サイバーエージェントのグループ会社・キャム代表の菅田春海氏に、リクルートから引き継いだ新R25の現在地、グループ内M&Aの実情、そしてメディアビジネスの新たな成長戦略を聞いた。
サイバーエージェントのグループ会社である株式会社キャム。占いを中心としたライフスタイルメディアやアーティスト向けメディア、そしてビジネス情報メディア「新R25」などを運営する同社の代表・菅田春海氏に話を聞いた。菅田氏は社会人3年目の2016年に子会社社長に就任し、以来8年にわたって複数回のグループ内統合を経験してきた人物だ。
聞き手はサイバーエージェントでのインターン時代に菅田氏がメンターを務めていた縁で、その後も新R25の業務委託としてメディア作りの基礎を学んだという。今回のテーマは、新R25を運営していたサイバーナウと、キャムとの「グループ内M&A」だ。
サイバーエージェントは「有望な領域が見つかったら一気に複数仕掛け、どこかでまとめて総合力で戦う」というスタイルを採る。そのため、グループ内での統合・再編は珍しくない。菅田氏自身、これまでに3〜4回もの統合を経験しており、自らを「引き継ぎ社長」と称するほどだ。
新R25の歴史を振り返ると、まずリクルートが運営する紙媒体としてスタートした。2017年にサイバーエージェントグループに移り、Webメディアとして再構築。当時、菅田氏が代表を務めていたYouTuber専門の広告代理店「CYANGRA(旧ヤンラボ)」と、新R25を担っていたチームが統合し、サイバーナウという会社になった。
その後、サイバーナウはキャムへとグループインし、現在はキャムの中で新R25事業を運営する体制となっている。
菅田氏は「正直、立ち上がらないと思っていた」と振り返る。当時、Webメディアとして成功した事例はほとんどなかったからだ。しかし結果としては想像以上の成果を上げ、ビジネス領域での認知獲得とスモールIPO規模までの事業成長を達成した。
成功の要因について菅田氏はこう語る。「2社の組織がうまくはまった。渡辺編集長のコンテンツを作るセンス、そしてビジネスサイドで支える自分やチーフデザイナーといった人材の組み合わせが機能した」。戦略は「戦略渡辺正木」――編集長・渡辺氏のセンスを信じ、苦手な領域を周囲が補完するという考え方だった。
新R25は現在、Webメディアからプロダクト型へと舵を切る第3フェーズに入っている。インタビュー収録の前週にはSaaS構想を発表したばかりだという。
背景にあるのはサイバーエージェントグループとして求められる事業規模の問題だ。「サイバーエージェントグループでしっかり価値を出すなら4桁億円規模が必要。まずは3桁を目指せるモデルへのシフトが必要だった」と菅田氏は語る。
ここで菅田氏が引用するのが、師匠である元サイバーエージェント専務・小池氏の教えだ。「ブランドやトラフィックがあれば派生サービスがうまくいくなんてあり得ない。ゼロベースモデルで考えなさい」――この言葉を経営の指針として受けてきたという。
楽天という巨大経済圏を持つ企業ですら、ECではAmazonに流れる利用者がいる。共通IDやブランド資産があるからといって、新サービスが自動的にうまくいくわけではない。「プロダクトとしての便益価値を磨かなければ、派生戦略は絶対にうまくいかない」と菅田氏は言い切る。
それでもキャムには強みがある。菅田氏は「技術者・組織・資金」の3つを挙げる。
キャムのCTOはサイバーエージェント全体の主席エンジニアでもあり、強固な技術組織を持つ。さらに占いビジネスなどによる安定的なキャッシュエンジンがある。SaaS事業のように採用・資金・組織を同時に整える必要があるビジネスでは、この基盤が決定的に重要になる。
グループ内M&Aの背景もここに通じる。新R25側には次の成長モデルとして技術組織が必要だった。一方キャム側はパートナー企業と協業するのは得意でも、自社オリジナルブランドの立ち上げに課題を抱えていた。両者のニーズが合致した結果としての統合だったというわけだ。
菅田氏は周囲から「独立しないのか」と頻繁に問われるという。それでもグループ内に留まる理由として、いくつかの考えを示した。
ひとつは個人としての資産形成への関心の薄さ。「身の回りのお金は十分。それよりも多くの人に使われるサービスや、人材のキャリアを作っていくことに関心がある。それならサイバーエージェントグループのほうがやりやすい」。
もうひとつは「21世紀を代表する会社を作る」というサイバーエージェントのビジョンへの共感だ。「最終的な傑作は会社そのもの、というカルチャーが原点にある。それが面白いと思えるかどうか」。
さらに菅田氏は、社会人になることをポジティブに捉える文化を広げることが日本社会への貢献になるとも語る。「自分でゼロから1万人の会社を作るより、すでに10万人規模に届きうるサイバーエージェントの中で、仕事に前向きな人を増やすほうがインパクトが大きい」。
メディアビジネスは決して儲かりやすい領域ではない。それでも続ける理由を、菅田氏は藤田社長の言葉を借りて表現する。「メディア、芸能界、政治家のトップはなかなか辞めない。何かを動かせてしまう魔力があるからだ」。
菅田氏自身、ジェネラルにキャリアを歩んできた中で、最終的にメディア・コンテンツ領域への愛着を再認識したという。「自分たちで発信していく活動、メディアに出てもらうことで価値貢献する活動が好きだと、30代半ばで改めて思った」。
ただし、産業としてのWebメディアは独占的なビジネスモデルを持ちにくい。「このまま行けば、産業としてのメディアはなくなる可能性もある」。だからこそ、メディアやパブリッシャーの新しいビジネスモデル作りに挑戦したい。SaaS構想もその文脈にある。
最後に、社内起業や出世を目指す若手へのアドバイスを聞いた。菅田氏の答えはシンプルだ。
「会社の中でやるなら、会社が目指す方向に自然に自分がフィットできる環境にいることが一番。自分の頑張ることと会社の頑張ることが一致していれば、お互い楽だし好循環が生まれる。そこがズレていると、どれだけスキルを磨いてもどこかで疲れてしまう」。
たまたまフィットしているなら、その環境を活かす。なければ自分で作るか、自分をその環境にはめにいく――それが幸せに働くための近道だと菅田氏は語った。
サイバーエージェントの「総合力で勝つ」スタイルの中で、複数回の統合を経験しながら経営を続けてきた菅田氏。新R25の次のフェーズと、メディア産業の未来をどう作っていくのか、これからの動きが注目される。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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