中卒から最年少上場を果たしたアドウェイズ創業者・岡村陽久氏が、新たに挑むサウナ事業「オールドルーキーサウナ」。IT企業20年の知見を活かした業界変革と、200店舗構想、M&A戦略までを語り尽くす。
アドウェイズ創業者であり、オールドルーキーサウナ店長を務める岡村氏。今回はオールドルーキー渋谷道玄坂店のサウナ室内で、サウナビジネスの可能性についてインタビューを実施した。
岡村氏がサウナ事業を立ち上げた背景には、IT・DXの導入によってより良いサウナ体験を提供できるという確信があった。アドウェイズで20年間ITに携わってきた知見を活かし、業界に新風を吹き込むことが狙いだ。
興味深いのは、岡村氏自身が「サウナ好きが高じて」始めたわけではない点だ。「どちらかというと、サウナビジネスに興味を持ってからサウナにハマった」という。2022年2月の六本木本拠点オープンから2年。岡村氏が見据えるサウナ業界の現状と未来を聞いた。
オールドルーキーサウナには、サウナ事業専属の社員が一人もいない。マネジメントは外注で構成し、岡村氏自身が顧客対応の最前線に立つ。お問い合わせの電話も、ほぼ岡村氏本人が応対しているという。
アドウェイズ社長時代の楽しさは「人が育っていくこと」にあった。一方サウナでは、入店時と退店時の表情の変化に喜びを感じるという。社員の成長を見守る経営者から、お客の幸福を直接受け取る店長へ。岡村氏は「店長が一番面白い」と笑顔で語る。電話に出る際も毎回「店長です」と名乗ることを徹底している。
サウナビジネスは初期費用が「少なくとも1億円」かかる典型的なキャッシュ集約型事業だ。サウナブームで参入者は急増したが、現在は撤退の動きも出始めている。とくに個室サウナ業態では売却案件が散見されるという。
岡村氏によれば、買い手は今のところ有名企業ではなく個人がほとんど。そして個室サウナは「儲かっているところと、まったく儲かっていないところ」に二極化しているという。
注意すべきは、許可を取らずに開業しているケースが個室サウナには少なくないこと。後から保健所や消防の指導で営業停止となり、撤退コストの大きさから売却に流れる案件もある。「買う前に適法かどうかは必ずチェックすべき」と岡村氏は警鐘を鳴らす。
オールドルーキーサウナはこれまで、六本木店・渋谷店・新宿店・銀座店など中規模施設を展開してきた。しかし「中規模はとにかくお金がかかる」のが現実で、回収には相応の時間を要する。
同社のコンセプトは「熱々・キンキン・ガラガラ」。あえて客数を絞り、会員も積極的には集めず、ビジターも制限している。月いちで通いたくなる施設を目指す方針だが、当然ながら客数を絞れば収益性は限定される。
そこで次なる一手として打ち出すのが、「熱々・キンキン」のクオリティは保証しつつ、ガラガラは諦める小規模業態、いわば「オールドルーキーエコノミー」だ。初期費用は半分以下に抑え、価格も下げ、客数を増やすことで利益を出しやすくする。基本は直営で展開するが、エコノミー業態であればフランチャイズも検討の余地があるという。中規模の本流は「こだわりが強すぎて絶対揉める」ためフランチャイズには不向きと言い切る。
なぜ岡村氏は資金集約型のサウナ事業に挑戦できているのか。背景にはアドウェイズという上場企業の基盤がある。
「インターネット事業は正直キャッシュがいらない。だからキャッシュがどんどん増えていく一方で、上場企業としてそれを寝かせているのは良くない」。岡村氏はキャッシュを武器にできる事業を探した結果、サウナ事業にたどり着いたという。先にキャッシュが必要なサウナ事業と、キャッシュを生み続けるネット事業。グループとしての相性は「めちゃくちゃいい」。
アドウェイズは年1回〜2年に1回ペースでM&Aを実施している。判断基準は明確で、(1)海外進出時に既存企業と組むことでスピードを買う、(2)技術ある企業と組み既存事業を拡大する、(3)新規事業のスピードアップのため既に動いている会社と組む――の3つだ。「目的ありき」の戦略が貫かれている。
岡村氏が手掛けるもう一つの事業が「昭和デジタル」だ。中卒・高卒の若者に特化し、2〜3年の訓練を経てサイバーエージェントやリクルートのような有名IT企業に就職できる人材を育成する。
「私自身が16歳で社会に出て、夢を見られる職業に就くために訓練した経験がある。同じように夢を見られる若者を増やしたい」。経済合理性ではなく、岡村氏自身の原体験に根ざした事業だ。
岡村氏は中学卒業後、訪問販売の世界に飛び込んだ。そこから最年少上場まで駆け上がれた要因について、岡村氏は「若いうちに営業力が身についたから」と分析する。
「営業力と英語力は似ている。20歳を過ぎて英語を学ぼうとしても時間がかかるが、小学1年生が海外で1年生活すればペラペラになる。若いほど身につきやすい力がある」。16歳で営業の世界に入ったからこそ、営業力が深く根付き、結果が出始めて自信がつき、たまたま流行り始めたITで事業を立ち上げられた――という流れだ。
アドウェイズは営業組織のイメージが強いが、実は社員の半数が技術者。広告の最先端テクノロジーで業界を牽引してきた自負がある。一方サウナ業界は「ITがまったく浸透していない」。監視カメラからオペレーションまでデジタル化を進めているからこそ、社員ゼロでの運営が成立している。
オールドルーキーは、ファストサウナ業態の本流に加え、ホテル業態とカフェ業態にも展開している。
背景にあるのは「本当にゆっくりできるサウナとは何か」という問い。通常のサウナは時間制限があり、3セットを駆け足でこなす体験になりがちだ。それに対し、宿泊施設の客室内に本気のサウナと本気の水風呂を備えれば、時間に囚われずサウナを楽しめる。客室内のサウナは温度を自分で調整可能で、極上のリラックスが得られるという。
200店舗到達まで岡村氏は「店長」を続ける構えだ。ITも誰かを幸せにしているはずだが、その幸福は売上の数字越しにしか見えない。サウナでは「整っているお客」「ありがとうございましたと声をかけてくれるお客」を直接目にできる――それが今の岡村氏のやりがいだ。
中卒から最年少上場、そしてサウナ業界の変革者へ。岡村氏のキャリアは、若年期に磨いた営業力を起点に、IT、人材育成、サウナへと拡張し続けている。上場企業の潤沢なキャッシュを資金集約型ビジネスに振り向ける逆張り戦略、こだわりを貫くための直営主義、そしてエコノミー業態という次の一手。サウナ業界に対するM&Aや投資を検討する経営者にとっても、参入リスクと業態設計の両面で示唆に富む内容だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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