DMM.com亀山敬司会長が自身の20代を振り返り、若手経営者に向けたアドバイスを語る。露店から始まり飲食、ビデオレンタル、インターネットへと事業を変遷させた経験から導き出された「気をつけなくていい」「共同創業は絶対お勧めしない」「自分への投資が一番割がいい」という言葉の真意とは。
20代の経営者が意識すべきこと、気をつけるべきことは何か——。DMM.com会長の亀山敬司氏に問いかけると、開口一番こんな答えが返ってきた。
「別に気をつけなくていいかな。人だったら失敗してもいい。やり直しも効くし、とりあえずはやってみなはれって感じかな」
ただし借入については一言釘を刺す。個人保証が付くケースでは慎重さが必要だが、近年は個人保証なしでの借入も可能になってきており、リスクが小さくリターンしかない状況であれば挑戦すべきだという。
さらに亀山氏は、仮に起業がうまくいかず会社勤めに転じたとしても、その経験は無駄にならないと語る。
「勤めた時でも、少なくともその会社の社長の気持ちがちょっと分かるじゃない。気持ちが分かると、その会社が何を望んでるかも分かる。ある意味、出世しやすい。経営に近いような頭になるからね」
亀山氏は19歳から東京で露店商を3年間続け、その後石川に戻って麻雀荘やスナック、バーを経営。さらにビデオレンタル店へと事業を広げていった。
会計事務所に1〜2か月だけ勤めた経験もあるが、コピー取りをしている自分に「向いていない」と直感し、自分でやる道を選んだという。
20代の売上規模を尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「20代後半でビデオレンタルが2〜3億くらい。利益が出始めたのが30歳ぐらいかな。26歳の頃は利益で何百万くらいだったと思う」
露店時代の年商は1000万円にも満たず、原価を引いて年間100万円貯金できる程度。飲食店も「1日10万円売れれば大繁盛」の世界で、年商3000万円ほど。決して華々しい数字ではない。
「初めはそんなに儲からないよ。でもそんなもんだろ」
20代で経験した実店舗の飲食業は、亀山氏に重要な学びをもたらした。
「飲食で儲からないなっていうことを理解して、借金返したのが大変だったから。初期投資もいるし、現場に立ってやっとなんとかなる。誰かに任せて利益を取るみたいなことはできそうもない」
自分でフライパンを振り、シェーカーを振る——それは「経営というよりも自営業」だった。
本格的に経営らしくなったのはビデオレンタル時代、30歳前後で5店舗体制になってからだ。香川県の田舎で、TSUTAYAなどの大手競合が入ってこないエリアを集中的に固める戦略を取った。
「他に出ていっても地の利もないから戦えない。大手が相手にしない場所をとにかく守り抜く」
ビデオレンタル事業の魅力は税制面にもあった。仕入れたビデオは全て経費として落ちる一方、中古市場では1本5000円程度で売却できた。利益は出ないが資産が積み上がる構造である。
しかし時代がデジタルへと移行した瞬間、その資産は一夜にして無価値となった。
「資産になっていると思ったら、いつの間にか0になったっていう話。月曜日に買って、火曜日には八百屋みたいなもんだよね」
亀山氏は20代から年率130%前後の成長を続けてきた。その秘訣は、出た利益を次の事業へ投資し続けたことにある。
「ビデオレンタルで5000万の利益が出て、来年も6000万出ると分かれば、5000万は全部使っちゃえと。それを別の分野——インターネットのエンジニア採用やホームページ制作に回す」
すると税務上、投資分は経費となり利益は残らない。だが事業の中身はどんどん入れ替わり、規模は拡大していく。「こっちの黒字でこっちの赤字を埋める」スタイルだ。
そして重要なのは、この投資が常に黒字の範囲内で行われていたことだ。
「DMMはずっと黒字。そんな優秀な社員いないから、赤字出すと潰れちゃう。5000万の利益が出たら、5000万までは使えるという感覚」
20代当時、社員はほとんどおらず従業員50人のうちほとんどがアルバイトだった。地方都市での採用は決して難しくなかったという。
「コンビニ行くか、うちのビデオ屋来るかの選択だったから。基本ピアスは入れない、髪が真っ黒にできないやつは入れないってルール以外は、だいたい採用してた」
教育は現場で——「店に来いよ」「近くに住めよ」というところから始まる、人間力でのマネジメントだった。
ただし、ルールを破った者には厳しく対処した。
「金を盗んだら首にする。優秀でも外す。短期的には損害だけど、許されると思った周りが真似する方が怖い。長期的に見たら組織が持たない」
亀山氏自身、最初は同級生との共同経営からスタートしたが、約1年で解消している。その経験から導き出された結論は明快だ。
「共同創業は絶対お勧めしない。気持ちは分かるんだよ、信頼できる友達と一緒にやりたいって。でも自分がリーダーで君はサブだって決めておけばいい」
51対49でもいいから、どちらが意思決定者かを明確にする。意見が分かれた時に49が引く——そのルールがなければ会社は動かない。
「2人が代表ですっていうのはおかしくなる。社員が増えても、どっちの言うことを聞けばいいか分からない」
友人を採用すること自体は問題ないが、社内では明確な序列をつけるべきだという。むしろ20代では独裁的に進めるしかないと言い切る。
「印鑑制でやってたらスピードもないし決算も遅い。それで大きくなろうというのは無理がある」
近年のスタートアップ界隈では、資金調達額が経営者の評価軸になりがちだ。だが亀山氏の見方は冷静である。
「『10億調達しました、今年度赤字3億です』と聞くと、お金がなくならないように頑張れよっていうぐらいの話。地方の建築系で『こうやってます、利益出てます』と聞くと、すげえなと思う」
資金調達と利益創出は全く別物。どちらかと言えば、ちゃんと利益を出せる経営者の方が立派だというのが亀山氏の評価軸だ。
20代の現場感覚と、現在の経営。楽しさはどう変わったのか。
「20代は現場に近かったから、現場の楽しさがあった。1000円札を握った時の手触り感は、あの頃が一番だね。今はどちらかというと、楽しんでる社員を見ていく感じ。親みたいな、孫みたいなもんかな」
ただし、現場に口を出したくなる衝動を抑えるのには努力がいる。
「子育てと一緒で、親が手取り足取りやりすぎると本人たちが考えなくなる。現場離れしないとうざいじゃない」
最後に、20代経営者へのメッセージを尋ねた。
「20代の頃は、何でもいい。儲けるでもいいし、大きくするでもいいし、とりあえずやってみて、つまんないと思ったらやめればいい。本能の赴くままにやった方がいい」
そして、他社や他人への投資ではなく、自分への投資が最も効率的だと強調する。
「20代で他の会社に投資してる場合じゃない。手持ちの10万、100万しかない時に、それで他人に稼いでもらおうなんてギャンブルみたいなもん。それで本を読むでも、勉強でも、運動でも、自分でやってみる。自分に投資するのが一番割がいい」
失敗しても大丈夫。リスクを抑えながら、自分の本能に従って動き続けること——亀山会長の言葉は、シンプルだが揺るぎない経験則に裏打ちされていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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