隙間バイトサービス「タイミー」を運営する株式会社タイミー社長・小川嶺氏が語る、初めての起業で気をつけるべきこと、急成長を支える組織論、そして「日本を代表する経営者になる」と決めた瞬間とは。27歳経営者のリアルな経営哲学に迫る。
株式会社タイミーの社長・小川嶺氏は1997年生まれの27歳。20歳のときにアパレル系の会社を立ち上げたが、メンバー6人・約1年で資金調達のタイミングで撤退する経験を持つ。
なぜ1社目はうまくいかなかったのか。小川氏は「自分がそのマーケットに本当に情熱を注げるかどうか」が決定的に重要だと振り返る。
「アパレルのサービスをやっていたとき、自分は楽に着られて気が向いたときにかわいい服が着られればいい、というぐらいの気持ちでした。でもアパレル業界では、パリコレの話題が当たり前に出てくる。それを『勉強しなくちゃ』と感じてしまうのか、自然に情報を浴びている状態になれるのか。そこに大きな差があるんです」
お金のためだけにやっている起業は続かない——これが1社目から得た最大の教訓だという。
1社目の失敗後、小川氏は資金がなく派遣のアルバイトで生活していた。電話で案件が降ってきたり、メールでやり取りしたりというアナログな仕組みに違和感を持ち、「アプリ1つですぐ働けて、すぐお金がもらえるサービスが自分にも欲しい」と感じたことがタイミー創業のきっかけとなった。
現在、タイミーはユーザー数700万人、導入企業約10万社、社員数約1,000人規模にまで成長。拠点も全国14拠点に広がっている。
「最初から7〜8年続けるとは思っていませんでした。でもクライアントから『タイミーのおかげで休憩が取れた、ありがとう』といった声をいただくうちに、これは自分が人生をかけられるテーマだと気づいていったんです」
初期に大事なのは「何がなんでも成功させる」という覚悟だと小川氏は語る。
「綺麗なことばかり考えていたら絶対に成功しません。どんなに失敗してもダサくてもいいから、経営者自らがチャレンジすること。これが初期では本当に大事です」
資金調達も同様で、ロジックは前提としつつ、たまたま予算が余っているVCに出会えるかどうかは、自分が動き続けたからこそ掴めるチャンスだという。実際、小川氏は今でも年に1回はタイミーで自ら現場のアルバイトを行い、創業期は20人規模になるまで自らもキャンセル時の代打稼働をこなしていたという徹底した現場主義者だ。
組織が大きくなるにつれ、小川氏は3年ほど前から本格的な権限委譲を進めてきた。
「自分がずっと見ていないと不安、というのは正直ありました。でもそんなことを言っていられないほど成長していたので、早く失敗して慣れていくほうがいいと判断しました」
権限委譲の前提として重視するのが「タイミーらしさ」の伝承だ。新しく権限を渡すメンバーには、まず一緒に意思決定を重ね、「自分はこういう考え方で決めている」と常に伝える。これによって個人のバックグラウンドではなく、タイミーらしい判断軸が引き継がれていく。
また、毎月約230人入社する新メンバー全員と必ず話す場を設けており、月間の特徴的な取り組み一覧(約100項目)にも全て目を通している。「600〜700人ぐらいまでは名前と活躍内容が分かります」と語る。
タイミーらしさの核にあるのが「ワーカーファースト・クライアントファースト」という思想だ。小川氏は松下幸之助氏の「お客様大臣の心持て」という言葉を引き、こう語る。
「『若さんのためにやっています』ではなく、『田中さんのためにやっています』と固有名詞レベルまで想像できるかどうか。そこまで落とし込まないと、結局は推測のサービスになってしまう」
採用方針は「素直でナイスな人」。サイバーエージェント藤田晋氏から教わった考え方で、部活で朝練を頑張ってきたような素直さと向上心を持つ人材を重視している。新卒採用も2024年から本格化し、17名を初めて新卒で採用した。
急成長企業の社長というと別世界の人に見えるかもしれないが、小川氏は「再現性は十分ある」と語る。一方で「実力3割、運7割」とも認める。
「運は天から落ちてくるものではなく、みんなの前を通っているんです。それを掴めるか掴めないか、見えているか見えていないか。そこが運のいい人と悪い人の違いです」
タイミーもコロナ禍で苦境に立たされた際、泥臭くあらゆる業界を当たった結果、物流業界にニーズを見出して一気に売上を伸ばした。「運がよかった」と言われるが、それは行動した結果掴んだ運だという。
また、競合がいることを恐れる必要はないとも語る。
「メルカリだってヤフオクという先行サービスがありました。タイミーも創業時に競合はいましたが、当時のサービスは『応募して店長がOKを出さないと働けない』先着順ではない仕組みだった。人手不足の時代になぜ先着順じゃないのか、と疑問に思って先着順サービスを作ったんです」
誰かがすでにやっているマーケットだからこそ、ニーズが存在することが証明されており、自分なりの斬新な切り口を尖らせれば勝てる、というのが小川氏の見立てだ。
小川氏は2019年にテレビCMでタイミーが急成長した際、新規事業「タイミーデリバリー」などを立ち上げ、連続起業家的な道に進もうとした時期があった。しかし藤田晋氏との対話で考えが変わったという。
「『どんな経営者になりたいの?』と聞かれて『連続起業家になりたい』と答えたら、『連続起業家はいっぱいいるよね。本当に世の中にインパクトを残す経営者になるには、常に社長として、常にバッターボックスに立ってバットを振り続けないと、その域には至れない』と言われたんです」
それを聞いて、自分は逃げているだけかもしれないと腑に落ちた小川氏は、それ以降「どんなに辛くても大きな会社を作る」と決めた。孫正義氏、永守重信氏、藤田晋氏のような日本を代表する経営者を目指すと明確にしたことで、すべての意思決定が逆算で動くようになったという。
「自分のやりたいゴールが明確になっていないと、モチベーションが湧かない。そこをしっかり作れるかが本当に大事だと思います」
メルカリの参入など競合が増える中、小川氏が見据えるのは思想とビジョンの徹底だ。例えば「タイミーゾーン」というアイデアを語る。
「物流倉庫で20人のタイミーワーカーが働いたとき、休憩時間に1人でご飯を食べたら寂しいですよね。そこに『タイミーから来た人と話したい人だけ集まれるゾーン』があったら、共通の話題で仲良くなれる。そういう細部にこだわって、ワーカーファースト・クライアントファーストで物づくりできるかが、今すごく大事なフェーズだと思っています」
お金のためではなく、自分が情熱を注げるテーマを見つけ、泥臭く動き続け、ゴールから逆算する——27歳の経営者が語ったのは、シンプルだが本質的な経営哲学だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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