DMM.com会長・亀山敬司氏がIVSで若手起業家の悩みに本音で回答。組織の任せ方、モチベーション、年上メンバーの採用、事業計画の重要性まで、63歳の経営者が語る等身大の起業論をまとめた。
IVS会場で開かれたセッションには、DMM.com会長の亀山敬司氏とアル株式会社CEOの大野泰敬氏が登壇。若手起業家からの相談に、亀山氏が独特の語り口で答えた。
冒頭、若手起業家から「亀山さんは『金を出すが口を出さない』ことで知られている」との質問が飛ぶ。これに対し亀山氏はあっさりと否定する。
「昔はもっと言ってたよ。だって金出して口出さないなんて、そんなことやってたらみんな働かない。やんちゃな焼き鳥屋ばっかりじゃない、口出さないと店来なかったり、開いてなかったりするわけだから」
初期の創業期は、商品を勝手に持っていく、看板の電気をつけない、トイレ掃除を忘れる、夜中に店員が床で寝ている——そんな現場に毎日口を出してきたという。
任せられる人材を育てる方法について、亀山氏は具体的な手順を語る。
店長候補に対して「看板は何時につける?」「給料はいくらがいい?」と、まず本人の意見を聞く。返ってきた答えに対して「それでいい」「ちょっと違う」と擦り合わせを繰り返していく。
「8割型、意見が合うようになったらもう任しても大丈夫。残り2割違ってもいい。2割は許容範囲で、ちょっとずれても店は何とかなる」
ここで亀山氏は重要な経営観を示す。自分がやれば100万稼げる仕事を、任せた相手は60〜80万しか稼げないかもしれない。それでも「いいと思っちゃダメ」ではなく、10人に任せれば自分の手数が増え、分け前も増える。
「現場も育つし、俺も豊かになる。なんて幸せなんでしょう」
今後やりたい事業について問われると、亀山氏は意外な答えを返した。
「今はもうないわけよ。50代ぐらいから。オンラインクリニックとかEVとか、若いやつがみんな持ってきて『これどうですか』って」
40代では23本の新規事業を手掛けて23本すべて外したという。「もう俺の企画力じゃ無理だと思った。かつてのクリエイターが絵を描けなくなるようなもの」と振り返る。
現在は事業内容を完全に理解しなくても、過去の実績を見て「1000万なら任せる」「10億なら預けてもいい」という判断をしているという。東京カレンダーなど「俺が新聞分なんで何が面白いのか分からない」案件でも、結果として10年稼いでくれることがある。
ビジネスを展開し続けるモチベーションを問われ、亀山氏は率直に答える。
「サービスが認められたら会社が認められたってことだし、認められたらモテるし、モテたらちやほやされるし、寂しい時は誰かが相手してくれる。老後に備えてるね、孤独な老後を過ごしたくない」
金・友達・家。「3つぐらい持ってると、もうめっちゃ幸せ。基本掛け算で、愛だけじゃ腹減るし、バランス」
そして、世の中の評価と自己満足のバランスについても言及した。
「世の中で成功者と言われてる人でも自殺しちゃう人もいる。みんなが幸せに見えても、本人からするとどれも足りなく見える。チャンネル登録者が10万人いても、来年9万、8万、7万と落ちていったら不幸になっちゃう。1000人のやつからすれば1万でも羨ましいのに」
世間の評価を受けながら自分も幸せだと思えるのが一番——という結論だった。
20代の頃、田舎で麻雀店、プールバー、ビデオレンタルを順に始めた経験談も語られた。
麻雀店は「ヤクザな商売」と言われ、おしゃれなプールバーは「素敵」と褒められ、ビデオレンタルは当初「裏ビデオでも貸してるのか」と陰口を叩かれた。しかし数年後、ゲオやTSUTAYAが伸びると「ファミリー向けのビジネス」として評価されるようになった。
「俺がやってることは同じなのに、けなされたり褒められたりする。世間の評価ってそういうもんなんだ」
採用に悩む若手起業家に対しては、PMF(プロダクトマーケットフィット)などの専門用語をたしなめた。
「そんなややこしいこと言わないで、『俺、お前とやりたいんだ、来いよ』みたいな。ワンピースの2、3人、初めの仲間集めるとかそういうフェーズ。経営の本読まなくていいから、ワンピースとか東京リベンジャーズとか『今日から俺は!!』読んどいた方が勉強になる」
「25歳に戻ったらどうするか」という問いに、亀山氏(63歳)は楽しそうに答えた。
「ラーメンの屋台引いて、外国人の来そうなとこで1杯3000円ぐらいでラーメン売ろうかな。ニューヨークなら5000円でも吹っかけて売っちゃおう」
さらに「道端でうんこ座りしてタバコ吸ってるやつを呼んで、『お前らもうダメだ、俺と一緒に屋台引こう』と言って京都や羽田空港の周りを回らせる」と、極めてアナログな構想を披露した。
一方、大野氏は「中学生に戻ったらAIでひたすらプロダクトを作る」と回答。世代と時代観の違いが浮き彫りになった。
太陽光発電事業を例に、亀山氏は組織力の重要性を語る。
「世の中はよくイノベーターとか0→1とか言われるけど、結果iPhoneみたいなものはどこも作り出す。最後の最後は組織力。日々の改善が毎年5%ずつ良くなる会社と、一向に変わらない会社の差」
中国製品が安かろう悪かろうと言われていたのに、毎年10%ずつ改善して追いついてきた例を挙げ、「世の中の社長の9割型は、起動に乗った事業をいかに毎年5〜10%伸ばすかが勝負」と語った。
メタバース事業を立ち上げようとする若手起業家が「結論としてはDMMの傘下に入れていただいて」と切り出すと、亀山氏は即座に断った。
その上で、本業(住宅政策)を続けながら稼いだ分を新規事業に投じる「自分の財布と相談する」姿勢の重要性を説いた。
「ディズニーランドやりたいけど金足りない、水族館ぐらいならできる——常に財布を見てるわけよ。5年後からこれだけ稼ぎます、5年間で2、3億いりますという絵ができるか」
セッションの終盤、稼ぐために最も大事なものは何かと問われ、亀山氏はこう締めくくった。
「勢いじゃなくて事業計画書くこと。考えなくても計算すること。俺みたいに『やっちゃえばいいんだ』と言ってたらバカだよ」
等身大のアドバイスは、登壇する大野氏も含め、若手起業家たちの心に深く刺さるセッションとなった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
