3時間とか4時間の長い動画を出すと、テレビでYouTubeを見ている層にずっとおすすめで流れ続けて、勝手に広告が再生されていた。それで再生数を稼いでいたので、今年の2月ぐらいから収益が半分ぐらいに減ったんですよね」
ヒカル氏に代表される長尺動画の「ブーストタイム」が終焉を迎え、実態に即した数字へと回帰した、というのがスーツ氏の見立てだ。代わりに台頭したのが、結婚・離婚・喧嘩といった話題性でインプレッションを稼ぐ手法。クリエイターたちはYouTubeのアルゴリズムに「踊らされている」と語る。
もっとも、収録の中でスーツ氏は「ヒカルさんは最近また4時間の動画を出し始めたとコメントが来た」と前提が崩れていることも自ら告白。YouTubeというゲームの変化スピードの速さを物語っている。
DMM創業者の亀山敬司会長は、YouTuberとして表舞台に立つ立場ではない。だからこそ、一段引いた視点でアドバイスを送る。
「お金儲けにしがみついていない。AかBだったらAにしておこうかな、というのをやっていったら結構儲かるようになりました」
スーツ氏はこれを「究極形態」と表現する。500万再生の動画1本を時間をかけて作るより、10万再生の動画に高単価広告を載せて量産した方が、結果的に儲かるという発想だ。実際、この収録日もスーツ氏は「7本撮り」でコストを抑え、小さくとも利益が残る構造を志向している。
一方で、自身については「再生数に囚われて金のことを忘れていた」「YouTuberとしての成功という尺度が頭に入ってしまっていた」と振り返る。
話題はAIによる動画生成へと移る。スーツ氏は驚くべき告白をする。
「僕らが開発した僕のAIの人格を使って、それを普通に混ぜて、そういうシーンをYouTubeで出しているんですよ。でもみんな分からないし、自分の分身は存在しています」
旅行動画などで既にAI版「スーツ」が登場しているという。亀山会長はこの流れをこう読む。
「人間が何時間もかけて撮っているものを、AIならバーっと生成して投入できる。各自再生回数が少なくても、数が違う。コンテンツのオリジナル自体の市場がだんだん狭くなる可能性がある」
ハリウッドのスタジオ撮影と生成AIを組み合わせた映画制作のどちらが面白いか、もはや微妙だと語る。YouTubeショートに至っては「明らかにAIが作っている生成動画」がかなりの割合を占め、それでも面白く見られてしまう現実がある。
ただし、生身の人間性が完全に不要になるわけではない、というのがスーツ氏の感覚だ。
「亀山さんも、ある意味その亀山さんというAIみたいなもので、今までいろんなことを当てまくってきたAIだから、その言っていることを信じてやってみよう、という感覚もあります」
リアルな実績の蓄積こそがブランドになる。同じアドバイスでもAIから言われたら従うかは分からない──これは「誰が言ったか」の重みが、AI量産時代にむしろ増すことを示唆している。
亀山会長はさらに踏み込む。
「もともとテレビで活躍したタレントがYouTubeに移った。今度はそういう人ではない、エンジニア的な家で1人ガチャガチャやっているクリエイティブの時代が来るかもしれない。YouTubeがオールドメディアと言われる側になるかもしれない」
VTuberもAI化が進む現状を踏まえれば、人間のYouTuberが「オールドメディア」と呼ばれる日も遠くない。
議論はビジネスの本質論にも及ぶ。スーツ氏は「YouTubeの世界だけは福利が働かない」と疑問を投げかけた。
亀山会長の答えは明快だった。
「YouTuberは基本、芸能人と一緒で人気商売。福利は働きにくい。ビジネスは既得権益も享受しやすくなるが、スポーツ選手や芸能人は常に走り続けないといけない」
DMMが毎年130%ペースで伸び続けたような複利的成長は、人気商売には起こりにくい。一方で「常に魅力的な人が生まれやすい」「一発逆転ができる」のもこの世界の特徴だという。
金儲けが目的なら、街金の方が遥かに儲かる──亀山会長は冗談まじりに本質を突く。「YouTuberとして頑張るのでなければ、金儲けなら別の仕事をやる可能性もあるじゃない」。
具体的なマネタイズ案として、亀山会長はサロン構想を提案する。
「月1,000円から1万円ぐらいで、若手経営者コミュニティのような形にした方がいい。一般ユーザー1万人より、若手起業家1,000人の方がビジネス価値がある。そこに乗ったホテルが売れる、というデータとしての価値もある」
スーツ氏は「3万円や5万円を考えていた」と返したが、亀山会長は適正価格と機能設計の両面で具体的な道筋を示した。豪華客船のファーストクラスで乗客名簿が配られ、数日間の航海中にビジネスの話が交わされていた──そんな歴史的事例を引きながら、スーツ氏も納得を見せた。
対談の結論は、ある種の身も蓋もないものになった。
「YouTubeで稼いでいるのでは、そんなに金はもらえないんじゃないか。その裏側で手堅くやるか、もしくは割り切って何を求めたいかを自分に問う」
スーツ氏は最後にこう付け加えた。
「何かを求めると、その求めたものが失われたら自我が崩壊する。だから求めない方が効率的なんじゃないか、という考え方も今出ました」
華やかさと収益性のトレードオフ、有名であることのリスク、そしてAIによってクリエイティブの市場が再定義されつつある現実。2026年のYouTubeビジネスを生き抜くヒントは、「YouTubeの外側」にこそあるのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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