日本のお菓子やキャラクター雑貨を世界180カ国の個人ユーザーへ届けるサブスクボックスを運営する株式会社ICHIGO。創業者・近本社長に、自己資金経営で7事業を立ち上げた戦略と、3児の子育てと両立する時間の使い方を聞いた。
株式会社ICHIGO(イチゴ)は、日本のお菓子・キャラクター雑貨・化粧品などをオリジナルボックスに詰め合わせ、海外在住の個人ユーザーへ毎月配送するサブスクリプション型の越境ECを展開している。2015年の創業から9期目を迎え、現在は世界180カ国へ商品を届けている。社員はアルバイトを含めて約120名、そのうち約7割が外国人スタッフという、グローバルカラーの強い組織だ。
代表取締役の近本氏は元リクルートで美容媒体「ホットペッパービューティー」の営業・企画、新規EC事業を経験。フリーランスを経て2015年に共同創業者と株式会社ICHIGOを立ち上げた。今回はその経営スタイル、ブランド作り、そして3児の子育てと経営を両立する時間術を聞いた。
近本氏が起業テーマとして越境ECを選んだのは、リクルート時代に国内向け通販事業に携わった経験がきっかけだった。当時、訪日外国人観光客が急増しており「海外向けにECをやればチャンスがある」と感じたという。
ただし本人は純ジャパで留学経験もなく、英語も得意ではなかった。そのため「1人では難しい」と判断し、半年〜1年かけてパートナーを探し続け、共通の友人の紹介で出会った中国系インドネシア人(台湾・アメリカでの居住経験あり)と意気投合。共に半年後に創業した。
ビジネスモデルとして「サブスクボックス」を選んだのは、当時アメリカ国内で靴下・レシピ・ゲーム・髭剃りなど、あらゆる分野でサブスクボックスがブームになっていたためだ。アメリカは国土が広くECが盛んで、毎月自動的に商品が届くサブスクモデルが消費者に受け入れられていた。
「中国市場の方が越境ECとしては2倍ほど大きかったが、政治的・経済的リスクが高い」と判断しアメリカに絞り込んだ。結果として現在もお客様の70%がアメリカ在住者で占められている。
ICHIGOは外部資本を入れず、自己資金中心の堅実経営を貫いてきた。近本氏はフリーランス期間に2人で資金を貯め、創業後も売上が立ってから銀行借入で必要分のみ調達するスタイルを徹底している。
「ECは先にお客様から代金をいただいて売上が立つビジネス。売上が増えればコストもそれに比例して増えるシンプルなモデルなので、エクイティ調達は必要ないと考えていた」と近本氏は語る。
サブスクボックス事業のもう一つの強みは、会員数に応じて仕入れと梱包を計画化できる点だ。「同じものを詰めるだけなので梱包効率が高く、リスクの少ないEC」だという。業界水準で利益率は20〜30%、サブスクの場合はさらに高い水準が見込めるとのこと。
ICHIGOは現在7つの自社ブランドを展開している。お菓子を主力とするボックスから始まり、女性顧客が85%を占めることが分かった後は、ターゲット年齢層をずらしながらキャラクター雑貨・化粧品・和菓子(桜子)など、1年に1つほどのペースで横展開していった。
ブランド作りでは、必ずマーケティングチーム(全員外国人)と一緒に名前・ロゴ・コンセプトを決定する。「海外の方が日本を想起しやすく、発音しやすいか」「同じ名前のブランドが既にあるか」を、外国人スタッフに相談しながら詰めていく。
リリースまでの期間は約4〜5カ月。Webサイト・撮影・オリジナルパッケージの発注・仕入先の調整など、フィジカルなプロダクトに時間を要するためだ。
9期にわたる経営の中で最も苦労したのはコロナ禍だったという。受注は巣ごもり需要で大きく伸びた一方、メインで利用していた郵便局の国際配送が真っ先に止まり、「配送できる業者が一旦ゼロになった」。
対応策は、新規配送業者の急ピッチでの開拓と価格・納期交渉。同時に1日3,000件規模の問い合わせメールに返信し続け、約2〜3週間のストップを経て配送を再開した。お菓子は賞味期限があるため出荷時期をずらせず、選択肢は新規開拓しかなかったという。
近本氏は2018年に結婚、2019年に第一子を出産。現在は5歳・2歳・0歳の3児の母でもある。1日のスケジュールは、6時半起床・お弁当作り・8時過ぎに子供を送り出し・9時出社、6時前に保育園にお迎え、9時に子供が寝てから残務、12時就寝という流れ。
夫婦・両親・ベビーシッター・ハウスキーパーを組み合わせて「シフト表をパズルのように組む」スタイルでこなしている。掃除・洗濯などの家事は基本的に外注し、自分でしかできないこと以外は人に任せる方針だ。
「仕事と子供どちらが大事かと聞かれたら、私は子供だと思う。今しかできないことを一緒に楽しみたい」という想いから、6時以降はなるべく仕事を入れず、子供との時間を最優先する。一方で経営者としての時間裁量を活かし、土日に仕事をする日も平日に子供の行事を優先する日もある。
最後に若手の起業家・起業検討者へ向けて、近本氏は以下のように語った。
第一に、ある程度のインパクトを残したいなら最初は全集中が必要。「ワークライフバランスを考えながら起業しても成功は難しい」。本人もリクルート時代から創業初期まで7年ほどはフルコミットだったという。
第二に、可能なら自己資金で始めること。「自分たちの好きなように、やりたいタイミングでできる自由さは大きい」。もう一度起業するとしても自己資金スタイルを選ぶと明言した。
第三に、子育てと両立したい人には「むしろ起業がおすすめ」。経営者は時間の使い方を自分で調整できるため、子供がいる人にも合うスタイルだという。これから子供が欲しい人は「いないうちに起業して、自分のコミット度合いを把握してから家庭計画を立てる」のが理想と語った。
今後ICHIGOは「日本のカルチャーを海外に発信する会社」というビジョンのもと、越境ECに加えてインバウンド事業や海外実店舗展開にも挑戦していく方針だ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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