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メディアに出て成功した起業家はほぼいない――箕輪厚介が語る「個人上場」の落とし穴

2024/3/9
M&A CAMPチャンネル
M&A CAMPチャンネル運営局

編集者・箕輪厚介氏が、若手起業家とメディアの距離感について本音で語る。本がベストセラーになり、テレビのレギュラーコメンテーターになる――そんな「個人上場」の状態に陥った起業家がなぜ本業で勝てなくなるのか。承認欲求、踊り場問題、そして文春的なるものとの付き合い方まで踏み込んだ対談。

メディア露出は本業の足を引っ張るのか


本を出してスター化し、テレビのレギュラーコメンテーターにねじ込む――。編集者として数多くの起業家を世に送り出してきた箕輪厚介氏は、その経験を踏まえてこう断言する。「結論、出てうまくいっている人はほぼいない」。


理由はいくつもあるが、最も根本的なのは「本業に集中しないと勝てない」という当たり前の事実だ。事業で勝ち抜くには、地味で苦しい努力を積み重ねる必要がある。しかしメディアに出ることで、その努力を続けるエネルギーが奪われていく。


「個人上場」という罠


箕輪氏が以前から指摘しているのが「個人上場」という現象だ。会社が上場する前に、本人がベストセラー作家やコメンテーターとしての地位を獲得してしまう状態を指す。


本がベストセラーになる。テレビのレギュラーが決まる。それなりの注目度と、会社に入れず個人で受け取れる収入が手に入る。「そこそこ好きに勝手に生きれるぐらいの金が入ってきた時、砂を噛むような努力ができるかつったらできなくなる」。


そもそも起業家がリスクを取って事業を立ち上げる動機の一部には、自己承認欲求や「モテたい」「有名になりたい」といった感情がある。その欲求が個人活動で半分満たされてしまえば、人事の揉め事のような面倒な経営課題に向き合うのが億劫になる。任せて逃げたくなる。それは構造的に避けがたい力学だという。


何を目指すかで答えは変わる


とはいえ、箕輪氏自身は本業100%に振り切ることをよしとはしない。「俺だって、ベストセラーを出すことだけに100ある力の100を使っていれば、もっとベストセラーは出ると思う。ただ俺は本を売るために生まれてきたわけじゃない」。


サウナでもラーメンでもYouTubeでも、自分が楽しいことで周りを楽しませる。それが人生の充実であり、力を分散させる選択肢があっていい。起業家にも同じ理屈は当てはまる。事業で中途半端に成功するより、テレビや本を通じて多くの人に憧れを与え、前向きな人を増やすほうが社会的インパクトが大きい場合もある。


ただし注意点もある。「資金調達していたら責任が生じる。勝手に自分のやりたいところにシフトチェンジしてんじゃねえよっていう投資家の気持ちはある」。投資家の金で動いている以上は本業優先、自分の金でやっているなら自由――その線引きは押さえておくべきだという。


「踊り場問題」と再起のメカニズム


メディアに出て中途半端に有名になると、多くの起業家は「もういいや」と止まってしまう。これ以上行くと文春に狙われる。これ以上の登攀は面倒くさい。箕輪氏はこれを「踊り場問題」と呼ぶ。


だが人間は勝つともっと勝ちたくなる生き物でもある。何かのきっかけでとんでもない時代の波が来れば、また夢中になって登り出す。「レールにもう1回乗ったら、自然と楽しくなっていくものだから」。一度の踊り場は終着点ではなく、次の波を待つ休憩所にすぎない。


若新雄純氏への評価とパブリックの仮面論


対談の冒頭では、メディアでバッシングを受けていた若新雄純氏についても触れられた。箕輪氏は「めちゃめちゃ連絡を取っている」「本当にいい人」と擁護する。


その上で、世間の感覚も理解できると語る。テレビに出まくり、国の事業や教育に携わっている人物に対しては「法的には問題なくても、人としてどうなのか」という視線が必ず向く。だから「教育やテレビ、お茶の間や若い人向けのことはやらないほうがいい」というのは筋が通っている、と。


人間は誰しも「社会という仮面」を被って生きている。仮面の厚さは人によって違うが、被らないと生きていけない。週刊誌に暴かれるというのは、逆に言えば「仮面を脱ぎ捨てて生きられる資格を得た」とも解釈できる。箕輪氏自身、Facebookで「そろそろテレビに出ませんか」と誘われても断り続けているという。社会という仮面を一切被らない人間がパブリックに出ても意味がない、という見立てだ。


文春的なるもののカジュアル化


対談の終盤では、メディアと社会の関係性が変質しつつあるという論点に話が及ぶ。SNSの匿名アカウントが「文春化」し、一般のサラリーマンまでが暴露と批判の対象になりつつある。


箕輪氏はこの状況に逆説的な希望を見出している。人間誰しも薄皮一枚めくればロクでもない。ならば文春が「この人はこういう人ですよ」と暴いても、「みんなそうじゃん」と返せる地点に社会が到達するかもしれない。「全員が若新さんであり、全員が文春である」という世界観だ。


結局のところ、SNSも週刊誌も、人々のルサンチマン解消をビジネスモデルにしている――そう冷静に構造を捉えた上で、その上で自分はどう乗っかるのかを選択する。それが起業家とメディアの賢い距離の取り方だと、対談は締めくくられた。


まとめ


本対談から浮かび上がる示唆は明快だ。メディア露出には個人上場のリスクがあり、本業集中の機会費用は想像以上に大きい。一方で、何のために起業したのかという目的次第では、メディアを通じた社会的影響力の拡大も正当な選択肢になり得る。重要なのは、自分が誰の金で事業をやっており、何を実現したいのかを自覚することだ。踊り場で止まるのも、再び波に乗るのも自由。ただし選んでいるという意識を持つこと――それが、メディアに飲み込まれないための最低条件である。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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目次

  1. 1.メディア露出は本業の足を引っ張るのか
  2. 2.「個人上場」という罠
  3. 3.何を目指すかで答えは変わる
  4. 4.「踊り場問題」と再起のメカニズム
  5. 5.若新雄純氏への評価とパブリックの仮面論
  6. 6.文春的なるもののカジュアル化
  7. 7.まとめ
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