電通からプルデンシャル生命へ転身し、伝説的営業マンとして名を馳せた芦名勇舗氏。現在は英会話・サウナ・フィットネスなど複数事業を経営する同氏に1日密着。起業の原点、独自のマネジメント論、そして「アメリカを倒す」という壮大なビジョンに迫った。
電通に新卒入社しながらわずか1年半で転職、その後プルデンシャル生命でトップ営業マンとして実績を残し、現在は英会話事業「ミライズ」、サウナ事業、フィットネス事業など複数の会社を経営する芦名勇舗氏。今回、その芦名氏の1日に密着し、経営哲学や事業観について話を聞いた。
芦名氏の朝は、娘の見送りからジムでのトレーニングで始まる。1日4リットルの水を飲み、生活習慣そのものを徹底的に管理する姿勢は、自身が手がけるヘルスケア事業の思想とも通じる。
「水は体重×40mlぐらい取るとだいぶいい」と語る芦名氏。事業も身体も、思想を一貫させているのが特徴だ。
大学時代はアメリカンフットボール一色だったという芦名氏。テストがマークシート中心で確実に卒業できる学部を選び、時間のすべてをアメフトに費やした。電通入社も「一番仕事してなさそうで自由っぽい」という直感的な理由だったという。
しかし入社1年半で、自分自身を尊敬できなくなる瞬間が訪れた。
「日中仕事しないで、残業時間をつけるためにだらだら夜仕事して残業代をもらう。朝はだらだらして、ホワイトボードに『直行』と書けば外で仕事してる扱いになる。うまくサボって電通やってますという人間に自分自身がなったから、終わってんなと思った」
そんなときプルデンシャル生命から声がかかる。決め手は仕事内容ではなく、面接で目を見て気持ちのいい挨拶をしてくれたこと。「どうなりたいか」という尺度だけで進路を決めるという芦名氏の姿勢が、ここにも表れている。
プルデンシャル生命では、世界一を2連覇した支社にスカウトされ、最年少で営業所長まで上り詰めた。その営業スタイルは独特だ。
初回面談はわずか15分。保険の話はせず、銀行・証券・保険会社をお金の預け先として比較するプレゼンを行い、次回のヒアリングへつなげる。2回目で「保険って必要だと思いますか?」とストレートに問い、必要だと思った人だけに加入してもらう——主導権は持ちつつ、判断は相手に委ねるスタイルだ。
営業所長時代には採用・育成・マネジメントを徹底的にやり込んだ。この経験が、現在の複数事業のマネジメント力につながっている。
営業所長として成功を収めながらも、芦名氏は再び動く。きっかけは「お金持ちは全員人格者だ」というロマンが崩れた瞬間だった。
「店員さんに失礼な態度を取る人、机を蹴る人もいた。これがお金持ちとされるなら、僕はこのスポーツで1番になる必要はない」
25歳の自分を馬鹿にしてくる「お金持ち」たちへの静かなリベンジとして、売上をゼロにしてアメリカへ渡る決断をする。俳優のオーディションを受けて舞台に立ち、「雰囲気とオーラだけで仕事する」という新しい自分の可能性を試した。
2回目の渡米はトランプ政権下のビザ問題で叶わず、無職期間が始まる。売上ゼロ、経費だけがかかる生活で貯金が減っていくなか、フィリピン留学で英語を磨き、身体を鍛え、ビジネスアイデアを考えた。
「お金がなくなったから稼がなきゃ、というのが最初の起業のきっかけ」
帰国後、無料で経営相談に乗っていた延長で「ここから先は有料です」とコンサルティングを開始。月40〜60万円で複数社と契約し、初年度から2,000万円ほどの売上を立てた。
しかし、コンサルではディレクションまで踏み込めないという限界を感じ、2018年に自社サービスとしてフィットネス「BEETS」を立ち上げる。プルデンシャル時代の営業組織のノウハウを応用し、「営業マンがジムを売る」仕組みを作った。最初の1年で6店舗、3年で11店舗まで拡大している。
芦名氏が複数事業を回せる理由は、徹底した仕組み化にある。
「BEETSを始めた瞬間から、絶対に現場に行かないと決めた。複数店舗出すつもりなら、1店舗目から100店舗分の1店舗だと思って対応した方が正しい」
社員とのコミュニケーションも極力減らす。指示はすべて書面で、マニュアルを徹底的に作り込む。トラブルが起これば、社員を叱るのではなく自分が書いた言葉=ドキュメントを修正する。
「僕の本業はコピーライターであり作家。言葉で全部決めて、その通りに動けているかを確認する。動けない人がいるなら、動き方まで全部言語化する」
組織もピラミッド型ではなく「鍋蓋型」。芦名氏とごく少数の役員チーム、その下に従業員という構造で、各事業を専門家に任せている。
ビジネスを「自己表現」と「経済的自由」の2軸で捉える芦名氏。「経済的自由」は月500万円ほど自由に使えれば十分だと言う。
「売上何百億・何千億と言っても、自分で使えるお金がなかったら意味がない。やりたくないことをやっているなら自己表現もできていない」
会社の時価総額を上げ続けることが目的ではなく、自由と自己表現の手段として経営をやる——そのスタンスが、複数事業を並行する現在の働き方に表れている。
設備投資が重く参入障壁の高いサウナ事業も、芦名氏は独自の勝ち筋を持っている。
- 通常のサウナ店の半分以下の床面積で設計
- 建築設計を自社で行いコスト削減
- 受付などの人件費をシステム化・自動化で圧縮
- 小さくランニングコストを抑えつつ気持ちよさを担保
借入は3億円ほどあり、ほぼ個人で連帯保証をつけているが、「キャッシュフローさえ見ていれば不安はない」と言い切る。PLの黒字赤字よりも、現預金がいくらあるかが商売の本質だという。
芦名氏は「人と比べる」ことの重要性を語る。ただし比べるのは長所だけだ。
「短所は自分でわかる。朝弱いとか時間にだらしないとか。でも長所は人と比べないと絶対わからない。自分が当たり前にできることを『え、それできないんですか?』と言われて初めて気づく」
マニュアル化、言語化、仕組み作り——自分が突き抜けてできる部分にフォーカスし、それ以外は信頼できる仲間に任せる。これが複数事業を回す原動力になっている。
承認欲求の対象は「人」ではなく「社会」だと言う芦名氏。最終的なビジョンは意外なほど壮大だ。
「英語を勉強しているのは、言葉だけでアメリカ人を論破するため。アメリカを倒さないと生きてる意味がない」
イーロン・マスクが並び立つような場に日本人として自分が立っていてもいい——そんな絵が浮かんでいるという。事業も英会話もサウナもフィットネスも、すべて「自己紹介」であり、ユーザーとの接点に過ぎない。
最後に、若手経営者や起業を志す人へのアドバイスを聞いた。
「アドバイスは特にないが、人の言うことを聞かない方がいい。自分の頭で考えて納得したことをやる。人のせいにするのもよくないし、人の言葉を鵜呑みにするのもよくない。自分で責任を取れるのが商売の一番楽しいところ」
誰かをメンターにすることもなく、自流を貫く芦名氏。電通、プルデンシャル、起業家という異色のキャリアを歩んできたその言葉には、自由と覚悟の両輪が貫かれていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


2026/5/4

2026/3/24

2025/10/23

2025/8/23

2025/1/27

2025/1/22