「幸せは苦しみでしか生まれない」――社会心理学者・加藤諦三氏が語る、競争社会を生き抜くための知恵。好きを選ぶ生き方、人間の成長段階、そして自分自身を理解することの重要性について深く掘り下げる。
ビジネスやお金儲けにおいても、「自分の好きで結果的に儲かる」「足るを知る」という気持ちが大切だと加藤諦三氏は語る。好きでもって商売をやっている人は確実に幸せになれる。しかし「儲かるから」という動機で動く人には際限がなく、終わりが来ない。つまり、満たされることがないのだ。
競争社会は本当に生きるのが難しい。確実な道は狭く舗装されていない一方で、「地獄への道は舗装されている」。その時その場の癒しを求めてしまうのか、長期的に見て自分にとって望ましいことを選べるのか。後者を選べるのは、生きるエネルギーがあるときだけだという。
「今これは大変だけれども、これを乗り越えたらもっと素晴らしいことがあるんだ」――そう発想して生きられるのは、内面に力がある証拠である。競争社会では勝つか負けるかという欲に飲み込まれてしまうが、好きで生きてきた人には内なる力が湧いてくる。その時々の問題を解決しながら、最後には幸せに辿り着けるのだ。
加藤氏は人間の成長には明確な段階があると説く。
- 幼少期には幼少期の内面の力を得る
- 青年期にはアイデンティティの確立をする
- 壮年期には責任を負って生きていく
- 高齢期には高齢期の課題を解決する
これらの段階を一つひとつ着実にクリアしてきた人こそ、内面の力がどんどん育ち、次の課題にも立ち向かえる。
「飛び級しちゃダメなんです。一塁回って、二塁回って、三塁回ってホームに入ればいいのに、一塁から二塁に行かないでそのままホームに来ちゃうような生き方はできない」と加藤氏は喩える。青年期の課題を解決していなければ、壮年期の課題は解決できない。順序を踏むからこそ成長できるのだ。
「好きで行け」というのは、実は非常に難しい。なぜなら、自分自身の得意分野を見つける必要があるからだ。
青年期に「興味と関心の覚醒」が起きていなければならない。自分はこういうことが好きで、こういうことが嫌いだ。これは得意で、やっていると時間を忘れる――そうした自己理解がはっきりしていればまだいい。しかし、それが分からないまま壮年期を迎えると非常に辛い。
壮年期になれば、家庭の責任、会社の責任、仕事の責任、社会の責任と、あらゆる責任を背負うことになる。青年期の課題を全部解決した人だけが、壮年期の課題を乗り越えられるのだ。
ソクラテスの時代から「自分を理解する」ことは何千年経っても真理である、と加藤氏は語る。
ITの世界では「日進月歩」どころか「分進秒歩」と言われるほど変化が激しい。しかし人間性そのものは1000年、2000年経っても変わらない。外的要因がとんでもないスピードで変わる現代だからこそ、人は幸せになりづらいのかもしれない。
テレフォン人生相談で寄せられる悩みも、旧約聖書の時代に書かれているような内容が2024年にも出てくる。「自分自身を知れ」という言葉は何千年にもわたって言われてきたが、何千年にもわたって実現されていないのだ。
加藤氏自身、自分のことを理解できるようになったのは「失敗が重ならないとわかんない」と振り返る。
受験校に通っていた高校時代は、テストの順位が廊下に張り出され、受験がすべての価値だった。そんな環境では、いくら「受験以外にもいろんな価値がある」と言われても、心の囚われから抜け出せない。高校時代が終わり、社会で働いて様々な経験を積む中で、ようやく一つひとつ学んでいったという。
大切なのは、経験から一つひとつ学ぶ姿勢、そして過去を振り返り整理することだ。整理するからこそ、過去の体験が生きる。
加藤氏の語る幸福論は、シンプルでありながら奥深い。
- 欲ではなく「好き」を選ぶ
- 成長の段階を飛ばさず、一つずつクリアする
- 自分自身を理解することから始める
- 過去を振り返り、経験を整理する
外的環境がいかに激変しようとも、人間の本質は変わらない。だからこそ「自分を知る」という古代からの真理に、今こそ立ち返るべきなのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
