アドウェイズ創業者・岡村陽久氏が、新規事業として展開するサウナ・喫煙カフェ事業の裏側を語る。1日4〜5箱の愛煙家だからこそ陥った「好きすぎる事業」の難しさ、店舗の真上に住み込んで監視カメラを見続ける働き方、そして「金だけ持っていてもつまらない」と言い切る経営者像とは。
アドウェイズを創業し、東証プライム上場企業へと育て上げた岡村陽久氏。現在はサウナ施設「オールドルーキーサウナ」、喫煙特化型の「オールドルーキーカフェ」など、新規事業を次々と仕掛けている。グループ社員約1,000人を抱えながら、本人いわく「社内で一番仕事を楽しんでいる」。本記事では、岡村氏が語る新規事業の発想法、好きすぎる事業に潜む落とし穴、そして店舗近くに住み込んで現場に張り付く独特の働き方について紹介する。
オールドルーキーサウナとは別会社として運営されているのが、喫煙特化型の「オールドルーキーカフェ」だ。岡村氏自身、1日4〜5箱というヘビースモーカーで、「都内でもタバコを吸う量は3本の指に入ると思う」と語る。
事業着想のきっかけは、自身のタバコ難民経験だった。喫茶店の多くは禁煙、吸えても立ち席の喫煙ブームで「座ってゆっくり吸えない」。岡村氏が調べたところ、新宿駅周辺の喫茶店約400店のうち、座ってタバコが吸える店はわずか4店だったという。需要に対して供給がまったく追いついていない領域だった。
オールドルーキーカフェは喫煙者のみが利用する空間で、料金は30分50円。「最初はそれでやっていたら本当に何も儲からなかった」と笑いながら、現在は飲み物も自販機を中心に提供している。当初は持ち込み自由だったが、客側から「飲み物がほしい」という声を受けて変更したという。
好調そうに見える喫煙カフェだが、立ち上がりは想像以上に苦しかった。新宿の店舗は2階に位置し、しかも「タバコが吸える」という特化点をどう知ってもらうかが課題だった。
「サウナなら『どこかいいサウナないかな』と検索してくれるんですけど、わざわざタバコを吸えるカフェを検索する人っていないんですよね。指名度を上げていくまでに、すごく時間がかかった」
岡村氏が明かしたのは、ニッチ事業特有の認知獲得の難しさだ。サウナのように能動的に検索される業態と異なり、喫煙特化カフェは「そもそも探されない」。ようやく最近黒字が見えてきたところだという。
この経験から岡村氏が導き出したのが、「好きすぎる事業はかえって危ない」という教訓だ。
オールドルーキーサウナは、岡村氏自身がサウナ事業者としては素人だったため、専門のプロデューサーや設計会社に任せて立ち上げた。「先入観なしにいろんな情報を集めて、適切な手が打てた」と振り返る。
ところがカフェに関しては、自分自身がヘビースモーカーであるがゆえに自信を持ちすぎた。「俺より吸ってるやつなんていないだろう、と。僕にとっていいものを作ってしまった結果、それを世の中で求めている人が思ったより少なかった」。
ビジネスにおいて当事者の感覚は強みであると同時に盲点にもなる。「自信があるほど気をつけないといけない。冷静な目で判断していかないとダメ」と岡村氏は語る。任せるべきところは専門家に任せる——ここに新規事業のバランス感覚が表れている。
岡村氏の働き方は、創業当初から現在までほぼ変わらない。
オールドルーキーサウナ六本木店をオープンした当初は、すぐに駆けつけられるよう近隣のカプセルホテル「南」に2か月間滞在。深夜清掃を5時ごろまで行い、そのままカプセルホテルで仮眠する生活だった。「2か月で体が痛くなってきて」、そこから渋谷店オープンまでの半年は店舗の目の前のホテルに切り替え、渋谷店ができるとそこに、新宿店ができると新宿にとワンルームを借り続けた。
現在も新宿店の真向かいに住んでいるため、店舗を24時間モニタリングできる。システム上の利用者数と実在人数の差が出ると、不正利用の疑いを察知してエレベーターで降りてくるタイミングに合わせて駆けつけ、その場で取り押さえる。
「うち、たぶん都内で一番治安がいいんじゃないか」と岡村氏。サウナが熱々で水風呂もキンキンの本格派仕様のため、サウナ好きしか集まらず、結果としてマナーが極めて良いユーザー層に絞られているという。
社員1,000人規模のグループを率いる岡村氏は、現在の自分の働き方をこう表現する。
「20年間、わりと人を見て仕事をしてきた。今はお客様と事業に向き合っていて、それが新鮮で楽しくてしょうがない。仕事というより、生きがいに近い」
そして象徴的な発言がこれだ。
「金だけ持っていて時間もあって何でもできる、と言うけど、すっごいつまらなそうな生活してると思う。情熱を捧げる事業があると、すごい楽しい。アドウェイズグループに今1,000人ぐらいいますけど、たぶん僕が一番仕事を楽しんでいる」
労働時間で見ても「どこまでが労働か分からないけれど、ほぼ24時間」。創業者として上場を経験したあとも、現場に密着し続ける——岡村氏が体現するのは、財務的成功の先に「夢中になれる事業」を持ち続けるという、新しい経営者の形である。
岡村氏の言葉から見えてくるのは、新規事業を成功させる3つの要点だ。1つ目は、自身の不便から発想すること。2つ目は、自分が「好きすぎる」領域こそ専門家に判断を委ねること。3つ目は、現場に物理的に近い場所に身を置き、データと肌感覚の両方で異変を捉えること。上場企業の創業者がワンルームから店舗の監視カメラを覗き続けるという姿は、経営者のあり方そのものへの問いを投げかけている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


2026/1/1

2025/11/3

2024/3/6

2025/9/25

2026/2/26

2025/8/18