おくりバント会長・高山洋平氏の1日に密着。年363日飲みに行き、映画・音楽・ラーメンすべてが仕事になる。「嫌なことはやらない」を貫く経営者が語る、仕事と遊びが混然一体となった生き方の哲学とは。
おくりバント会長・高山洋平氏。広告やCM制作を手がける同社で、代表から会長へと立場を移した今も、独自のスタイルで働き続けている。今回はそんな高山氏の1日に密着した。
高山氏の朝は、毎日通う行きつけの喫茶店から始まる。
「午前中はまず趣味を楽しむんですよ。音楽を聴いたり映画を観たり。広告屋だからインプットは絶対に必要なこと。しょうがないんです」
出社時間にも縛りはなく、11時を過ぎてオフィスに顔を出すこともあれば、そのまま喫茶店で漫画や本を読み続けることもある。一見ゆるやかだが、これも仕事の一部だという。
この日のスケジュールには、親会社アドウェイズ本社での打ち合わせが入っていた。目的のひとつは、長らく溜め込んできた領収書の提出だ。
「ゲシ(経理)に領収書を渡さなきゃいけないんだけど、結構遅れてるわけですよ。例によって。俺がこの経理作業ができないのは呪いなんだよ。仕方ない、本当に病的なんだもん」
手土産にトップスのチョコレートケーキを携え、アドウェイズへ。経理担当者からは「もう何年の付き合い?毎月言ってる」と本気で叱られる場面も。それでも高山氏は、できないことは無理にやらず、お世話してくれる人に頼る、というスタンスを崩さない。
「できないものはみんなに迷惑かかっちゃうから悪いじゃない。だから絶対やりたくない。やらない方がいいんだよ」
おくりバントでの高山氏の役割を尋ねると、こう返ってきた。
「営業とクリエイティブを考える。あとはDJとか、最近は中野の歌を歌ったり、毎月1回大阪でラジオを撮ったり。いろんな業をしてるわけですよ」
アパレルブランドのメインビジュアル制作の打ち合わせ、CM楽曲の打ち合わせ、ラーメン店「堀内」での「研修」(実態は食事)と、予定は次々に入っていく。身につけているネックレスは知人デザイナーによるオーダーメイドで、ペンダント部分は実はDJ用音源を入れたUSBメモリ。すでに5代目だという。
「これがないと外に出れない。恥ずかしくて。必須アイテムなんです」
高山氏のもうひとつの「仕事」が、夜の飲み歩きだ。
「一番俺の大切な仕事は、誰かと飲んでること。今年は12月の段階で、飲みに行ってない日が2日しかない。元旦と、4月に風邪を引いた1日。それ以外は毎日」
忘年会シーズンともなればDJの仕事も重なり、「飲みの繁忙期」となる。なぜそこまで飲み歩くのか。
「いろんな人の話を聞いたり、バーのマスターやミュージシャンから最先端の音楽を教えてもらえたりする。ある種勉強になるというか。言い訳なんだけど、事実そうなんです」
音楽、映画、ラーメン、そして飲み会。すべてがクリエイティブ制作のインプットとして仕事に還元される。仕事と遊びの境界がない生活が、年単位で続いている。
かつては1ヶ月で売上を一気に立てて3ヶ月休む、という働き方をしていた時期もあったという。だが今は違う。
「一発のドカンが辛いから、辛いことはやっぱり基本的にやらないんですよ、俺は。コンスタントに頑張る、コンスタントにゆるく」
この哲学は、嫉妬や比較からも自由でいるための姿勢にも通じる。
「人それぞれだから。何が大切かもいろんな人がいるし、そのうちの1人が自分。違う人だから比べる必要はない。比べてもしょうがないじゃん。楽しいか楽しくないか、幸せか幸せじゃないかは、それぞれだから」
経営者としてピンチに直面することはないのか。そう問うと、独特の処方箋が返ってきた。
「俺はそんな時に、モンゴルが攻めてきた元寇の、防人の気持ちを思い出すんですよ。半端ない大量の軍が攻めてくる。非常に怖いよね。それよりは全然マシじゃん。殺されはしないし」
去年計上し忘れた原価が発覚し、案件も切り替え時期で重なって「やばい、どうしよう」となった時も、まずは飲み、そして元寇を思い出して乗り切ったという。
「金って、持ってないとやじゃん。俺もよく真っ青になるから。何回もあるから、もう最近は何とも思わなくなった。経営者の中でいつもお金ないと思うんだけど、もう多分ランクで言えばトップ1%に入ってる。だから大したこと言えないんだけどね」
仕事観だけでなく、食生活にも独自の論理がある。罪悪感を抱かないかと尋ねると、こんな答えが。
「ラーメン次郎ってね、野菜なんだよ。上はもやしとキャベツで野菜じゃん。麺も小麦だから野菜。旨味調味料もハーブからできてるから野菜。豚も野菜を食ってるから野菜。全部野菜なんだよ。あれダイエット食」
3時に食べれば夜まで何も食べなくて済む、腹持ちの良さも魅力だという。
密着の最後、高山氏は自身の働き方をこう総括した。
「仕事と遊びと生活が一体化してるというか。映画を観てるのも、音楽を聴いてるのも、ラーメンを食べてるのも仕事だと思うし、また遊びでもある。好きなCMを撮ってるのも、もちろん仕事だけど楽しいから半分遊び。これは仕事、これはプライベート、ってなってない。全部混然一体、俺の中ではそういうもんなんですね」
この先は自宅に自転車で帰り、犬の散歩をしてから、また飲みに出かけるという。営業であり、勉強であり、楽しみでもある夜の街へ。
「現状に納得してますよ。仕事であり遊びであるっていうか。理解されにくいところもあるけど、自分の中ではそういうもんなんですね」
好きなことを仕事にする、ではなく、好きなことが仕事になっている。高山洋平氏の生き方は、シンプルでいて、簡単には真似できない凄みがあった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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