幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏が、自身のうつ抜け体験から顧問業の実態、上場の意味、そして個人アクティビストとして注目される田端信太郎氏の評価まで縦横無尽に語る。スタートアップ経営者必見の本音対談。
編集者として数々のベストセラーを生み出してきた箕輪厚介氏。最近2〜3か月「うつ状態」だったと振り返る。
「大吉とか、そういうことを言いすぎてた頃は、多分疲れてたんだと思う。稼働とか、精神世界に逃げ込んでた。神社に毎日行ったり、散歩したりしていた」
そこから抜け出したきっかけは、意外にも「体力」だったという。枕を変え、サプリを飲み始めたら、すべてが変わった。
「やっぱり堀江さんが言ってることは正しい。体力なんだ。体力が弱った時に占いとかスピリチュアルに寄っていく。朝起きた瞬間から元気だったら、大殺界とか言われても気にならない」
20代初期ほどの野心は減ったというが、「燃えたぎる闘志」がなくなったわけではない。悩み続けることそのものが仕事になっている、というのが現在地だ。
箕輪氏は、自分が「編集者」というより「著者」になってしまったと語る。
「自分の方が壮絶だったりし始めるのよ、どっかの時点で。面白い生き方の人に感動して本を作りたいと思うのが編集者だけど、『俺の方が火星でね』『俺の方がどん底知ってね』と思ってしまう。そうすると本が作れない」
編集者は「読者の側にとどまり、素人でい続けること」が重要だが、自分の経験値が上がりすぎると取材しても刺激を感じなくなる。
「ビジネス書はもう作れない。仕事がうまくなりたいとか、もう思わない。『なんとか力』『なんとかの思考』と言われても『はぁ』って思う」
最近興味があるのは、ガーシー氏や石川氏のように「人間そのもの」が壮絶な人物。冒険家や狩猟者の本に惹かれる一方で、AIやチャットGPTの本のオファーには全くワクワクしないという。
箕輪氏が運営する顧問サービスについても踏み込んだ話があった。月5万円が約30社、月30万円が25社ほど、さらに上位の80万円のプランも複数。1日に7社こなす日もあるという。
「ぶっちゃけ、訓練されたコンサルみたいな価値は提供してない。コーチングに近い。編集者として常にやっている『その人の核を見る』『なんでそれやってるんですか』という対話」
月1回1時間、明日の業務の前に話して事業の整理をする──そういう需要が想像以上にあったという。
「100万円のパフォーマンスを期待したい人には向いてない。対話するだけだから編集者の仕事に近い」
解約率は極めて低く、SaaSのチャーンレートよりも良いという。「お金、本作って遊ぶ、この3つをバランスよく回すことで色々なことを知る」というのが箕輪流のビジネスモデルだ。
話題はスタートアップ投資へ。箕輪氏は過去に投資をしていたが、思うところがあるという。
「むかつくんだよな、そいつらが旅行行ってたり飲みに行ってたり。ふざけんなよって思う。マジで命がけでやれよって思う」
投資資金は「貸したと思え」と語気を強める。
「スタートアップのやつら、マジで調子に乗らない方がいい。起業した時から5000万、1億のバリュエーションがある前提で始めるけど、勘違いしすぎ。世の中そんなに甘くない」
一方で、縮こまっていては事業は成功できないとも認める。「特別なテクノロジーや実物を作るのでなければ、そんなに金がいるのかという問題もある」と、現代のスタートアップが抱える矛盾を指摘した。
田端信太郎氏の個人アクティビスト活動を機に、上場の意味が改めて問い直されている。
「パブリックカンパニーになることって、アマちゃんでやっちゃダメなんだなって思った。どんな意見も株主として君臨する中では、本来的にはそうだもんね」
しかし箕輪氏は、もはや上場すること自体に懐疑的だ。
「上場企業なんて嫌だよね、あらゆる意味で。株を市場に開放してああいう人たちが入ってきて、大して儲からない。合理的に考えたら、今後どんどんやる意味なくなっていくと思う」
スマートIPOやダウンラウンドで上場し、成長もしないまま責任だけが続く──。それなら、サイバーエージェント藤田氏の盟友として知られる小澤氏が始めるという「M&Aを10倍に増やすVC」のように、買収によるエグジットを増やす方が時代に即しているのではないか、と語る。
「ちっちゃく上場して成長しないぐらいなら、君は素晴らしい種を作った、でっかいところに苗を移植した方がいい、また君は種から苗を作りなさい、の方がしっくりくる」
対談で大きな比重を占めたのが、個人アクティビストとして注目を集める田端信太郎氏の評価だ。
「最近、田端さん、天職見つけた感がある。あの人が今まで培ってきた知見と好みがバッチリはまっている。生き生きしているのが画面から伝わる」
株主として有価証券報告書を読み込み、ガバナンスを問う──昔から好きだったことが、今の時代の風潮とぴたりと噛み合った。
ただし、被指摘側の経営者の言い分にも一定の理を認める。
「田端さんの指摘がどんなに正しかろうが、株価ってそんなに何かを直接的に反映しない。短期で直接的に反映して経営したところで、上がるもんじゃない。意見を聞いて、信じるものをやらないと経営はできない」
メルカリの山田氏のような「腰を据えた対応」が正解で、ヤプリのような感情的な反応は「小物感がある」と一刀両断した。
最後に箕輪氏は、現在のスタートアップ業界の保守化を嘆く。
「BダッシュキャンプとかIVSって、絶対に他の人の名前を出さないじゃん。裏では『あいつやばいよね』とか言ってるくせに、表ではパブリックな登壇をして、夜はくそ飲み会して。そのちっちゃさってスタートアップっぽくない」
むしろ田端氏のような「異物」を呼んで公開プロレスをするくらいの度量こそ必要だ、と。
「もし今の時代に若き日のサイバーエージェント藤田さんがいたら、起業家になっていないかも。TikTokerになっているかもしれない。面白好きなやつを入れないと、大人の世界になりすぎてつまらない」
田端氏についても「会えば意外と調整するし、ネットほど怖い人ではない。味方にした方が絶対いい」と締めくくった。
うつ抜け体験から始まり、編集者としてのアイデンティティの揺らぎ、顧問業の実態、スタートアップ批評、田端信太郎評論まで──箕輪厚介氏の言葉は終始、本音と内省に貫かれていた。
「起業家が幸せに生きるには」という問いに対する明確な答えはない。だが、体力を整え、自分の本来の生き方をシュリンクさせず、社会的な意義と個人の楽しさのバランスを取り続ける──そのヒントが随所に散りばめられた対談となった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
