障害者向けプログラミングスクール「就労移行ITスクール」を運営するメンタルヘルスラボ。小口200万円からの投資型フランチャイズで約3億円を調達し、急成長を遂げる独自モデルの実態を、代表の孤氏が明かす。
障害者向けプログラミングスクール「就労移行ITスクール」を運営するメンタルヘルスラボ株式会社は、直近2年間で上場企業を含めても有数の出店スピードで拠点を拡大している。その成長を支えているのが、小口200万円から投資できる「投資型フランチャイズ」という独自の資金調達モデルだ。一見すると怪しさも漂うこのスキームについて、代表の孤氏にその座組みやデメリット、起業家へのアドバイスまでを聞いた。
メンタルヘルスラボはもともと、ブランドを購入したオーナーが自ら従業員を採用して運営する一般的なフランチャイズで展開していた。しかし40拠点を超えたタイミングで一旦加盟をストップし、うまくいった事業所をM&Aで買い取り直営化する方針へと舵を切る。
そこから生まれたのが、現在の投資型フランチャイズだ。立ち上げや運営は本部が全て担い、投資家からは資金のみを受け入れる。買い手としてのM&Aと組み合わせるハイブリッド型のモデルとなっている。
ファイナンスの仕組みはこうだ。1事業所の立ち上げに必要な約2,000万円を10等分し、一口200万円で募集する。共同出資の形で時価総額1億円の子会社を設立し、外部株主が20%、メンタルヘルスラボが80%を保有する。外部株主の持ち株は議決権のない種類株式で、毎年の税引後純利益から持ち株比率に応じて配当する設計だ。
初年度は1,500万〜2,000万円を投資して赤字、1年半ほどで投下資金を回収し、2年目以降は黒字化していく見込み。1店舗あたり最大で2,000〜3,000万円の利益が出るため、2年目の利益2%分でおよそ20万円、つまり利回り10%ほどの着地が想定されるという。
さらに10年後には、メンタルヘルスラボが投資家の保有株を買い取る契約を結んでいる。10年で5拠点ほどに育つシミュレーションでは、利益1億円規模となり、バリュエーションは3億〜5億円。当初の時価総額1億円から3〜5倍となるため、600万〜1,000万円のキャピタルゲインも期待できる。買い取りは現金、あるいは本体の株式との交換も選べるようにしているという。
孤氏が「ややこしい子会社スキーム」をあえて採用している理由は、事業ピボットのしやすさにある。同社は現在、主力の「就労移行ITスクール」をはじめ、自立訓練、訪問看護、児童発達支援の4ブランドをポートフォリオとして抱える。
エリアごとに「ここは児童向けが合う」「大人向けに変えた方がいい」といった判断を柔軟にできるよう、ブランド単位ではなく子会社単位で出資を受ける形にした。過去のフランチャイズ展開ではブランドに紐づくがゆえに、撤退判断が遅れる事例があったといい、その反省も踏まえている。
投資家からは経営の議決権を持たない代わりに、運営は完全に本部に任せてもらう。「かなり信頼してもらってないと成立しないモデル」と孤氏は語る。
出資者の属性として圧倒的に多いのが、自社を売却した経験のある経営者だという。「売却後、自分でゼロから事業を立ち上げるのはまだしんどい。でも何かやっている感、社会の役に立っている感は欲しい」というニーズと、孤氏のビジョンがマッチしているという。
投資型フランチャイズの予算枠は約9億円で、これまでに約3億円を調達済み。残り45拠点分ほどの枠を想定している。
メンタルヘルスラボはエクイティファイナンスでも約1.7億円を調達している。リタリコやベクトルといった事業会社がエンジェル的に出資しているという。
ただし孤氏は、店舗ビジネスとエクイティの相性について率直に語る。「店舗ビジネスは10億円調達してもすぐには使えない。物件があり、採用が追いつかないとオープンできない。月1億円必要だが、それ以上あっても困る」。プロダクトに広告を投下すれば伸びるJカーブモデルとは異なり、純粋にエクイティと噛み合いにくいというのが実感だ。だからこそ、ビジネスモデルにフィットする投資型フランチャイズの座組みが効いてくる。
孤氏自身は、売上10億円に到達するまで丸6年かかったという。そこから23億円、38億円と一気にスケールした背景には、M&Aによる成長に加え、組織の成長と「選択と集中」がある。
創業期はサイバーエージェントへの憧れから人材マッチングや子会社展開など多角的に手を広げたが、結局は自身のビジョンに沿った事業に絞った結果が最も伸びた。「最初から選択と集中をしておけばよかった」と振り返る。
孤氏は10億円規模になるまで一切のエクイティ調達を行わず、デッドファイナンスでつないできた。直近は資金調達を経て攻めの姿勢に転じているが、これから起業する人へのアドバイスは明確だ。
「ハードモードで自分のレベルを育てた方がいい。受託で案件を取り、頭を下げてお金のありがたみを分かる修行をする期間が、結果的に経営者としての強さになる」。お金のありがたみを持った上で攻めれば、攻めて失敗しても戻ってこられる。一方、いきなりエクイティで突っ込んだ場合、立て直しが難しくなる傾向があるという。
なんとなく起業したいタイプであれば、まずは住宅系などソリッドな事業で実力をつけるルート。社会の課題を解決したい明確なテーマがあるなら、エクイティを活用してもよい。学生起業の打率の低さも、社会人経験という「トレーニング期間」が抜けていることに起因しているのではないか、と孤氏は指摘する。
最後に「なぜそんな怪しく見えるモデルをあえて選ぶのか」と問われた孤氏は、こう答えた。
「ギャップが面白さを生むし、興味を持ってもらえる。最終ゴールはメンタルダウンしない世の中をつくる予防医療事業。仕事や事業は最高のおもちゃで、それを取り上げられるのが一番嫌だから、攻め続けたい」。
投資型フランチャイズは、店舗ビジネスにおける新しい資金調達のかたちであり、ビジョンに共感する仲間と「下でも上でも」資金を集めるスキームでもある。資金調達の選択肢を考える経営者にとって、参考になる事例と言えるだろう。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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