M&Aの半年後にうつ状態と診断された経営者が、2週間で回復するまでに実践した習慣を共有。朝散歩・サウナ・信頼できる人への自己開示・根本解決など、メンタルを安定させるために本当に効果があった行動と、逆効果だった行動を体験ベースで紹介する。
M&Aを経験した経営者が直面する課題のひとつに、PMI(経営統合)後のメンタルヘルスがある。動画の主人公であるしゅん氏は、M&Aから半年後にうつ状態と診断された経験を持つ。本記事では、しゅん氏が約2週間で回復するまでに実践した「やってよかったこと」と、逆に「やらなくてよかったこと」を、本人の体験談ベースで紹介する。なお、医学的な助言ではなく、あくまで個人の体験として参考にしてほしい。
しゅん氏が最も強く効果を実感したのが、朝起きてすぐの散歩だ。携帯を見ずに、家の周りを15〜30分ほど早歩きで歩く。激しい運動でなくても、セロトニンが分泌され、気持ちが落ち着いていくという。「人体実験で効果を実感した」と語るほどの定番習慣だ。
しゅん氏は、自身が運営に関わるホームサウナ「オールドルーキーサウナ」のコンセプトを引きながら、「サウナに入っても忘れられない悩みこそ本当の悩み」と語る。3〜4セット入っても残る悩みは本物だが、それ以外の小さな悩みはサウナで流せる。病んでいた時期は週7、ときには週8回サウナに通ったという。自宅で湯船に浸かるだけでも自律神経が整う実感があった。
M&A後の苦境を抱え込んでいたしゅん氏は、当初、社員にも事情を共有していなかった。しかし「このままだとみんなに迷惑をかける」と判断し、社員と外部の信頼できる大人に、会社の財務状況も含めて事実ベースで全て打ち明けた。自己開示することで気持ちが楽になるだけでなく、自分にとっての大問題が他者からは些末に見えたり、逆に楽観視していたことが本当のリスクだったりと、客観的視点が得られる。1人ではなく複数人に伝えることがポイントだという。
落ち込むと視野が狭くなる。そんなときしゅん氏は、宇宙視点で自分を眺めるイメージを意識した。YouTubeで宇宙の映像を見て、悩みのスケールを相対化する。さらに、YouTuberとしての視点から「弱みや苦しみこそコンテンツになる」と捉え直すことで、長期的にプラスに転じる発想を持てるようになった。
2年前から朝6時半のトレーニング会に参加し、最近はクロスフィットにはまっているしゅん氏。1時間で必ず終わる高強度・高重量のトレーニングは、物理的に余計なことを考える余裕がなく、終わると脳がクリアになる。ベッドから起き上がれないほど重症化する前の「ちょっと落ち込んでいる」段階で、特に効果を発揮するという。
通常時は7時間睡眠を死守しているしゅん氏だが、病んでいた時期は9時間眠るようにしていた。昼寝が必要なら1時間でも取る。睡眠中はサウナと同じく、小さな悩みを良い意味で忘れさせてくれる。忙しいときも、20〜30分の細切れ睡眠を積み重ねることが、長期戦には欠かせない。
振り返って最も本質的だったのが、根本解決に取り組む姿勢だ。しゅん氏の場合、原因はM&A後のPMIでの苦労に集約されていた。「最悪の事態を想定し、それでも大丈夫だと思えた瞬間に楽になった」という。立ち上がれないほど病んでいる場合は休養が優先だが、その手前なら、関係を断つ・解約する・一部返金するといった選択肢を含めて、構造的に問題を理解し、周囲の助けを借りながら早めに解決に動くことが重要だと語る。
夜の揚げ物、合間時間のお菓子、会食での飲酒——こうした習慣を自制することで、体調が改善し、自己肯定感も上がった。お酒は2杯まで、最大でも3杯までと自分でルール化。特にお菓子の量を減らしたことが、メンタルの安定につながったという。
しゅん氏は現在、マラソン・クロスフィット・簿記の勉強に取り組んでいる。いずれも変数が自分だけで、努力が数値に直結する。クロスフィットの「戦闘力測定会」では3か月ごとに運動能力が数値化され、向上すれば素直に嬉しい。ビジネスや対人関係は外部要因で揺れるが、自己完結型の目標はメンタルの安定剤になる。
現在しゅん氏が常用するのはプロテイン・グルタミン・クレアチン・マルチビタミン。効果の実感は曖昧でも、「やることをやっている」という自己肯定感が上がる。メンタル安定系サプリではDHCのセントジョーンズワートを1週間試した経験もある。頼りすぎは禁物だが、プロテインなど一部だけ毎日続けるのが良いという。
朝の日記習慣の中で、「やってみたいこと」を100個書き出し、ひとつずつ実行する。フィンランドでサウナに入る、インドに行くといった大きなものから小さな店に行くまで、思いついた瞬間にエントリーや航空券購入まで進める。「やりたいことができている」感覚を自分に刻む手法だ。ただし、本当に重症な時期はやりたいこと自体が浮かばないため、回復し始めてから取り入れるのが現実的だという。
病んでいた2週間〜1か月ほどは集中力が続かず、本を読んでも2分で別のことを考えてしまう状態だった。そのときに役立ったのが本要約YouTubeチャンネルの聞き流し。哲学書を要約するアバタロー氏のチャンネルなど、30分ほどの動画を2倍速で聞くことで、本を読んだような感覚を得られた。
自己肯定感が下がると、周りのために動かねばという気持ちが強まりがちだ。しかし、しゅん氏はあえて一旦利己的になることを勧める。自分の「困りごと」起点で動いた就活もM&Aも、結果的に同じ悩みを持つ人の役に立った。利己と利他は対立しない、というのが本人の実感だ。
健康な時にはモチベーションになるInstagramやXのキラキラ系投稿、美女アカウント、よく飲み会に出ている知人のストーリーは、落ち込んでいる時には自律神経を乱す材料になる。一時的にフォロー解除やミュートをするだけでメンタルが安定する、と効果を強調する。
断捨離の効果は大きく、いらない服やカバンの中身を一度すべて捨てたところ、気持ちが整理され自己肯定感も上がった。さらに、パソコンやノートを持たずに外を歩くこと。最初は罪悪感があるが、すぐに爽快感に変わるという。
ノートに小学校から現在までを小説風に書き起こす。これにより、自分がどんな時に落ち込み、どんな時に幸せだったかを俯瞰できる。今の悩みも「人生というコンテンツの一部」として相対化できるようになる。これはある程度回復してから取り組むのがよい。
苦しい時ほど他責や怒りが顔を出す。しゅん氏はそれを抑え込むのではなく、エネルギーとして自分たちの事業や長期的にプラスになる方向に転換する。尊敬する加藤大堂氏の「最大の復讐は忘却である」という言葉を引用し、相手に向けるのではなく、自分のやるべきことに集中して忘れることこそが最良の対処だと語る。
他人と比較して自分を測ることをやめる。情報をシャットダウンし、過去の自分と比較して進歩を確認することに意識を向ける。落ち込んでいる時ほど周囲の評価が気になるが、気にしないほうが生産性も高く、本質的だと振り返る。
「これは仕事だ」と感じた瞬間、楽しさやエネルギーが減衰する。そんな時こそ、自分が結局何をしたかったのかに立ち返る。ビジョンに従って生きることで、仕事を仕事と感じない状態を取り戻せる。落ち込みが少し回復した段階で、振り返りの良いきっかけにできるという。
しゅん氏が「メンタルに良い」と思って試したものの、逆効果だったことも5つ紹介されている。
1つ目はインドへの渡航。「人生が変わる」という言説を信じて1人で出かけたが、情報量と発展途上国特有のエネルギーに圧倒され、押し売りに乗ってしまうなど、むしろ悪化した。発展途上国は健康な状態で行くべきだという。
2つ目はXを見ること、そして周囲との比較。理想はアンインストール、難しければスクリーンタイムを1日20分に制限するのが良い。
3つ目は大人数の飲み会。一方でDeNAの野球観戦には行って楽しさを取り戻せたが、初対面が多い飲み会は気を使い疲れてしまった。
4つ目は起業家界隈での不用意な交流。同業・同フェーズの人と過剰に絡むと、本質ではない情報に振り回される。本当に成長している経営者は、むやみに界隈に出入りしないという観察も語られた。
しゅん氏は最後に、「結局自分の人生なので、楽しく生きるためにやっている。健康な体と心はそのための必須条件」と締めくくる。M&A後のPMIに苦しむ経営者にとって、メンタルケアは精神論ではなく、事業を継続するための実務である。本記事の20+5のリストが、同じ立場にある経営者のヒントになれば幸いだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
