プロテインブランド「バルクス」を展開するレバレッジ代表が、空手と筋トレを通じて培った経営哲学を語る。意思決定の質を高めるのは知識ではなく強靭な肉体だという、運動と経営をつなぐ独自の視点を紹介する。
経営者にとって意思決定の質は事業の成否を左右する重要な要素だ。情報があふれ、何が正しいかわからない時代に、判断の軸となるものは何か。プロテインブランド「バルクス」を展開する株式会社レバレッジ代表のただ氏は、その答えを「肉体」に求める。空手と筋トレを11年続けてきた経営者が語る、運動と経営の深い関係をひもとく。
ただ氏が空手を始めたのは11年前。当時、創業7年目を迎えていた頃で、経営に悩み、自己啓発にのめり込んでいた時期だった。
「『俺はできる』とみんなで言い合うようなセミナーにはまっていたんです。要は自信をなくしていた。そんな中で自分が高みを目指せられるんじゃないかと思っていたら、自己啓発に行くこと自体が目的になってしまっていた」
そんな状態を見かねた尊敬する経営者から「方向が間違っている。あれは逃げでしかない。日本人として武道をして自分と向き合ったらいいんじゃないか」と諭されたことが転機となった。
選んだのは極真空手。素手で打ち合うフルコンタクトの流派だ。道場に通い始めた頃は周囲の筋肉隆々とした稽古生たちに「ずるい」と感じていたという。
「みんな『昔は君よりも細かった』と言うんですよ。絶対にそうなるわけないと思いながらも、痛くなくしたくて筋肉という鎧を少しでもつけたかった。そうしたら、その人たち以上に筋肉がついてしまった」
この空手と、稽古を通じて出会ったパーソナルトレーナーが、後のバルクス誕生につながっていく。師匠は世界大会で2回優勝した塚本師範。ただ氏自身も大会で8回優勝するまでになった。
ただ氏の運動習慣は徹底している。空手は週3回、毎週水曜日の夜3時間を11年間ブロックし続けてきた。
「ブロックしておかないと会食がどんどん入ってしまう。確実にその日に行くと決めておく」
一方で筋トレは朝のみと決めている。しかも所要時間はわずか15分。
「1時間やると疲れて、その日のパフォーマンスが落ちる。筋トレはあくまでも空手のため、何よりもビジネスのためにやっている。本末転倒にだけはしないと決めたんです」
ボディメイクに傾倒しすぎると、会食や読書の時間まで体作りに費やすようになる。それを避けるため、朝の15分という制約を守り続けている。短時間であっても自重ではなく、それなりの重量を扱うことで効果を出す。
ジムに「8時5分ジャストに入る」のが日課で、8時35分に出る。決めた通りに毎日同じリズムを刻むことに、ただ氏は強い満足感を覚えるという。
「自分が決めた通りに生きているのがたまらなく好き。自己肯定感が高い状態で仕事を始められる」
運動を続けることで得られる最大のメリットを、ただ氏は迷いなく言い切る。
「めちゃめちゃ強い決断ができるようになります」
意思決定そのものは経営陣との合議で行うが、一度決めたことを何があってもやりきる――その実行力こそが、鍛えた肉体から育まれた強い意志だという。
「強靭な精神は強靭な肉体に宿るというのは間違っていない。知識をつければつけるほど逆に迷い出す。でも体を強くするとエネルギー量が上がり、行動量も上がる。それが意思決定に紐付く」
空手を始める前は、自己啓発本を1冊読むたびに「これを試そう」、翌週には別の本を読んで「やっぱりこっちだ」とふわふわしていたという。心を鍛えるために体を鍛える――この考え方は自宅で筋トレからでも始められると勧める。
運動と並んで重視しているのが食事だが、こちらは難しく考えない。人間の体の構成比に基づいたシンプルな考え方だ。
人体の約70%は水分、次にタンパク質、その次が脂質。この順番でただ氏は栄養を意識している。
- 水:1日2リットル(午前中1L、午後1L)
- タンパク質:毎朝バルクスのプロテイン
- 油:バルクスの製品から摂取
それ以外の食事は自由にしている。ジムにサウナがついているため、運動後は自然に水を飲む量が増える。会社のデスクには水を1リットル分常備し、目の前にあれば自然と手が伸びる仕組みを作っている。
サウナはフィンランド式で温度低め・湿度高めのものを15分。筋トレとサウナをセットにして30分で朝のルーティンを完了させる。
ただ氏が習慣化しているもう一つの取り組みが「10年日記」というアプリだ。今日の日記を書こうとすると、1年前・2年前・3年前の同じ日に書いた自分の日記が表示される。
「1年前の自分が『バルクスは1年後絶対こうなっている、1年後の俺に届け』と書いている。それを見て『まだそこに行っていない』『もうちょっと頑張ろう』と気づける。前の自分から応援される感覚で朝が始まるんです」
3年前に試合で負けた記録を見て「最近サボっていたからだ」と振り返ることもあるという。朝、過去の自分との対話から1日を始める習慣は、経営者にも勧めたい取り組みだとただ氏は語る。
勢いと情熱で突破するタイプに見られがちなただ氏だが、本人は自身を「とにかく同じボタンを永遠に押し続けるだけで生きてきた人間」と表現する。
「ここから継続を取ったら何も残らない。良い努力は絶対的に良い結果を生む。良い努力を誰よりも続けさえすれば、誰よりもうまくいく」
単発で「ウェイ」と盛り上がる瞬間より、長期的にひたすらやり続けることのほうが成果につながる。すぐの成功を期待するより、10年後に誰よりも輝いている自分を意識して今日の努力を続ける――それがただ氏のスタイルだ。
この姿勢は組織運営にも通じている。社員に望む変化があれば「物のように」言い続ける。
「1回言って人間が変わると思ってマネジメントすると、変わっていなかった時にストレスが生まれる。でも言い続けることで少しずつ変われると信じる。まず自分自身に矢印を向けて、少しずつの変化を楽しむ感覚です」
プロテインの市場拡大を予測できたのではと聞かれることが多いが、ただ氏は「予測なんかできるわけない。たまたまずっとスイッチを押しまくっていたら、そのスイッチが爆発しただけ」と振り返る。
打席には2種類あるという。
1. どの打席が良いかを試す打席
2. 「もしかしたらうまくいくかも」となった時に同じバットで振り続ける打席
バルクス以前にもプロテインの別ブランドや他事業で失敗を経験している。しかし「ここだ」と感じた時にはひたすらボタンを押し続けることで結果が出る。
プロテイン自体は商品単体で見れば差別化が難しい。しかしただ氏が信じているのは、商品にストーリーを込める力だ。
「プロテインのパッケージを開けるたびに『今日もこのプロテインから応援されている』『これと共に歩めば何かうまくいくに違いない』という世界観をバルクスというロゴに込めた」
参考にしているのはレッドブルというブランドだ。撮影前にもレッドブルを飲んでいると明かす。
「味の問題じゃない、気持ちの問題。レッドブルがあれば、ただでさえ情熱的に生きている自分の情熱にさらに翼が宿るんじゃないかと感じる。これがレッドブルからもらえるパワー。バルクスもそうありたい」
誰かが何かに夢中になった時、その夢中をより深い熱狂に変える瞬間の最も近くにいるブランドでありたい――それがバルクスのブランド戦略の核にある。
インタビュー後半では、ただ氏が普段行っている筋トレを紹介してもらった。
**ディップス(自宅でも公園でも可)**
上半身のスクワットと呼ばれる種目で、大胸筋に効く。ただ氏は毎日30回行っている。1人でも安全に取り組めるため、ベンチプレスの代替として推奨。
下半身は筋肉量の70%を占めるため鍛えるべきだが、見た目の変化が分かりにくい。一方、胸まわりは変化が目に見えやすく、人にも気づかれるため習慣化しやすいという。
**腹筋ローラー**
腹筋・背中・腕の3カ所に同時に効く。初心者は膝をついた状態から。10回でも翌日に強い筋肉痛が来る。
「『やばい、ここまで自分を追い込んでいる』という感覚を味わってほしい」
**膝つきから立ちコロへ**
上級者向けは膝をつかずに行う「立ちコロ」。立ちコロができるのは全人口の1%とされ、習得には半年ほどかかる。
「立ちコロができれば1%に入れる。これほどの自己肯定感はない。強靭な体、強い意思決定をしたければぜひ」
最後に、M&Aや事業の岐路に立つ経営者へのメッセージを聞いた。
「良い意思決定、そして自分が下した意思決定を信じる。そのためには筋トレ。どの意思決定が正しいかなんてわからない。1年前に正しかったことを真似して1年後にやっても、時代の変化が激しすぎて通用しない。何が正しいかわからず迷い苦しむ時に、自分を支えてくれる肉体は本当に大事」
30分の筋トレが、残り23.5時間の意識を変える。プロテインを楽しみに筋トレを始める人もいるという。情報過多の時代に意思決定の軸を作るのは、知識ではなく自分自身の肉体である――ただ氏のメッセージは、経営の判断に悩むすべての人にとって示唆に富む。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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