元TBSアナウンサーで起業家の国山ハセン氏が、DMM亀山敬司会長に事業相談。アメリカ進出の夢と現実、月400万の固定費、社員3人の引き抜き――。創業1年で見えてきた芸能人起業家の構造的な課題と、亀山氏が提示した「ジャパニーズドリーム」という新たな勝ち筋を語る。
出演者
亀山敬司
DMM.com 会長
国山ハセン
PIVOT 起業家/元アナウンサー
元TBSアナウンサーとして「news23」などを担当し、現在は独立して海外発信のメディア事業を手掛ける国山ハセン氏。DMM.com会長の亀山敬司氏に事業相談を持ちかけた。
国山氏は3年半前にTBSを退社し、ビジネスメディア「PIVOT」へ参画。昨年、グローバル進出を志してアメリカでビザを取得し、現地法人を登記。日本とアメリカを行き来しながら、海外の一次情報をYouTubeやSNSで発信している。
父方のルーツがイラクにあるという国山氏だが、日本生まれ日本育ち。英語は多少できるが、アラビア語はほぼ分からないという。
「日々いろんな人をインタビューする中で、海外で働きたい、活躍したいという気持ちが強くなった。Day1からアメリカのマーケットでやりたい」と国山氏は語る。
しかし、創業1年で国山氏が直面したのは厳しい現実だった。
設立直後、銀行から5,000万円を借入。テレビ局を退職してきたディレクター・プロデューサー級の人材を3人、年収1,000万円クラスで社員として雇用した。
「人件費だけでも3,000万を超えた」と国山氏。亀山氏は思わず「業務委託でいいじゃん」と漏らす。
しかも、立ち上げたチャンネルは2つ。日本のものを海外に発信するグローバルチャンネルと、海外の情報を日本に伝えるチャンネル。海外向けは編集も海外エディターに外注しており、1本あたりのコストも膨らんだ。
方向性の違いから離れるメンバーも出て、現在のチームは国山氏を含めて3人。先月ようやく単月黒字を達成したという段階だ。
亀山氏は国山氏の事業構造を一つずつ整理していく。
「まず、財布の中身を見る。固定費はいくらか。生活費、社員給与、家賃をすべて足すと月400万円」
国山氏のメイン収入は、依然としてアナウンサー出身としてのタレント業(ギャラ)。それが時間の半分を占め、残り半分を法人事業に充てている構造だ。
亀山氏は冷静に分析する。「もしフルで芸能活動に振れば、おそらく月1,000万円稼げる。だが現状は500万円。一方、法人事業は売上100万円に対して人件費・経費で1,000万円かかっている。つまり、芸能で稼いだ500万円を法人で吸われ、さらに900万円のマイナスだ」
「奥さんから見たら『あなた、何やってるの?』だよね」と亀山氏。国山氏も「実際そう言われています」と苦笑する。
「事業計画書、よく稟議通りましたよね」――亀山氏のひと言が場の空気を変えた。
国山氏の目標は「3年で売上3億円」。ビザの期限が3年であり、取得に400万円かけたコストを回収したいという思いもある。
しかし亀山氏は、現状のビジネスモデルでアメリカに行き続けることの非合理性を指摘する。
「アメリカに住んでる日本人をインタビューしても市場は小さい。逆にアメリカ人の最先端AIプレイヤーは、海外のビジネスインフルエンサーがやった方が早い」
そこで亀山氏が提示したのが、発想を180度変える戦略だった。
「日本にはまだ知られていない海外企業がたくさん日本進出したがっている。君の強みは日本での知名度と喋り、ピボット出身というブランド。これを使って、海外企業の日本進出をマッチングするプラットフォームになればいい」
つまり、「アメリカンドリーム」を追いかけるのではなく、海外企業の「ジャパニーズドリーム」を手助けする側に回るという発想転換だ。
「『俺がジャパニーズドリームを作ってやるぜ』って言えばいい。日本進出ならハセンに頼めば、パートナー探しから不動産、登記まで全部やってくれる――そういうポジションを取る」
亀山氏が描いた具体的なビジネスモデルはこうだ。
海外の進出支援機関やネットワークを通じ、日本進出を検討する企業を集めてYouTube番組に出演させる。視聴者は日本のトップ層――経営者、商社、不動産関係者など意思決定者。番組経由で問い合わせや商談が決まれば、出演料・紹介料が発生する。
さらに、不動産やバーチャルオフィス、登記サポートまで包括的に紹介できれば、外部パートナーからも手数料が発生する両面マッチングが成立する。
「お客さんから『日本でこういうマンション借りたい』と言われたら、両方絡める。これが商売だ」と亀山氏。
コンテンツ制作はミニマムに抑え、撮影クオリティよりも内容と営業力で勝負する。チャンネル登録者1万人と数は少なくても、「日本のトッププレイヤーが見ている」という質の高さを打ち出せば、企業案件単価は十分に取れるという戦略だ。
国山氏は「奄美大島ルーツの黒糖焼酎を、酒蔵とコラボしてプレミアム酒として海外展開したい」というアイデアも持ち出した。
亀山氏の答えは即座に「ダメ」。
「なんでダメですか?」と問う国山氏に、「それが売れるかどうか分からないから。何が好きかじゃなくて、何が儲かるかを考えないと」と一刀両断。
「好きだから日本酒を広めたい、というのは経営者の発想じゃない。趣味でやるならいいけど、奥さんから『あなた趣味やってる場合じゃない』って怒られるよ」
亀山氏は最後にこう総括した。
「キャラとして『え、なんでそんなん売れるんですか?』みたいなノリは、芸能界ではポジションが取れる。でも経営者では負けなきゃいけない」
タレント業として個人で稼ぐ力と、法人として事業を成立させる力は別物。芸能人起業家が陥りやすいのは、個人で稼げてしまうがゆえに「事業の現実」が見えにくくなることだという。
国山氏は「これからは『ちゃんとやろう』を会社のメンバーに伝える」と語り、ジャパニーズドリームを叶えるビジネスインフルエンサーを目指すと宣言。亀山氏のひと言ひと言が、芸能人起業家のみならず、すべての創業期経営者にとって示唆に富む対談となった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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