DMM.com会長・亀山敬司氏が語るビジネス成功の鉄則は「業種×時期×人材」。30年前のブックオフ型事業の失敗、太陽光事業での逆転劇、そしてスタートアップが選ぶべき土俵まで、自身の経験を交えて語った経営論をまとめる。
DMM.com会長の亀山敬司氏は、ビジネスが成功するかどうかは「業種×時期×人材」の3要素がすべて噛み合うかで決まると語る。DMMの数多くの事業のうち、現在まで生き残っているのも、この3つがうまくはまったものだけ。逆に、どれか一つでも欠ければ事業は立ち行かなくなり、これまでにも撤退したものがいくつもあったという。
「うまくいっているのは、うまくはまったものが残っているという感じ。やっぱりどこかが噛み合わなくてやめた事業もいっぱいある」と亀山氏は振り返る。
3要素のうち「時期」のずれを象徴するのが、亀山氏が20代の頃に挑戦した中古本店だ。今から約30年前、まだ古本屋といえば紐でくくった本を山積みにする店が主流だった時代に、亀山氏は中古本を綺麗に並べ、1冊いくらと値付けし、CDやDVDも扱う店舗を出した。
のちにブックオフが急成長させたのとほぼ同じビジネスモデルだが、当時はまだ世の中に受け入れられず、「夜中なんか意味わからない」「こんなもの」と一蹴された。資金力もなく、わずか1年で撤退に追い込まれたという。
「発想は良かったかもしれない。でも早すぎた。ビジネスマンは先読みすればいいって話じゃない。せいぜい5年以内に来ないと、資金力的に持たない」
10年先の未来に投資できるのは資金体力のある大企業だけで、小さな会社の場合は1年以内に来てくれないと潰れる——これが時期を読むことの難しさだという。Web3、メタバース、遺伝子ビジネスなども同様で、「いつか来る」と分かっていても、自分の財布と体力でその時期を待ちきれるかが勝負を分ける。
亀山氏が早期に成功したビデオレンタル事業は、ブックオフ型の挑戦と並行して走らせていたものだった。ビデオレンタルが成り立ったのは、それが「ローカル商売」だったからだという。
全国制覇を目指すのではなく、小さな商圏で100%のシェアを取れば利益になる。隣町まで行くと勝ち目はないが、狭い地域では十分戦えた。市場全体で見れば0.1%程度のシェアでも、その狭い地域の中ではほぼ独占——そういう商売だったから生き残れた。
ところがインターネット時代のビジネスはそうはいかない。「いきなり日本全国、あるいは世界全体で勝てるかという話になる。市場主をやるのは結構大変」と亀山氏は指摘する。
人材・チームの重要性を示す例として亀山氏が挙げたのが、就活ネットを買収して始めた終活系メディア事業だ。メディアで集めたユーザーに葬儀社や墓を紹介するモデルで、ビジネス自体は悪くなかったが、十分な成果を出せなかった。
「ユーザーを集めるマーケティングや、葬儀社の手配といった泥くさい営業がうまくやれなかった。モデルは悪くないんだろうけど、実現できなかった」
買収時はマーケティングが得意なチームだったが、泥くさい営業ができる人材が不足していた。後から営業人材を入れても、うまく混ざらなかったという。マーケティングと現場の営業力、その両方を兼ね備えたチームでなければビジネスは回らない。
対照的に、組織力で成功した代表例が太陽光発電事業だ。現在、DMMの利益の約4分の1を稼ぐ柱に育っており、社員数100〜200人ほどで動かしている。
事業内容は3年ほどかけて発電所を開発し、たとえば100億円で建てた発電所を120億円で商社などに売却するというもの。亀山氏は「目新しいかというと、普通の仕事」と表現する。立ち上げ当初は孫正義氏のテレビ番組を見て発想したという、家庭用パネルの設置とシェアモデルを試したが、これは全くうまくいかなかった。
買い取り価格は当初40円から年々下がっており、市場環境としても追い風が吹いているわけではない。それでも事業が伸び続けているのは、現場の経営力によるところが大きいという。
「モデルは何も変わらないんだけど、現場の力だけ。経営力1点でそんなに伸びるんだ、と希望が湧いた」
実際、4代目あたりのリーダーで軌道に乗ったといい、試行錯誤を許容する組織運営が結果的に長期的な成長を生んだ。亀山氏自身も途中からほとんどタッチせず、メンバーが自走する形で利益を伸ばしていった。
亀山氏は、スタートアップに「経営力」を求めるのは難しいと指摘する。経営力とは、信用を守り、資金繰りをつけ、コストを5%抑えて効率を2〜3%上げるといった地味な積み重ねの上に成り立つもの。世の中の大手企業や金融機関、映画会社などは、こうした地味な仕事を着実にこなしている。
だからこそスタートアップが既存の大企業と同じ土俵——たとえば建設業、運輸業、物流業——で勝負をしても勝ち目はない。資金も人材も劣るからだ。
「ITで物を運びますとか、AIでこういった効率上げますという新しいものを絡めなければ、おっさんたちとの戦いに勝てない」
みんながやっていない、かつマーケットがある領域を選ぶことが、スタートアップの生存戦略だという。
業種・時期・人材という3要素のうち、「人材」と一口に言っても種類があるという亀山氏の指摘は示唆に富む。事業をゼロから作る起業家人材と、出来上がった事業を運営する経営人材は別物。スタートアップは斬新な発想で立ち上がるが、その後事業を育てるフェーズに入ると、地味な経営力が問われる。
ブックオフ型事業の失敗が、結果的に「失敗して当たり前の事業は手を出さない」という判断軸を作り、太陽光事業のような地に足のついた事業の成功につながった——亀山氏の語る成功大鉄則は、自身の試行錯誤の積み重ねから導かれたものだった。
ビジネスの成否は、業種・時期・人材の3つすべてが噛み合うかにかかる。アイディアだけでは事業は潰れる。早すぎても遅すぎてもダメで、自分たちの資金体力に見合った時期を選ぶ。そして、マーケティングだけでも営業力だけでもなく、両方を備えた組織で泥くさい仕事をやり切れるかが、最終的な勝敗を分ける。
スタートアップであれば、大企業と同じ土俵で戦わず、新しい技術や仕組みを絡めた領域を選ぶこと。事業フェーズが進めば、起業家的発想だけでなく経営人材としての地味な積み重ねが問われるようになる。亀山氏の言葉は、これから事業を立ち上げる人にも、すでに事業を運営している経営者にも、改めて自分の足元を点検させる指針となるはずだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
