簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
宇田川と申します。もともと生活のため、いわば「ライスワーク」として経営していた会社を売却したことをきっかけに、「会社はつくったら売る」という前提で事業を立ち上げ、育て、売却することを繰り返しています。これまでに約25社をつくり、7社を売却しました。現在は8社目の売却を進めています。
最初に起業したのはいつ頃ですか。
現在36歳ですが、最初に会社をつくったのは21歳のときです。新卒1年目で会社員として働きながら事業を模索する中で見つけたのが英会話でした。何をすればいいのかまったく分からなかったので、合コン会場のセッティングやパーティーイベントの運営など、比較的ハードルの低いことをいろいろ試しました。その中で手応えがあったのが英会話事業で、これを軸に起業しました。
英会話教室は、どのように始めたのですか。
副業で始めた当初は、オフィスを借りる資金もなかったため、都内のバーを間借りしました。ハッピーアワーで客足が少ない時間帯にソファ席を貸してもらえないかと交渉し、そこで生徒を集めて英会話を教えたのがスタートです。授業が終わると、皆さんリラックスしてお酒を頼み、その日に学んだ英語をどんどん話し始める。いわば「お酒が飲める英会話塾」でした。
2社目はどのような事業でしたか。
2社目は、生活のためのライスワークとして不動産会社を立ち上げました。2017年頃から第一次インバウンドブームが到来し、その波に乗って不動産活用事業へと転換。売上・利益ともに毎年150%ほど成長し、非常に順調でした。
理想的な状態に見えますが。
実は逆でした。売上も利益も伸び、仕組み化が進んで現場から離れるほど、精神的にはつらくなっていったんです。「いつかダメになるのではないか」という漠然とした不安が膨らみ続けていました。さらに、同年代の倍以上の報酬を得ていたにもかかわらず、手元にはあまり残らない。試算すると、1億円貯めるのに30年以上かかると分かり、会社を続けることに限界を感じました。
M&Aを意識したきっかけは何だったのでしょうか。
たまたま「少人数・高利益のミニマム経営の会社を高値で売却した」という記事を読み、自分の会社と似ていると感じました。軽い気持ちでプラットフォームに登録したところ、インバウンドブームの追い風もあり、毎週のように買い手候補から問い合わせが来たんです。結果として、約5カ月で数億円規模の売却が成立しました。
最終的な売却先はどのように決まったのですか。
きっかけは、たまたま出演したM&A関連のYouTubeチャンネルでした。インタビュアーの方が買い手目線でリアリティのある質問をしてくれたことで、それを見た視聴者から「買いたい」と声が上がり、そのままスムーズに成約に至りました。
2社目ではロックアップ期間は設けられたのでしょうか。
実は、これまで売却した会社はすべてロックアップなしです。2社目は売却前提ではありませんでしたが、「自分が関わらなくても少人数で回る仕組み」を徹底的に追求していました。その結果、経営トップが変わっても業務が滞らず、売上も下がらない設計になっていたため、ロックアップを求められなかったのだと思います。
買い手の安心はどのように担保するのでしょうか。
よく「私にロックアップ報酬を払うのはコスパが悪いですよ」とお伝えします。新卒社員を採用したほうが合理的です、と。それくらい仕組み化しているつもりです。一方で、代表として残るのではなく、顧問や業務委託として一定期間サポートするケースはあり、その形で安心していただいています。
数多くのM&Aの中で、最も難しかった場面はありますか。
交渉自体で苦労した記憶はあまりありません。ロックアップや業績未達時の株式買い戻しなど、強い条件を求める買い手にはほとんど出会いませんでした。ただし、売却後に「自分のミスだった」と感じた経験があります。
どのような失敗だったのでしょうか。
2社目の売却時、法務面で大きな失敗をしました。当時は自分に法務知識があると思い込み、弁護士によるチェックを受けずに契約書に署名してしまったのです。その結果、売却後にトラブルになりました。
具体的にはどのような点で揉めたのですか。
「表明保証」の範囲です。買い手はリスクを減らすため、あらゆる項目について保証を求めます。私は「問題はないだろう」と軽く考えてしまいましたが、どんな会社にも必ずリスクは存在します。本来は「ここは保証する」「ここは除外する」といった交渉が不可欠でした。この経験以降は必ず弁護士にチェックを依頼し、売却後も双方が納得できる形になるようリスク管理を徹底しています。
3社目以降は、売却前提で事業を始めているのですか。
はい。何年後にいくらで売るかというゴールを先に決めてから会社をつくります。出口が明確だと、「そこまでやり切ればいい」と考えられるため、精神的な余裕が大きく変わります。
どのような基準で事業を選んでいるのでしょうか。
私は数十億円規模の大ヒットを狙うタイプではないと自覚しています。そのため、数千万円から数億円規模の「ヒット」を複数積み重ねる戦略を取っています。具体的には、「BtoBのサブスクリプション」「少人数で高単価」という条件を満たす事業です。
複数の会社をどう管理しているのですか。
25社すべてを自分で経営することはできません。そこで重要になるのが、経営を任せられるパートナーの存在です。私は代表にはならず、株主として出資しながら、「売れる会社」を設計する経営企画の役割を担っています。
事業アイデアはどのように生まれるのでしょうか。
「会社が売れる要素」から逆算して考えています。業界を問わず共通するのは、まず顧客単価が高いこと。これにより少人数で運営できます。次に、サブスクリプションモデルであること。結果として、「BtoB×サブスク×少人数」という形が最適になります。
具体的にはどのようなサービスですか。
シンプルに言えばレンタル業です。事業者にとって不可欠なものを貸し出せば、その事業を続ける限り継続的に利用されます。ハードでもソフトでも、「貸して毎月課金する」モデルが非常に強いと考えています。
業界選定のポイントは何でしょうか。
まずはトレンドを見ることです。たとえば建設業界の人手不足を背景に、人材会社が伸びているといった動きがあります。ただし重要なのは、「自分もその市場に参入する」ことではありません。そうではなく、その市場に参入しようとしている人たちに対して価値を提供する。いわば「スコップやツルハシを売る側」に回ることです。この視点が、事業選定において重要だと考えています。
多くの事業を抱えながら、お忙しいのではないですか。
実は時間に余裕があります。一昨年から大学院に通い始めたほどです。もともと起業した理由は自由な時間を得るためで、家族との時間を大切にすることが人生の軸にあります。妻とは月に4回デートをすると決めていますし、子どもが3人いるので、それぞれと1対1で過ごす日も設けています。さらに自分のための時間も確保し、家族旅行にも月1〜2回行っています。月の半分以上は家族や自分の時間に充てています。
理想的な働き方ですね。
ありがとうございます。会社を長く育てたい方は一社を持ち続けるのも一つの選択です。一方で、私のようにライフスタイルを重視する場合は、M&Aを前提とした経営も有効な選択肢になると思います。
近年、M&Aは難しくなっていると感じますか。
難しくなっていますね。経験を積んだことで、買い手が求める組織体制や資料の準備はうまくなりました。一方で市場自体が成長し、売り手が増えたことで競争は激しくなっています。また、買い手側の知識も向上し、交渉も高度化しています。これは市場の健全化とも言えるでしょう。
最後に起業家へのメッセージをお願いします。
AIやロボットの進化により、長期的に会社を経営し続ける難易度は今後さらに高まるはずです。だからこそ、一定期間で会社を育てて売却するという選択肢は、起業家にとって大きな武器になります。市場環境は厳しくなっていますが、しっかり準備をすれば十分に戦えます。この選択肢をぜひ有効に活用してほしいと思います。

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