「頭がおかしいやつ」こそ突き抜ける経営者になる──ピカソの言葉「内なる衝動」をキーワードに、起業家に求められる狂気と素直さ、AI時代の自己分析の重要性まで、生成AI活用普及協会とのコラボ企画でサワさんが語った経営論をまとめました。
生成AI活用普及協会とのコラボ企画として行われた本対談では、「突き抜ける経営者の条件」をテーマにサワさんへ話を聞いた。数多くの起業家を見てきたサワさんが、伸びる経営者の特徴を一言でまとめたのは、意外な表現だった。
「頭がおかしいやつ。これは絶対必須なんですよ」
サワさんによれば、「こいつは頭おかしい」と思えるような人物は、諦めない。「無理だ」「常識的に考えて」といった発想がそもそも欠落しているため、ひたすら前に進んでいく。少々の障害をものともせず、逆風があるとむしろ喜ぶ。そうした人物こそが結果的に突き抜けていくという。
サワさんが繰り返し語るキーワードが「内なる衝動」だ。これはピカソの言葉とされるもので、内側から湧き上がってくる衝動に馬鹿正直で、それを抑えようとしない人たちは、へこたれずに成功するまでやり続けるという。
この内なる衝動は、後天的にインストールされる人もいれば、先天的に持っている人もおり、そのパターンはさまざまだ。「行かれてるな」と感じる瞬間として、サワさんは「一見すると効率が悪いことをひたすらやる」「とんでもないリスクがあるにも関わらず行動してしまう」といった行動パターンを挙げる。
内なる衝動に従って行動する経営者の象徴的なエピソードとして、サワさんはスタイリー社長の山口さんの話を紹介した。
山口さんは英語が話せるわけでも、テクノロジーに精通しているわけでもない状態で、MIT(マサチューセッツ工科大学)に「物理的に行く」という行動に出る。受付で「入れてください」と直訴し、当然ながら門前払いされそうになりながらも、しつこく通い続けた。やがて「通常の入学ではないが、半年間は授業を受けられる」というルートを見つけ、それを2年半続けたという。
さらに驚くべきは、その間の生活だ。家もお金もない中、学内のミートアップやパーティーに紛れ込んで食事を取り、ガードマンと仲良くなって鍵を借り、学内の休憩室で寝泊まりしていたというのだ。
なぜそこまでしてMITに行きたかったのか。山口さんの目標は「人間の超能力を目覚めさせる」こと。その手段としてテクノロジーが必要であり、だから最高峰で学ばなければならなかった。ロジカルかどうかは関係ない。「飛び抜けていて先に行動してしまう」のが、突き抜ける経営者の共通点だとサワさんは語る。
突き抜ける経営者に必要なもう一つの要素は、自分ができないことを無理して自分でやらないこと。任せるというより「巻き込む」という発想だ。
「こいつ、ほっといたらやばい」と感じさせる人物のもとには、サポートしようとする人が自然と集まってくる。最初の段階で重要なのは、どれだけ狂っているかというトップクラリティ(突き抜けた明快さ)であり、その狂気に魅力を感じる人間に出会えるかどうかが鍵を握る。
では、内なる衝動を持たない人は経営者として失格なのか。サワさんはそうではないと言う。
「内なる衝動に身を任せて、ほっといたら折れちゃうような人をサポートする」という役回りも非常に重要だからだ。サワさん自身、自分で事業を興しているわけではない。狂った起業家たちの失敗リスクを最小化し、失敗後のリカバリーを最速にするフェーズでお手伝いするのが現在の自分の役割だと自己分析している。
それでも、自分の内なる衝動を見つけたい人へ、サワさんはひとつのヒントを示す。それは「自分が『ありがとう』と言われる回数を数える」こと。言葉でありがとうと言われる場面、そう感じさせる反応をもらった瞬間を棚卸ししていけば、それが自分の強みであり、他者に貢献できる能力である可能性が高い。あとはそれを最大化していけばいい、というシンプルな提案だ。
起業の初期、ブーストしていく時期にはクレイジーであることが必須だ。しかし段階を踏んでいくと、仕組み化して回していくフェーズが必ず訪れる。そこで求められる筋肉は変わってくる。
サワさんは、フェーズが変わったタイミングで別の人物にバトンパスする選択肢を肯定する。アメリカのビッグテック企業を見ても、ずっと同じ人物がトップで居続ける会社は減ってきている。ビル・ゲイツも途中で経営をバトンタッチしたし、Googleも創業者がCEOを離れて別の人物に渡した例がある。
自分でフェーズに合わせて変化できる人はそれをやればいい。だが、最初のブーストや内なる衝動に身を任せて何かを作り出すのが得意なら、出来上がった時点で手放して次に行くというやり方も十分にありえる。
サワさん自身はADHDの特性を持ち、常に気が散ってしまう。Aを3分考えたらBに行き、Cに行き、またAに戻る──そうした思考の方が心地よく、落ち着いて考えられるという。起業家やクリエイターにADHD特性の人は多く、生活スタイルもそれに合わせて工夫されている。
そのうえでサワさんが大事にしているのが「相手に期待させない」こと。たとえば事務局を通さずSNSのDMでアポを取ろうとする人がいた場合、たとえスケジュールが空いていても「それは嘘だと思ってください」と伝える。待ち合わせ場所を外に決めて勝手に来ようとする相手にも、「僕が来ると思うなよ」と事前にきちんと伝えるのだという。
突き抜ける経営者にとって、もう一つ非常に重要なポイントが「学べる人」であることだ。生徒役になれるかどうか、出来が悪くてもとりあえず言うことを聞けるかどうか。
何もかも自分でやる必要はないが、最低限のところはちゃんと学んで押さえる。会計やバックオフィスといった、注意が向きにくい領域こそ、その素直さが効いてくる。プライドばかり高くて人から教われない状態は、相当なリスクだとサワさんは指摘する。
人に仕事を発注するときの基準としてサワさんが挙げるのは、まず一度任せてみて結果で判断するというスタイル。任せたら口を出さず、すべてお任せにしたうえで、戻ってきたものを見て次も頼むかを決める。これがミスマッチを最も少なくする方法だという。
一方で「この人とは時間を一緒に過ごせない」と直感的に感じたなら、その感覚は重視すべきだとも語る。サワさんはこれを「靴の中に小石が入っている状態」と表現する。最初は気持ち悪い程度でも、長く続くと大きな怪我につながりかねない。違和感を覚えたら一度リリースする判断が必要だ。
お願いするときの姿勢についても明確だ。相手の時間を奪うことに申し訳なさを感じるよりも、「自分がありがとうと言う機会を提供している」と捉える。ビジネスで頼む際は金払いをよくし、なんなら先払いするくらいの覚悟で頼む。「お友達価格」も、値引いてもらうものではなく、サービス提供側が決めること。お友達に払うなら先払いの方がフェアだという考え方を貫く。
サワさんは創業期のビジョナル(社員6人時代)からスタートアップの成長を間近で観察してきた経験を持つ。組織が大きくなる過程で求められるのはマネジメントという言葉に集約される様々な調整、問題のリカバリーといった要素だ。
そしてビジネスにはゴールがない。常に続いていくものであり、フェーズごとにやるべきことも増えていく。だからこそビジョンが重要であり、それがなければ組織は迷走しやすい。同じ方向を見て頑張る原動力として、ビジョンへのコミットメントが結果的に大きな力になる。
サワさんはAIをどう活用しているのか。基本は「わからないことがあったら聞く」というシンプルな使い方だ。ChatGPT、Gemini、Claude 3など、聞けば必ず何かを返してくれる話し相手として、生成AIは非常にありがたい存在だという。
画像生成AIも、何かを出力させると想定外のアウトプットが返ってきて、発想が広がる。「その発想は無かった」と気づかされる瞬間が、思考の幅を広げてくれる。
AIに正しい答えを求めすぎるのではなく、自分の思考を広げる相棒として付き合うのが、現状もっとも有効な向き合い方だとサワさんは語る。
AIに全てを任せて、確実に当たるサービスをオペレーションさせることは技術的に可能になりつつある。しかし、それは面白くない、とサワさんは言い切る。
クリエイターの仕事はAIでなくなる部分もある。だが、何を残したいかは人間が決めればいい。難しく考えるのか、シンプルに自分のやりたいことの表現活動に振り切るのか──そこには本人の意思が問われる。
AIのリテラシーを上げることと、自分の意思や欲望を見つめ直して自己分析し続けること。この両方が、これからの時代を生きるうえで大事な軸になる。
お金の使い方についてサワさんが意識しているのは、「自分が幸せになることなら何でもいい」と割り切ること。自分が幸福を感じられるかが基準であり、自分の価値観に馬鹿正直に使うことがポイントだ。
他者の価値観や、他人との相対関係の中で使わざるを得ないお金は、たとえ金額が大きくても幸福度を上げにくい。サワさんは、気に入った人やプロジェクトのクラウドファンディングに大きめのお金を出すこともある。これはリターン目的ではなく、その人の面白い世界観に乗っかるためのチケットのような感覚だという。
ギャンブルはやらないが、面白いものにお金を使うことは惜しまない。結果的にそれが、また面白い仕事につながっていく。サワさんの生き方は、内なる衝動に馬鹿正直であることを、お金の使い方にまで一貫して反映していた。
突き抜ける経営者の条件として、サワさんが挙げたのは「頭がおかしい」と言われるほどの内なる衝動、そしてそれに馬鹿正直に従う姿勢だった。同時に、自分にその衝動が無い人にも、狂った起業家を支える役割や、「ありがとう」を起点に強みを見つける生き方が示された。
ブースト期と仕組み化期で必要な筋肉は変わる。バトンパスという選択肢もある。素直に学べることがリスクを下げ、ビジョンが組織の継続を支える。AIは思考の幅を広げる相棒であり、面白い部分は人間に残す。お金は自分の価値観に正直に使う。
一貫しているのは、自分の内側にある声に正直であること。それこそが、突き抜ける経営者にも、彼らを支える人にも共通する出発点なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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