上場企業の社長として組織を拡大するか、連続起業家としてプロダクトを作り続けるか、オーナー企業として地方で君臨するか。編集者・箕輪厚介氏が、起業家・経営者の「幸せなあり方」を3つのタイプに分けて語る。
M&Aで売却してファイヤーする人、上場企業の社長として会社を長期に伸ばす人、中小オーナー企業としてキャッシュを自由に使う人——起業家のゴールは多様化している。編集者・実業家として数多くの経営者と関わってきた箕輪厚介氏に、それぞれのタイプの特徴と「どんな人にどのモデルが合うのか」を聞いた。
上場企業の社長を続けるのに向いているのは、大きなビジョンと責任感があり、組織を作るのが好きな人だと箕輪氏は語る。
「サイバーエージェントの藤田さん、ZOZOの前澤さん、メルカリの山田さんのように、組織が大きくなったりプロダクトが広がることで自己承認欲求が満たされる人。存在意義を一番感じられる人だよね」
むしろ自己承認欲求が前面に出るタイプは上場企業の社長には向かないという。今の時代、上場企業の社長は「叩かれないようにできるだけ目立たないように生きる」ことが求められる。それを苦に感じず、「俺がやりたいのはこの事業を大きくすることなんだ」と言い切れる人が向いている。
また、もともとは個人商店的に「俺が、俺が」というキャラだった経営者が、徐々にまっとうなプロダクトを作る経営者へと変わっていくケースもあるという。
2つ目は、プロダクトを次々生み出す連続起業家タイプ。光本勇介氏、家入一真氏、片桐孝憲氏といった名前が挙がった。
「彼らはクリエーターだよ。自分がゼロから作ったプロダクトが世の中をどう変えるか、実験をしたい人。絵を描いたり音楽を作ったりするノリで、プロダクトやサービスを作って反応を見たい。0→1や1→10には興味があるけど、10→100には正直あまり興味がないタイプ」
お気に入りのチームと一瞬でプロトタイプを作り、リリースし、PDCAを回し、資金調達して売却する——この流れを連続して回せるのは才能だという。
さらに、家入氏のように「個人をエンパワーメントする」という世界観を変えずに、その時代のテクノロジーで形を変え続けられる起業家もいる。ペパボ、CAMPFIRE、BASEと、軸はぶれないまま時代を捉え続けるその姿を、箕輪氏は「クリエーターだ」と評する。
3つ目は、地方で創業者・経営者として君臨するオーナー企業タイプ。個人として使えるお金が大きく、地方では「神様のように崇められる」存在になる人もいる。
ただし箕輪氏は冷静にこう指摘する。
「地方のそういう人って、もはや既得権だよね。創業者ってあまりいない。2代目、3代目で、政治家からインフラまで網の目のように張り巡らされている。仕組みが整っていて、地元の優秀な人材も自然とそこに入る。ある種、特殊な既得権なんだよ」
3タイプの違いを踏まえた上で、箕輪氏が強調するのは「自分の性格と合わないモデルを選ぶと無理」ということだ。
「『起業家になりたい』と漠然と言っても、どの起業家なのか。個人事業からM&Aでプロダクトを作り続けたいのか、ちゃんと上場して社会の公器にして世界に打って出るのか、地方のオーナーになるのか。最初の設計から決めないといけない時代になっている」
昔はやりながら方向性が定まっていったが、今はレール自体が違うため、最初の選択が重要だという。
上場路線にも分岐がある。上場後も伸び続ける意思があるか、それともスモールIPOで小さくまとまってしまうか。
「みんな前者を求めているけど、あらゆる事情で後者に落ち着いているのがほとんど。上場してさ、誰も儲かっていなくて、盛り上がっていない部活みたいになっちゃうのは悲しいよね」
時価総額300億円以下のスモールIPOは好ましくないという風潮について、箕輪氏は次のように分析する。現在の市況では、本質的価値に対して株価が外的要因で吊り上げられていただけのIT企業も多い。赤字を掘って時価総額を上げ、どこかで帳尻を合わせるという「ジェイカーブ」モデルは、「崖から落ちていく中で飛行機を作るようなもの」で、現実的には難しい。
だからこそ、これから起業する人には「利益をちゃんと出しながらやっていく」ことの重要性を改めて意識してほしいと締めくくった。
上場社長型、連続起業家型、オーナー企業型——どのモデルが「正解」というわけではない。重要なのは、自分の性格と志向に合ったモデルを最初に選ぶことだ。組織を作りたいのか、プロダクトを作りたいのか、地域で君臨したいのか。その問いに自分なりの答えを持つことが、起業家としての幸せなあり方への第一歩となる。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
