三井物産を退職し、不動産マーケティング支援で起業したばかりの川崎優馬氏。SNSでの個人発信を軸に売上を伸ばす一方、「自分がいなくても回る仕組み」をどう作るか悩んでいる。DMM亀山会長との対話から、属人型ビジネスを売却可能な形に変える視点を探る。
新卒で三井物産に入社し、3年半の財務分析業務を経て独立した川崎優馬氏。会社員時代に個人で住宅ローンを組み、合計4件・約3億円分の住宅を購入した経験を持つ異色のキャリアの持ち主だ。
川崎氏が立ち上げたのは、不動産業界に特化したマーケティング支援事業。会社員時代からInstagramやYouTubeで自身の不動産購入・リノベーション・売却の経験を発信し、退職時点でInstagramのフォロワーは3万4000人に達していた。
事業は大きく2本柱で構成されている。1つ目は、自身が運営するメディア経由で家を買いたい個人からの問い合わせを受け、不動産会社に紹介する送客事業。2つ目は、不動産会社の裏方に入り、SNSやウェブサイト運用などの集客支援を行う事業だ。
売上は順調に伸びているものの、川崎氏の悩みは事業の属人性にある。現状は売上の大半が、川崎氏自身が表に立つメディア事業から生まれている。家を買いたい個人ユーザーは、川崎氏個人の発信内容と経験値を信用して問い合わせをしてくるため、川崎氏というカリスマがいなくなれば、問い合わせも止まる構造だ。
川崎氏は「将来的には自分の属人性を抜いていって、手離れのいいビジネスにして売却したい」と語る。これに対して亀山会長は核心を突く。
「1人のカリスマで背負ってる会社って、カリスマ抜けますけど買ってくださいって言っても、誰も買わないんじゃない」
M&Aで売却するためには、オーナーが抜けてもビジネスが回る状態を作る必要がある。亀山会長は「自分がいなくても回ればOK。社員で回ってます、この人間は引き続き残ります、僕は今ほとんど何もやってません、単なる株主です、となったら買い手も安心しやすい」と指南する。
対話は、ビジネスの本質的な分類論に発展する。亀山会長は、世の中のビジネスを「カリスマ型」と「仕組み型」に大別して説明する。
カリスマ型の代表は、美容師、トレーナー、シェフなど。本人の腕やキャラクターが商品価値そのものになっているビジネスだ。一方、仕組み型の代表として亀山会長が挙げたのは吉野家やスカイラークのチェーン展開。「いかに大量で仕入れて安くして、状態を仕上げるかという仕組み。全く使う脳が違うぐらい」と語る。
亀山会長自身も、創業期のビデオ・レンタル店時代から「俺がいなくても回る仕組み」への切り替えを意識してきたと振り返る。「飲食店でお父さんお母さんがやってるのは、その人たちの愛想で支えられてる。あれは特殊な例で、ほとんどはお店の顔、シェフの腕か女将の笑顔か。これしかない世界では展開が難しい」。
川崎氏が裏方の集客支援事業を伸ばしたい背景には、社員を抱えずに業務委託組織でこなしたいという考えがある。「業務委託で済むのであれば、一旦そのスタイルがいいかな」というのが現状の方針だ。
これに対して亀山会長は、業務委託モデルの限界を指摘する。
「分析するとしたら、やり方自体を安定的に。簡単に覚えられない分析は、業務委託だったら1年ぐらいかかって覚えた人間がやめたら、また教えないといけない。分析できる社員がいるってことじゃないと、君がやめたらみんなやめますで終わり」
業務委託は柔軟性がある一方、ノウハウの蓄積と当事者意識が社内に残りにくい。M&Aの買い手は「この人間とコミュニケーション取れば今後の業績がわかります」という存在を求めるため、川崎氏に代わる経営者ポジションの人材を社内に置く必要がある、というのが亀山会長の見立てだ。
川崎氏は三井物産で何を学んだかを振り返り、与信管理の仕事を例に挙げる。中東の取引先に天然ガスを100億円売る際、相手企業がきちんと支払えるかを分析する業務だった。
「半年くらいで自分でもできるようになって、なおかつ自分がやめても問題なく回ってるわけです。仕組みの一部として3年半働いたので、そのノウハウを今後の組織化に生かすのはできるんじゃないか」
亀山会長も「俺も分析系。データを分析して、どの商品が売れてるかを商品見なくても数字で見て、コストがどれだけかかるか。それが経営の骨格」と共感を示す。ただし「その分析自体が、今のコンテンツ事業とうまくマッチすればいいんだけど、美容師や飲食店に適用できるかというとできない」と、分析力の汎用性には限界があることも指摘した。
川崎氏は「30歳までに1つ出口を迎えられたら」と、3年での売却を視野に入れている。「川崎優馬1代で成り上がる」をテーマに掲げ、まとまった資金を得てから次の事業に投じたいという。
亀山会長はこの時間軸に対して「3年でなかなか大変だね」と率直な反応を示しつつも、売却を実現するためには「経営者ももう1人用意しないと抜けれないんじゃない」と具体的な準備を促した。
カリスマ性で立ち上げたビジネスを、いかに仕組み化して売却可能な形に持っていくか。27歳の起業1年目の挑戦は、属人型ビジネスを営む多くの経営者にとっても示唆に富む。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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