フランス・パリで活動するひろゆき氏に、経営者・成功者の思考法、お金の使い方、住む国の選び方、AI時代の働き方について聞いた対談。「事業計画を守る」発想がなぜズレているのか、プライドを持たない生き方のメリットとは何かを語る。
フランス・パリで対談したひろゆき氏は、現代の成功者に共通する姿勢について次のように指摘する。スティーブ・ジョブズもイーロン・マスクも、緻密な事業計画や通期目標から逆算してビジネスを組み立てているわけではない。「これは面白いからやる」という動機で動き、結果として世界トップ規模の企業を生み出してきた。
それにもかかわらず、多くの経営者は「事業計画を維持すること」を絶対視する。ひろゆき氏は、これは成功者のやり方ではないと語る。たとえば、かつてSNS事業として上場したDeNAは、SNSがゲームに置き換わると判断してモバイルゲームへ事業を転換した。事業計画にこだわっていれば、いまのDeNAはなかったかもしれない。
「事業計画を守る」ことに縛られると、市場の変化を捉えそこねる。ジョブズやマスクという「お手本」が示しているのは、変化に応じて面白いと思える方向へ柔軟に舵を切る姿勢だ。
ひろゆき氏は、自身の幸福度を「ずっと真ん中あたりで楽しい状態」と表現する。10歳前後で一度幸福度が下がったのは、子どもの頃の「泣けば何でもやってもらえる」状態から現実とぶつかる過程だったのだろうと振り返る。
何を見ても新鮮で、自分の指が動くだけで楽しいといった「全能感に基づく楽しさ」は、生物学的にもう得られない。だが、家にいながら石川県の知人と話したり、収録で人と会話したり、ゲーム『龍が如く5』を遊んだりと、日々の小さな楽しみは続く。知識が増えること自体も楽しい。
年間3分の1ほどはフランス以外で過ごすが、空港で2時間遅れても「混んでるから仕方がない」と気にしない。怒っても結果は変わらないという合理的な割り切りが、ストレスを減らしている。
ひろゆき氏の生活コストは、収入と比べて低いとされる。それは、お金を使うこと自体への喜びが薄いからだ。
たとえば一人10万円のディナーであれば、10万円分の価値が得られるだけで、損も得もない。しかし招待で行けば10万円分の価値がただで手に入る。10万円を払って10万円の体験を得るのと、無料で10万円の体験を得るのとでは、後者の方が合理的に「お得」だと考える。
さらに、寿司屋であれ高級レストランであれ、一度体験すれば「素材の最高峰がどこにあるか」「コース料理の構成や客層、酒の合わせ方」までおおむね把握できる。同じ知識を得るために二度高いお金を払う動機が湧かないのだ。
仮に月1000万円を自由に使ってよいと言われても、3か月もすれば使い道が尽きる。マンションや株のように資産化するものを除けば、「お金を使ってできる体験」はおおよそ把握しているからだという。
「プライドというものを持たない方が幸せ」というのが、ひろゆき氏の現時点での結論だ。プライドを守るために必死に頑張り、結果として苦しい状況になっている人は多い。
そのうえで、自分自身については「能力的には60点くらい、平均より少し上」と評価する。70点・80点といった本当に優秀な人材は、官僚や大手広告代理店、上場企業の社員にいくらでもいるという。彼らは体力もあり頭もよく、責任感もある。
ただし、責任感がある人ほど「会社員をやりながら副業でやる」といった越境的な動きには踏み切れない。会社が判断のブレーキになるからだ。むしろ60点くらいの能力で、責任感に縛られない人の方が、起業や事業立ち上げでは結果を出しやすい側面がある。
ひろゆき氏は、社員50人ほどの会社を経営しているが、外部の人間を入れて組織を急拡大させるようなマネジメントはしてこなかった。2ちゃんねる時代から一貫して同じスタンスだという。
背景にあるのは、自身が手がけてきた事業の多くが「ドロ臭い営業を必要としない構造」だという認識だ。BtoBになると、たとえば40代で上場企業の決裁権を持つ層を相手にした接待営業など、関係性で動くビジネスが増える。1000万円の案件を取るために20万円の接待コストを使う、といった構造だ。
一方、ITメディアやBtoC寄りのビジネスは、商品やコンテンツの力で勝負しやすい。ひろゆき氏は「BtoCで勝てない人がBtoBに行く」とも語り、自分は徹底してプロダクトとコンテンツの方で戦ってきたと振り返る。
フランスに住むことの実利的なメリットも具体的だ。フランスでは家族構成に応じて課税額が分割される仕組みがあり、夫婦と子ども2人(子は0.5人換算)の家族なら、世帯所得を3で割った金額に課税される。同じ年収でも、日本と比べて税負担が大きく軽くなるケースがある。
また、パリの不動産は過去150年で値下がりしたのは34年ほどしかないという。ナポレオン3世時代の法律により新築がほぼ不可能で、土地の供給が固定されているため、長期的には上昇トレンドが続いてきた。東京23区にも近い構造があると指摘する。
ひろゆき氏は、フランスへ移住する際に資産を持ち込み、こちらで投資に振り向けたという。
「タイムマシン経営」という言葉がある。アメリカで流行ったサービスを日本に持ち込むビジネス手法だ。ただし、アメリカで流行ったものすべてが日本で受けるわけではない。「アメリカでめちゃくちゃ流行っているけれど、日本人には絶対受けない」ものも多い。
この見極めは、アメリカの価値観と日本の価値観の両方を内側から知っている人にしかできない。ひろゆき氏は、若いうちに英語圏に住み、現地の価値観を体に入れておくことの価値を強調する。1年でも滞在すれば、日本人1億2000万人の大半が持っていない視点が得られる。
おすすめの国を聞かれた際には、英語が使えるオーストラリアを挙げつつ、起業志向ならフィリピンのように人件費が安く事業を作りやすい国もありだと答えた。ワーキングホリデーを使うなら30歳までに動くべきとの助言もあった。
AIブームについてひろゆき氏は冷静だ。動画編集や知的労働の一部はすでに大幅に楽になり、人間がやっていたことが安くこなせるようになった点は大きい。一方で、各社が毎年巨額を投資している割に、利益化の見通しは厳しいとも指摘する。
3年前には存在しなかった生成AIが普及した結果、無料でも十分使える領域が広がり、課金の対象は大学の研究機関や企業の限定用途に絞られていく。投資額の上昇率と売上の伸び率が見合っているかを冷静に見ると、必ずしも釣り合っていない。
「AIに期待されているからお金が集まる」現象に加え、世の中に他の有望な投資先が乏しくお金がお金を生んでいる側面が強い、というのがひろゆき氏の見立てだ。
株式投資についても独特の哲学がある。ひろゆき氏が保有しているのは、株主優待狙いの長期銘柄が中心だ。「この会社は50年以内になくならない」という基準で選び、株価は基本的に見ない。
LVMHのように、「アホ向けのビジネスがうまく回りそう」な企業の株を、ブランド価値や顧客心理に着目して買うこともある。デイトレードのように1日10分株価を見続ける生活を10年続けたら、それでどれだけ得をするのか。「株価を一切見ない人生で生きていきたい」と語った。
対談を通じて浮かび上がるのは、合理的な判断を徹底しつつ、プライドや見栄に振り回されない生き方だ。事業計画より「面白い」を優先し、お金は使い切ることを目的化せず、価値観は複数の国で検証する。
同時にひろゆき氏は、「可愛げ」の重要さにも触れた。理屈で正しくても、それを「正しい」と言い張りすぎれば人は離れていく。ITバブル期に出版業界が忙しすぎて新領域に乗り遅れたように、暇を確保し、新しいものに乗れる余白を持つこと。社会との関わり方そのものを設計することが、結果として「成功」を引き寄せるのではないか。そんな示唆に満ちた対話だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
