DMM.com会長・亀山敬司氏が、結婚31年の経験から語る「仕事・家庭・個人」の時間配分と、恋から愛へと移行する夫婦関係の積み重ね方。経営者だからこそ必要な家庭という「思い通りにならない世界」の価値とは。
DMM.com会長・亀山敬司氏は、31歳で結婚するタイミングで人生の時間配分について自分なりのルールを決めたという。
「仕事と家庭と、個人的な1人旅や趣味、友達と遊ぶ時間。大体1/3ずつにしようかなというのが、結婚しようと思った時に考えたこと」
もっとも、ベンチャー経営者としてフルベットしたい気持ちもあり、結果的には仕事が50〜60%、家庭が20〜25%、個人の時間が20%程度に落ち着いたと振り返る。一般的なベンチャー経営者が仕事に没頭するなか、意識的に家庭と個人の時間を確保し続けてきたことが、長く続く家庭とビジネスの両立につながった。
亀山氏は結婚した翌年に子供が生まれたという。「結婚したらすぐ作ろうっていうイメージがあった」と語り、子供がいない結婚は「あえて結婚しなくてもどうせなら同棲でも良くない?」という感覚だったと明かす。
子供が生まれると生活は大きく変わる。独身時代は年に1度1ヶ月の旅に出ていたが、結婚後は4年に1回程度に減少。それでも完全にゼロにはせず、長期の単独行動を確保し続けた点が亀山流のバランス感覚だ。
インタビュー中、亀山氏は配信ドラマ「ファーストキス」を例に夫婦関係を語る場面があった。離婚寸前の夫婦が、ささやかな「ごめんね」「おはよう」「ハグ」といった日々の努力で関係を取り戻していくストーリーに共感したという。
「お互いに口を聞かなくなったり、目も合わせなくなったりして、だんだん離れていく。そうならないために、日々のちょっとした努力が大事」
恋は自然発生的に減っていくもの。だからこそ、その先を一緒に生きていくには意識的な積み重ねが必要だ、という考え方が滲む。
亀山氏は結婚生活の本質をこう表現する。
「一緒にいることでストレスがあって退屈だけど幸せな結婚を求めるか。ちょっと寂しくて孤独だけど自由を求めるか。その違いだけ」
そして自由を求めて刺激を求め続けた先に幸せがあるかと問われ、「自分が成長していく幸せはあると思う。会社が大きくなったとか。でも、誰かと若く幸せ、というのは少なくなる」と答える。
地獄には笑いがあるが、天国には微笑みしかない——という言葉を引きながら、刺激的な楽しさと、穏やかな幸せはイメージが違うのだと語った。
31歳で「家庭を守ろう」と覚悟を決めた亀山氏。それでも価値観の違いは30年経っても埋まらないという。
「30何年一緒にいても、合わないところは合わない。これをなんとか俺寄りにしようと思っていた時期もあったけど、無理だと思ったらすごく楽になった」
この感覚は、M&AにおけるPMI(買収後の統合)にも通じる。すべてを自分色に染めようとせず、相手を尊重して自治権を持ってもらう。お互いの価値観を変えなくても一緒にやっていける関係性が、長期の結婚生活を支えてきた。
男性は「ほっといてほしい」、女性は「気を使ってほしい」「共感してほしい」という違いも、夫婦生活から学んだことだという。「会社の中でも、女性社員に対して気づかなかったことが、奥さんから言われて『そういうものなんだね』とわかった」と、家庭が経営にも還元されている様子を語った。
亀山氏は、経営者にとって家庭が持つ意味についても独自の見解を示す。
「経営者って、なんだかんだ言ってもトップだから、最後はみんな言うことを聞いてくれる。でも家庭は思い通りにいかない。だから多くの経営者が『家庭より職場の方がストレスない』と言う」
しかし、その「思い通りにいかない世界」を持つことこそが、経営者の人間性を保つ就職体験のような役割を果たすのだという。社員側のストレスを、家庭で味わうことで経営者として身に染みてわかる。
インタビューの最後、亀山氏は若い世代の「コスパ・タイパ志向」に対してこう語った。
「結婚や子育てはコスパ悪いとか言うやつもいるけど、ま、悪いもんなんだよ。悪いけど、コスパ悪い・タイパ悪いことが、まあ幸せっぽいんじゃない?」
効率では測れない、なんとなく遠回りに見える時間の中にこそ、人生の正解が隠れているのかもしれない——亀山氏が語る人生のバランスの取り方は、合理性の先に何を求めるのかを問いかけている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
