英語コーチングサービス「プログリット」を創業6年で上場まで導いた岡田祥吾氏が、共同創業の経緯、テレビCMで1億円を溶かした失敗、メンターから学んだ経営の基礎、そして一点集中の哲学までを赤裸々に語る。これから起業を志す人へのメッセージが詰まったインタビュー。
株式会社プログリットの代表取締役社長・岡田祥吾氏は、英語コーチングサービスを軸に、シャドーイング特化アプリ「シャドウィング」、AI英会話アプリ「スピークバディ」、ディアトークの3つのアプリ事業を展開している。創業6年で上場を果たしたが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。
岡田氏は大阪大学卒業後、マッキンゼー(マッキンゼー・アンド・カンパニー)に入社。「3年ぐらいで起業したい」という思いを抱えながらビジネスアイデアを探していた。父親が大阪で専門商社を経営していたことから、自然と経営者を志していたという。
プログリット創業のきっかけは、岡田氏自身の英語コンプレックスだった。マッキンゼー在職中に1年間の留学プログラムに参加。そこで出会ったのが、現副社長となる人物だ。
「30人ぐらい集められた教室で、彼が教壇に立って『とにかくカンボジアの支援をするから、みんなよろしく』と言うんですよ。僕は英語を勉強しに来たのに、と思ったんですけど、もう『やる前提』なんですよね。その巻き込み力と、やり抜き力に共鳴しました」
副社長は元リクルートで営業経験3年。お互いに補強し合え、尊敬し合える関係性が、共同創業の決め手となった。
資本政策については、社長である岡田氏が67%、副社長が33%。「副社長が『社長が2/3以上持たないと会社はうまく経営できない』と提案してくれた」と振り返る。50:50を避けたことが、後の意思決定のスピードに寄与したという。
2016年、創業当時の英会話市場は約2,100億円。大手英会話スクールは存在していたが、岡田氏は「満足していない人が多い」という肌感覚を持っていた。
「週1回の英会話ももちろんいいんですけれども、週1回以外の時間がすごく重要。逆に言うと週6日、そこの時間の使い方が重要なんです」
そこで自学自習を支援するコーチング型サービスを設計。プロダクトを作るのではなく、サービスとして提供しながら不要な要素を削っていく手法でブラッシュアップを重ねた。創業初月から1日5,000円のFacebook広告で集客を開始し、初月から黒字化に成功している。
プログリットといえば、本田圭佑氏のCM起用で広く知られている。岡田氏は「本田圭佑さんは元々お客様なんです」と明かす。本田氏の知人を通じてサービスを利用し、約7年にわたり継続してくれた縁から、ブランドの顔としての協業に発展した。
プログリットの社名は「プロ(窃盗語)」と「グリット(やり抜く力)」を組み合わせた造語。本田氏は今も毎朝5時半からシャドーイングを続けており、「やり抜く力」を体現する存在として、ブランドと深く結びついている。
順調に見えた創業期だが、2年目に大きな失敗を経験する。1年目で1億円のキャッシュが手元に残り、岡田氏は「とにかく1億全部使おう」と決断。テレビCMや電車広告に投下したが、まったく当たらず、銀行口座は0になった。
「当時は社員も10〜15名に増えていて、月600万〜1,000万円は必要な状態。資金繰りには新しいお客さんを捕まえる必要がありました」
親戚を含めた個人からの借入リストまで作成しつつ、銀行を回り、最終的に保証協会付きで1億円を調達。岡田氏は個人保証も入れた。「もう一度戻ったら同じことをするかと言われれば絶対にやらないですけど、勉強にはなりました」と振り返る。
この経験から得た学びは、リスクテイクの基本姿勢を変えなかった。「分散投資していたら大金持ちには絶対なれない。基本は一点集中」という哲学は、上場後も維持されている。
創業3年目に売上17億円を達成。しかし岡田氏は「自分の感覚的には行きすぎだった」と感じていたという。前年7億円から急成長したが、感覚と実績の乖離を察知していた。
翌年は21億円まで伸びたものの成長率は鈍化、その次の年は19億円に減少。コロナ禍とも重なり、社内では離職者が増加した。バリューを刷新するなど、組織の再構築に2年間を費やしている。
創業半年後、エンジェル投資家として迎えたのが、書籍『兄弟本』で知られる滝本氏(竹本氏)だ。月1回1時間のミーティングで、滝本氏が一方的に話す内容をノートに取り、副社長と共に整理して翌月までに実行する——そのサイクルを2年間繰り返した。
「言われたことをそのままやってました。アホな部下みたいな感じで、『何したらいいですか』って聞いて」
岡田氏は「経営センスが特出しているとは思っていない」と自己分析する。だからこそ、ビジョナリーカンパニーのような名著を教科書として、自分の考えと大きく違わない限りそのまま実行する方針を貫いた。創業時に「英語コーチングはスケールしない」と多くの人から否定されたが、滝本氏だけは10分のプレゼンを聞いて「最高だ、絶対いける」と即断したという。
近年増えているYouTuber発の起業に対し、岡田氏は集客チャネルの観点で示唆を提供する。
「YouTubeやSNS集客はコスト利益率が高くて素晴らしいんですけど、スケールという観点では厳しい。再現可能な集客ツール——普通のマーケティングや営業——人やお金を増やせばどんどん拡大していく仕組みを作ることが大事です」
ビジネスパーソン向けに岡田氏が推奨する学習法は明快だ。留学であれば1日18時間英語に触れられるが、日本にいるなら1日3時間を高強度のシャドーイングに集中投下する。
「30分しかないなら、単語・シャドーイング・会話と分散させるのではなく、一点集中の方がいい」
この思想を体現したのがシャドーイング特化アプリ「シャドウ」。1日30分のシャドーイングと1分間の音声録音を、人が全て添削する設計だ。カジュアル層には振り切らず、「一定本気でやる」層に向き合う。
岡田氏自身は留学時、TOEIC500点から1年で英語環境に困らないレベルに到達。そこからさらに1年あれば、ディスカッションや交渉レベルに届くという。
最後に、これから起業する人へのメッセージとして、岡田氏は次のように語った。
「SNSやニュースを見て『こういう流れだからこれをやった方が良さそう』みたいなことを、基本的には全部無視してきたつもりなんです。だからこそガラパゴスじゃないですけど、世の中と違うことができた。9年やってると、それが差別化になっている」
滝本氏一人のアドバイスを除き、外部のノイズはほぼ無視。その判断を支えたのは、「2ヶ月30万円」という当時としては高額な英語サービスに、月2人でも申し込んでくれる小さな成功体験の積み重ねだったという。
「Facebook広告で3万円しか使っていないのに2人申し込んでくれた。だったら世の中に1万人、下手したら10万人いる可能性もあるな、と少しは思えた。それが4人になり、ちょっとずつ大きくなっていった」
世の中的な絶対値ではなく、自分の物差しでの「すごい」と思える小さな成功体験。それを起点に自信を積み上げていくことが、折れない事業を作るための起点になる——岡田氏の経営観が凝縮されたメッセージである。
プログリット岡田祥吾氏のストーリーから浮かび上がるのは、「一点集中」「教科書通りの実行」「小さな成功体験の積み重ね」という3つの軸だ。1億円をCMで溶かす派手な失敗も、売上が踊り場に入った2年間の苦しみも、すべて経営者としての判断軸を磨く糧となっている。世の中の流れに流されず、自分の感覚と一致する範囲でリスクを取り続ける——これから起業を志す人にとって、地に足の着いた指針となる体験談である。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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