20代経営者・川崎優馬氏が「川崎優馬1代で成り上がる」を人生のテーマに掲げ、DMM亀山敬司氏に問いかけた対談。バイアウトを経て次のステージに進む潮流への違和感、人材という資産の価値、M&A後に起こる「人間関係リセット症候群」まで、経営の本質を掘り下げる。
「私の今の人生のテーマは、川崎優馬1代で成り上がるということ。行けるところまでやりたい」——そう語るのは、経営者になってまだ2ヶ月だという川崎優馬氏。
川崎氏は全員が中卒・高卒という親族の中で育ち、たまたま勉強ができたことから良い大学・良い商社へと進んだ。しかし「もっといけるな」という思いから、自分で商売をやって大きくなりたいと独立を選んだという。
もともと建築家を志して大学に入ったが、「自分の理想とする建物を建てるには、建築士になるよりも資本家になった方が早い」と考え、商売の道へ転じた経歴を持つ。会社は利益が出ているものの、「上には上がいる。もっとすごい人たちがたくさんいるなと日々痛感している」と、さらに上を目指す意欲は強い。
川崎氏が問いかけたのは、DMM創業者・亀山敬司氏。「亀っちの部屋」ラジオを愛聴している川崎氏から見れば、亀山氏は「行けるところまで行った」存在だ。
ただし亀山氏自身は、「成り上がりたい」よりも「商売が好き」というタイプではないかと川崎氏は問う。これに対し亀山氏は次のように答えた。
「楽しくはやっていたけれど、やるからには大きいことをやりたいという気持ちはあった。無理はする気はなかったけれど、上がってみるところまで上がってみようとは思っていた。特に20代あたりはね」
無理せず「ぼちぼち上がる」を選んだ理由について、亀山氏は「成り上がりたいのは全然いい。成り上がってから、好きじゃなかったらやめればいいだけ」と気負わない姿勢を語った。
川崎氏が成り上がりの手段として意識しているのが、近年の同世代起業家に見られる「序盤にバイアウトを経験して、次のステップに行く」という潮流だ。
身近な例として、塚本氏が一度売却してまた起業したケースや、メルカリ創業者・山田氏の事業譲渡などを挙げ、「キャッシュを得て新しい全然違う事業を得るという選択肢もありだと考える人が増えている」と話す。
しかし亀山氏はこの潮流に違和感を示す。
「IPOだけじゃなくM&Aもありだよ、とは言うけれど、それが流行りというのはちょっと違和感がある。続けた方が成り上がりやすくない?」
ファイヤしたい人や休みたい人が売るのは理解できる。しかし「成り上がりたい人が売る」のはどういうことなのか——というのが亀山氏の疑問だ。
「仮にM&Aで売ったとしようか。10年分の利益くらいで売ったとして、その利益を使いながら別のビジネスをやる方がよくない?」
亀山氏は、売却して得たキャッシュよりも、社内に残る人材の方が次のチャレンジにつながると指摘する。
「社員が10人いたとして、その中で2〜3人信頼できる人がいれば新しいこともやらせられる。リセットするともったいないような気もするんだよ」
ビデオレンタルの頃に頑張ってくれた社員が、その後IT事業でも活躍してくれたから、ずっとやれてきた——という亀山氏自身の体験談も語られた。経営とは、自分がいなくても回るような人材を育て、組織を作っていく営みだ。その人材を「爆剤」として活用したほうが成り上がりは早い、というのが亀山氏の見立てだ。
川崎氏もこの指摘に納得感を示しつつ、「上のハードルにチャレンジしている時にすごく充実感を感じる。今の会社をそのまま伸ばしていくという道筋もありなんじゃないかと思った」と応じた。
対談には、別の経営者も参加。「成り上がりたいと思ったことはあまりないかもしれない。面白いことをしたい」と語るその経営者は、人が異動しない事業所で自分の好きなようにやりたいというオーナーシップ志向だ。
さらに、過去にM&Aを経験した際の苦い記憶も明かした。
「ロックアップが終わった瞬間に、担当していた社員3人がやめてしまった。逆の立場でもやめるなと思ったし、せっかく入ってくれたのに裏切ってしまった感覚が自分の中にあって、それは良くないなと思った」
そしてその経営者は、自身のスタンスをこう語る。
「いいものを作って世の中にインパクトを残すことが、そもそも会社の存在意義的なやりたいこと。それをより大きい規模でやるためにお金も必要だからビジネスモデルも組まなければいけないけれど、ビジネスすることが目的じゃない」
これを受けて亀山氏は、「俺はビジネスへのこだわりからいかないと、何がやりたいんだという感じ。ある意味、俺の方が不純なのかなと実は思っていた」と振り返った。
亀山氏の商売観は明快だ。
「安く買って高く売るのが商売の本質。それをやるのは経営者の責務だと思っていた」
しかしその次のフェーズが本当の経営だという。
「『安く買って高く売る』ことを誰かにやってもらう、というフェーズになるかどうか。それも商売だけど、経営じゃないような気がする。彼らが自分たちでできることでないと意味がない」
そんな亀山氏に「今後の目標は?」と尋ねると、答えはシンプルだった。
「あんまりないんだよね。やりたいビジネスが特にあるわけじゃないし、経営をやっていくということが一応楽しく目標にしているかな」
上場企業のように「2025年度までにいくら」「30年までに」といった数値目標を語ることはない。「ゆっくりやってこいよ」と周りが賑やかにビジネスをやっているのを見るのが楽しい——他者貢献的な感覚に変わってきたという。
対談の終盤、亀山氏が最近不思議に感じているという現象が話題に上がった。M&Aで売却した経営者と、その後音信不通になるケースが意外と多いというのだ。
「『また会うぜ』と言っていたのに、その後音信不通になる。申し訳なさを相手が感じているのか、会いにくいのか。最近2〜3人いたんだよね」
それは売却した経営者からすれば、それまでの5〜10年の人間関係を一度リセットしたということになる。亀山氏はこの「人間関係リセット症候群」が腑に落ちないと語る。
これに対しある参加者が「リセットする側の気持ちは分かる。そこにいたことすらなしにして、別の世界で頑張りたい。東京なんて本当に隣に行けば全然違う世界が広がっている」と解説。これがM&Aの心理的な側面の一つかもしれないと指摘した。
亀山氏は最後にこう締めくくった。
「俺は10代、20代、30代の知り合いを残しておきたい。お金以上に、そこの関係や歴史を残しておきたいというのが強い。人の人格は結局、歴史で作られると思う。過去に自分がやってきた、ずるいこともあったり優しいこともあったり、人との関係値の中でできる人間関係の中で喧嘩したり仲直りしたり笑ったり泣いたり、色々あって今の自分があるんだから、リセットしてもね」
「成り上がりたい」という野望、M&Aによる連続起業、そして人材と人間関係という資産——3者の経営観が交錯した本対談は、若手経営者にとって自身のキャリア戦略を考え直す視点を提供している。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
