チームエナジーを率いる中村氏に、2025年の事業構想、社員の当事者意識を引き出す合宿経営、そして経営者の自己鍛錬としての山登り・お遍路までを聞いた。500億円企業を築いた経営哲学と組織づくりの本質に迫るロングインタビュー。
チームエナジーを率いる中村氏のオフィスを訪問し、2025年の経営方針と組織づくりについて話を聞いた。同社は複数のカンパニーを抱えるグループ経営を行っており、今年は「固めの大型事業」と「これから生み出す事業」の双方に挑む年だという。
大型事業の柱の一つが、CCS(地下にCO2を貯蔵する事業)である。チームエナジー傘下のエネルギー会社、地熱発電会社、地熱の地下分析や掘削を行う会社、そしてCO2排出権を扱う会社の4社が連携し、国家が推奨する事業に取り組む構想だ。
もう一つの柱が「クローズドループ」と呼ばれる地熱発電方式である。地下2,000〜3,000mまで掘削し、横方向にも空洞を作って地中の熱で水を蒸気化し、地上で発電してまた地下に戻すという循環型の仕組みだ。中村氏は「これで地熱革命を起こしたい」と意気込みを語る。実際、2024年には日本最大規模の発電所の移動復活を手がけ、11月には岩手県でも掘削プロジェクトを実施したという。
もう一つの大きなテーマがグローバル展開だ。CO2排出権事業を中心に、まずアジアへの展開を進める。同時に、日本国内では「海外人材が日本に来て会社を作れば2年間ビザ不要」という新制度を活用し、世界から経営者人材を集める構想を描く。2025年に開催される大阪万博で来日する3,500万人の中にも、日本で起業を志す人材がいると見ている。
注目すべきは、チームエナジーが進める「コラボレーション戦略」だ。同社が出資比率49%以下に抑え、強みを持つパートナー企業や経営者と組み、チームエナジーのリソースを活用して事業を共同展開する。マジョリティを取らないこの方針について、中村氏はこう語る。
「うまくいっている勝ち組企業でも、一社で展開するにはエネルギー、人、お金が足りない。それをチームエナジーで補いながら、国内外問わず展開していく」
例えば、CO2排出権を日本中で生み出している傘下のバウル社では、海外展開のリソースが足りない部分を、中村氏の海外ネットワークで信頼できるパートナーと結びつけることで補完しているという。
多くの中小企業やスタートアップ経営者が直面する「事業計画が描けない」「描いても実態と乖離する」という悩みについて、中村氏は明快に答える。
「足し算の発想で計画を作ると、せいぜい現状維持か10%増にしかならない。エネルギーがかけても割れていくくらい」
そこで重要なのが「2倍」という発想だ。2倍に到達するには何が足りないのか――人材、資金、場所、事業――を紙に書き出し、自分の経験値の外側で発想する。フリーランスの活用、海外人材の登用、AIの活用など、世界には無数のアイデアが転がっている。
「一番大事なのは情熱です。そして高い目標を持つこと。低い目標はエネルギーがいらない」
中長期の志と目先の四半期計画を一致させる必要については「上場前の審査の時だけでいい」と一蹴し、まずは意思を固めることの重要性を強調した。中村氏自身、毎年「2倍」を掲げてきたが「行ったためしはない」と笑う。それでも続けるうちに、ふと達成する瞬間が来るのだという。
「目標は決めの問題で決める。できなかったら、自分の都合のいいように期間設定を変えればいい。明るくやっていれば、後付けで調整しても大体行く」
社員に当事者意識を持たせ、高い目標を共有するための具体策として、中村氏が挙げたのが「合宿」だ。チームエナジーは全国に合宿所を構え、合宿運営専門の会社まで設立しているほど、合宿経営に力を入れている。
ポイントは、5年後のビジョンを語る場と、目の前の数字を実現させる「実現ミーティング」を分けて運営することだ。実現ミーティングではエビデンスに基づき積み上げを議論し、ビジョン共有の場では「なぜ俺たちはこれをやりたいのか」を語り合う。組織やフェーズによって比重を変えながら、認識合わせと具体策決定の両輪を回していく。
ラフティングや山登りといった共通体験も、チームビルディングの手法として有効だという。
中村氏は、過去に自分が会議で95%を喋っていた時期があったと振り返る。
「演説の討論会みたいになっていた。『分かった分かった』とメンバーが返事するだけで、本当に理解しているのか、やる気になっているのか、他の方法はないのかは見えなかった」
そこから方針転換し、社員に喋らせる会議へと変えていった。考えなければ喋れないため、議論の中で社員の主体性が育つという。現在は進捗確認の会議はほとんど行わず、新規事業立ち上げや発想を広げる会議に時間を使っている。
会社数を現在の30数社から65社へと倍増させる目標も、こうした発想型の会議から生まれているという。
創業から20年近くは、いわゆるワンマンスタイルで経営を続けてきた。「自分でやった方が早い」と考え、大声で指示を飛ばし続けた結果、14年で売上10億円、その後5年で100億円を突破した。
転機は、組織が伸びる感覚を掴んだ時だった。
「自分が黙っている方が、なぜか組織がうまく回り始めた。腹立たしいくらいだったが、組織力でやっていく方がみんな生き生きしていた」
以降は「ここから先は皆さんにお願いします」と権限委譲を進め、自分は突破口やアイデアを求められた時にだけ頭脳を提供するスタイルに移行した。中村氏は「自分は折れない方がうまく回る」と語る。
組織マネジメントの具体策としては、キーエンスから学んだという「行動戦略は上が決める」原則を紹介。メンバー個人に「8時間をどう使うか」を考えさせるのではなく、上司が動き方を設計する。これにより、結果が出なかった際の責任所在が明確になり、属人的な「人間力頼み」を排して成功の科学を組織に蓄積できるという。
「社長だけは別。何をやるか自分で決めて、自分で動けないなら社長を辞めた方がいい」
中村氏は山登りを経営者の必須習慣と位置づけている。体力、判断力、仲間づくり、そして自然の中で自分を整える時間――これらすべてが経営に直結するという。56歳になった現在は「老いとの戦い」という意味合いも加わった。
「経営も山登りに似ている。道具がいるし、休憩のタイミングもあるし、全体の体力配分もある。経営者は山登りをやるべき」
体重が3kg増えただけでいびきや無呼吸につながり、心臓にも影響が及ぶ――そう実感したという。30〜40代の不摂生が50〜60代に響くからこそ、長期視点での体調管理が必要だと説く。「75歳で体力・財力すべてが絶好調」が中村氏の目標だ。
もう一つのライフワークがお遍路で、31歳から続けて現在6周目に入っている。第4日曜日に仲間と回る習慣で、1ヶ月を振り返るリズムを作っている。地域の人と交わり、寺ごとのストーリーを学ぶ中で「続いてきたものには深い意味がある」と感じるようになった。
中村氏は「使命」という言葉を「使う命」と捉え、自分の名前に込められた意味を何度も考えることを勧める。
「親が子に名前をつけるとき、こういう人生を送ってほしいというメッセージを込める。それを考え続けることで、社会からのメッセージが降りてくる感覚が生まれる」
中村氏自身の名前は「誠実をつかさどる」という意味を持つという。多くの会社を作る立場として、何を司るべきかを折に触れて考えるそうだ。
先祖から代々続くエネルギー、自然界の生態系における樹木の連鎖――そうした「自分以外のパワー」とつながる感覚を持つことで、経営者としての発想は広がるという。
インタビューの最後に、時間配分について尋ねた。家族との時間も含め、中村氏は「ずっと経営のことを考えている」と笑う。
「家族といる時も上の空。嫁さんの話も真摯に聞こうとは思うが、自分との戦い」
イマジネーションすること自体が仕事である――そう言い切る中村氏の姿勢に、500億円企業を築いた経営者の本質が垣間見えるインタビューとなった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
