編集者・箕輪厚介氏がM&A CAMPに登場。中小企業の顧問として社長たちと対談を重ねる日々から見えてきた、自己ブランディングを避ける現代の起業家像、再現性のある成功の条件、そして印象に残すお金の使い方までを語り尽くす雑談回。
M&A CAMPに編集者の箕輪厚介氏が再び登場。最近はあらゆるメディアで対談する姿を見かけるが、その大半は「顧問先」企業からのオファーだという。中小企業の社長を相手に対談を重ねる中で見えてきた、現代の起業家像の変化や、若手経営者がロールモデルを失いつつある現状について、ホストと率直に語り合った。
登録者数十人規模から数十万規模まで、あらゆるYouTubeチャンネルに出演している箕輪氏。種を明かせば、その大半は顧問契約を結ぶ会社からのオファーだという。
「月30万円の顧問で月11時間打ち合わせをするって契約しても、ぶっちゃけ毎月そんなにコミットすべきテーマってないんですよ。最初の3回くらいは打ち合わせも面白いけど、実行フェーズに入ったら相談事って減っていく。だったらYouTube撮っちゃおうかって会社が多い」
背景には、YouTubeに対する企業の期待値の変化がある。バズらせるためというより、採用候補者や取引先が会社名で検索したときに見られる「ホームページ的なコンテンツ」として、500再生程度でも十分に価値があると考える経営者が増えているのだ。
箕輪氏との対談で会社やサービスについて語ってもらうことが、結果的に良質な企業紹介コンテンツになる。「ホームページに出てくるおじさんみたいな存在」と本人は笑うが、選ぶ基準も極端だ。
「『このチャンネルなら出る』みたいな基準すらない。極論、犯罪者でもいい。ただし、思っていることをそのまま言うだけ。すごくないのに『すごい』とは言わない。それを了承してくれたら誰でもいい」
相手側も箕輪氏のキャラクターを承知のうえでオファーしてくるため、緊張感ある対談にもならず、自然体の関係が築ける。すでに一定のスクリーニングを経て会っている、という構造になっている。
M&A CAMPのメインターゲットは、ホールディングス化を目指す若手経営者層。さらに上の、メルカリやクラシルといった数千億円規模の上場企業を目指す起業家になるための条件は何か──ホストの問いに、箕輪氏は確率論として答える。
「変数が多すぎて、運や環境を含めて再現性がない、というのが結論。ただ、もう一度起業しても最低限の経営者にはなれるイメージはある。大成功じゃなくても、プチ成功くらいは努力でいける」
令和の虎界隈に集う経営者たちと、上場して数百億・数千億規模を目指す経営者は、思考の前提が違うという。前者は「お金を稼いでキャバクラに行きたい」「いい車を買いたい」という個人の欲望が原動力。一方、後者は組織の話ばかりしている。
「社員の満足度をどう上げるか、どこまで厳しくするのがいいのか、リモートはどうか、不満が溜まらないか──そういう話をずっとしている。0→1ができる能力がありながら、組織という別ゲームもやりきって、人間としても成熟していく。口先だけの大人じゃなくて、組織を率いて大きい会社を率いるって、本当に大人になることなんだなと思う」
例外として挙がったのが、エイベックスの松浦勝人氏。会長就任後にYouTuberとして活動するなど独自のキャラクターを持つが、「再現性のないバグ」と評する。前澤友作氏なども含め、アーティスト気質の経営者は「先が読める安定経営にワクワクしないから、ある段階で経営の前線から離れることが多い」という見立てだ。
対談では、キッズライン経沢香保子氏の話題にも及んだ。箕輪氏が高く評価するのは、その「シンプルさ」と「やり切り力」だ。
「もう一度上場したい、女性初の何々をやりたい、みたいな──ある意味で昭和イズム。称号やタグを取りに行く姿勢がある。女性起業家風にメディアで持てはやされている人はたくさんいるけれど、実際に上場させて結果を残している女性起業家は数人しかいない。その中で、やり切る根性がすごい」
箕輪氏が初めてDMを受け取ったのは、自身がTwitterで有名になった直後。「まず会社を作ったほうがいい」と勧められ、半信半疑で会社を立ち上げて月5万円のコンサルを始めると、経沢氏の会社からいきなり1年契約・60万円が振り込まれてきたという。「嗅覚と、トレンドの人にすぐ会いに行く真っ直ぐさがすごい」。
この「センターピンしか見ない」シンプルさは、必ずしも組織を巨大化させる経営者像とは重ならないが、独自の魅力を放つタイプだと位置づけた。
テーマは、現代の若手起業家の姿勢へと移る。箕輪氏自身が運営する「狩猟者」というコミュニティに集う500人ほどのモチベーションは高いが、昔と決定的に違う点があるという。
「昔みたいに『Googleを倒します』『時価総額いくらです』って言うやつはいない。昔ははったりだと思っても、愛せるはったり、お金が集まるはったりだった。でも今そのはったりは通用しない。スタートアップが大人のゲームになっている」
かといってYouTuberやTikTokerになるには遅く、Web3やAIに流れる若者もいるがAIは資金が必要。エネルギーの行き場が定まりにくい時代だと指摘する。
「一時期はWebメディアを作って売却するのが流れで、今だとYouTubeが若干その立ち位置」とホスト。リアルビジネスやフェスも飽和し、VVIPがシャンパンを開け疲弊する状況まで生まれているという。
現代の起業家がもはや自己ブランディングをしようとしないことも、大きな変化として語られた。
「文春やSNSでうまくいっている人ほど叩かれるから、隠れる。M&A総合研究所の佐上さんなんて完全にストレスゼロの立ち振る舞いで、昔だったら『俺が本を出して』ってなっていたパターンを、もう誰もやらない」
LayerXの福島氏や、AIカラーで急成長中の田中氏(エルカミーの田中氏など)についても、「直近2~30年の日本のベンチャー界で最も短期間で伸びている会社の経営者なのに、若い人は知らないし、知られようともしていない」と指摘。これが現代の正解なのだろう、という結論に至る。
結果として、若手起業家のロールモデルは不在になりがちだ。「若い人はメディアに出ているものしか見えないから、結局YouTuberやブレイキングダウンに憧れることになる」。タイミー小川氏が「ギリギリまだスター枠に近い」程度で、それでも相当に警戒しているはずだという。
話題は田端信太郎氏にも及ぶ。最近の田端氏は「個人アクティビスト」として上場企業相手に怒りを表明しており、しかしその根底には「愛がある」と箕輪氏は読む。
「ガチで怒っていますよ、と言うときに少し決まりの悪そうな顔をする。あの人間味がいい。Twitterの同調圧力中毒になっているとも言うじゃん。あの可愛らしさと、ちゃんとしたフェアさ、そして時間も金もある中で遊んでいる感じが、現代では一番カッコいい立ち振る舞いかもしれない」
人に印象を残すお金と労力の使い方として、箕輪氏自身のエピソードも紹介された。サイバーエージェントの藤田晋氏に取材した際、社の下のカフェでその場で手紙を書いてポストに投函。翌日、秘書から「藤田が嬉しそうに読んでいます」と連絡が来たという。
また、藤田氏がかつてホリエモンと作ったSNS「755」を駆使してアプローチした話も披露された。当時誰も使っていなかったが、藤田氏は熱心にユーザーサポートをしており、メッセージにすぐ返信が来た。「権力者しか使っていないサービスを駆使する」という発想だ。
対照的に、IVSやB Dash Campで名刺だけを大量に集める若者には辛辣だ。経沢氏が60万円、林氏が会った瞬間に1,000万円振り込んだような「金の使い方の感覚」を持つ人と、自己満足で名刺を渡す人とでは、結果に決定的な差が出る。
「『顧問で月5万円、今すぐ払うなら名刺もらってやる』と言ったら、一気に渡す人がいなくなった。そこで5万円を即金で渡せるやつなら超いい投資なのに」。印象に残るのは、相手の時間に対して具体的なリターンを提示できる人間だけだ、というのが箕輪氏の持論である。
自身の理想像を問われた箕輪氏は、「境界なし」というキーワードを挙げた。誰とでも同じテンションで話し、影響を受け続け、楽しそうにしている──その姿勢が、誰かにとっての安心材料になればよい、と。
組織を作って社員のモチベーションを上げるタイプではなく、対社長・対個人のプレイヤーとして力を発揮する。労働時間は減りながら収益は過去最高を更新しているのは、かつて自分に憧れてくれた人たちが事業で成功し、顧問契約を通じて還流しているからだという。
自己ブランディングを抑え、フェアに遊び、印象に残るお金と労力の使い方を知る人間が結果を残す──現代の起業家像をめぐる、雑談ながら示唆に富んだ回となった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
